せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

7月1日建築士の日に建築見学会〜こども環境学会に参加して~

2022年07月04日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

図書館

暑い最中の先週末の3日間、
日本女子大学で、こども環境学会が開催されました。

学会の大会は、一昨年は中止。
昨年は、オンラインと対面のハイブリッド。
今年も、昨年同様の形式で開催されました。

参加の仕方も、私もハイブリッド(笑)

建築の見学会には参加し、
基調講演や国際シンポジウムは
オンラインで参加しました。

この暑さを考えると、
会場運営の事務方や、担当大学関係者の皆さんには
申し訳ないくらい、移動がない日は、
身体的に楽でした。
(学生さんや教員の方が、オンラインは楽と仰るのを実感)

実は、日本女子大は、東日本大震災が起きた2011年に、
開催予定をしていた会場でした。

私も企画を持っていたので、その時は、
下打ち合わせに伺ったものです。

しかし、事情が変わり、会場開催は中止。
その後は、私も熊本に移住したので
東京での活動は見送り、
学会の大会に参加するのが精一杯
という形になってしまいました。

今回は、久しぶりに建築見学ができるということと、
コロナ禍になって、閉じてしまった大学の構内にも
部外者が入れるということもあり、お邪魔しました。

そして、目玉は、なんといっても妹島建築。

創立百二十年を記念して建てられた、百二十年館。
図書館。そして、新学生棟と、3部作を拝見しました。

卒業生である建築家妹島和世氏が、
西沢さんと組んでいたSANNAとしてではなく
妹島和世建築設計事務所としての作品です。

率直な感想としては、あぁ、乙女な妹島さんが戻ってきたな
という印象でした。

初めて妹島建築を見たのは、学生時代。
熊本アートポリス事業の再春館製薬の女子寮です。

伊東豊雄さんの事務所で頭角を現し、
軽やかな建築を作る女性として
注目された妹島さん。

その、伊藤さんの薫陶を受けている様子がわかるのが
ボールト状の屋根のモチーフ。


新学生棟

アルミや白やグレーなど、色調も然り。
DNAを感じるものでした。

図書館は、内部外部をスロープで巡らせることで、
上下階の目線を交差させるという試みは、面白く
不思議な体験でもありました。



入ってすぐのスロープでは、転ぶ学生さんが続出したとか。
それは、ねじれている傾斜なのだそうですが、
体験した身としては、歩きにくさはなかったですね。
じゅうたんでしたし、ペタンコ靴には。


緑が一緒に写らないと無機質に見える図書館。
ガラスに映り込んでいるのが幸い。

新学生棟では、円形型のソファに、個別の丸テーブル。
個人利用や、グループ利用ができる仕組みは
今の学生さん向けでしょうか。
伺った際は、満席状態でした。

そして、百二十年館。
地下のパティオを持つ、シンプルな四角の建築。


百二十年館



これまでの日本女子大の建築の中では、
一番クールで、シャープ。

建築も建てられた時代で、
建築様式とデザインの最先端が違い、
まるで、年代建築見本市のような日本女子大。



それだけ、伝統がある大学ということですね。
(何と言っても日本初の女子大学)

室内の写真は撮影不可でしたので、お見せできなくて残念ですが
興味のある方は建築雑誌などで、チェックしてみてください。

細かい建築のうんちくは、そういったメディアにお任せするとして
学生さんが、気持ち良く、のびのびと学べる場であるのかどうか
私としては、建築の造形だけではなく、その辺りが気になりました。

もし、自分がここの学生だったら?
うむ。迷うでしょうね。慣れるまでは。

新しい建築は、どこを切り取っても、同じような感じ。
均一均質な空間だからか、サインが、ほぼないからでしょうか。

会場での説明では、実際にトイレの位置をよく聞かれるとか。

そう、建築家は、ゴテゴテしたサインが苦手で、
できるだけ、綺麗にしておきたいのです。
むしろそういう意図がよく伝わってくるサイン計画でした。

公的な空間でありながらも
私的な大学という構内ならではのデザインでしょう。

数字とか、大きく表示したくなるのが
大きな空間ですが、そこを抑えるのが、
 妹島流なのかもしれません。

図書館の内部空間は、
使い手側との協議も重ねられたのか
様々なところに、学習机と椅子のセット。

明るい場所、暗い場所。
静かなところと賑やかなところ。

自分がどこで勉強したら、
心地よいのか、集中できるのか、

様々な場所が用意されているというのは、
多様性があって良いと感じました。

そういったきめの細やかさは女性の感性でしょうか。

大胆に、「ここが学習コーナー」と、
半ば強引な、あるいは強制的なゾーニング
でなかったことは幸いです。

兎にも角にも、ここで学べる学生さんは、
羨ましいなぁというのは、全体の感想です。

案内役をしてくれた学生さんへのヒアリングでは
「コロナ禍で、学校がオンライン授業の間に、
建築が出来上がっていて、
登校してびっくりした」という感想でした。

4年生だったので、前の環境もご存知なわけです。
環境が変わってしまうと、戸惑いますね。

古きものと、新しきもの、、

学生さんへの教育方針も、
きっとそうなのだろうなと、思います。
空間から感じることも大いにあるでしょう。

具体的な全体の作りや建築計画の流れは
次の日の基調講演で
学長より説明があり、より理解が深まりました。

こどもの環境を考える学会の大会ではありますが、
大学という学びの場のあり方を考える機会になりました。
(私も勤務時には大学の設計監理に関わりましたけれど、)

ありがとうございました。