この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

『逃亡作法』。

2005-05-13 23:32:28 | 読書
東山彰良著、『逃亡作法』読了。

『四日間の奇跡』(浅倉卓弥著)の売上げが百万部を超える勢いだそうです。
さらに6/4から吉岡秀隆主演で映画も公開されるとのこと、この作品を第一回『このミステリーがすごい!』大賞に選出した選者の方々はさぞ鼻高々といったところではないでしょうか。
その『四日間の奇跡』と激しいデッドヒートを繰り広げ、大賞を同時受賞したのがこの作品『逃亡作法』です。(ただし『四日間の奇跡』が金賞、『逃亡作法』が銀賞。)
読む前にそれなりに期待したとしても当然といえば当然でしょう。

『逃亡作法』、ストーリーをざっと紹介すると、近未来の日本であるトラブルによって脱獄したアウトローたちの逃亡活劇、といったところでしょうか。

ところで自分は小説を買うとき必ずあとがきや解説などを読んでから買います。
邪道、といわれる方もいるかもしれませんが、こちとら大事な身銭を切って買おうっていうのだから、少しでも情報が欲しいのは当然。
解説でネタバレがあったとしてもまったく気にしません。
真の傑作であれば多少のネタバレなんて屁ともしませんからね。
逆にいえばネタバレがあって興味が半減するならその程度の作品だったってこと。
で、『逃亡作法』の解説で吉野仁って選者がこう書いています。
「前半のインパクトが強いわりに、後半になると登場人物や話が入り乱れて、(中略)改稿ヴァージョンは、すなわち本書は、ぐっと統一感が生まれている。」
こう書いてあると(初稿版では)前半部分は読者をぐいぐいと引っ張り、後半になるとややパワーダウンするが、(改訂版では)その欠点も解消されて、完成度の高い作品になった、というふうに読み取れませんか?
が、しかし。
自分はこの作品、最初の十三ページ目で挫折しそうになりましたよ。
何が書いてあるかというと囚人収容所の管理システムの説明シーンなんですけど、その説明をするのが腹話術師の十黒堂と人形のたっくんなんですよ・・・。
これには参りました。
たぶん、センスの問題だと思うんですけど、腹話術師の十黒堂ってのはちょっといただけない。。。
一事が万事この調子で、作者としてはおそらくクールに決めているつもりなのでしょうが、登場人物同士の会話といい、物語の展開といい、どこかずれていました。
印象に残ったシーンや会話とかも特になかったです。
これで四百万円がもらえるなら小説家という職業はちょろい商売なのかも、と思わずにはいられません。(実際はそんなことはないのでしょうけど。)

いただけないと思った作品の紹介だけではどーかと思うので、自分が面白いと思った作品も挙げておきますね。
どれも『逃亡作法』と同じくその作家のデビュー作です。

『オーデュボンの祈り』、伊坂幸太郎著。
《ストーリー》現代日本で未だに鎖国を続けている荻島。そこでは未来を見通せるカカシがいた。だがある日そのカカシが何者かによって殺され、、、訂正、壊されてしまう。カカシはなぜ自らの死を予見できなかったのか・・・?
こんな奇妙なミステリー、見たことも聞いたこともないです。
現代日本で鎖国?未来を見通せるカカシ?
そんなありえない設定でありながらちゃんとミステリーになってるんです。
読後の爽快感もグッド。

『冷たい校舎の時は止まる(上中下巻)』、辻村深月著。
《ストーリー》ある雪の日、学校に登校したクラスメイト男女八人は不可解な力によって校内に閉じ込められてしまう。やがて彼らは自分たちが誰かの精神世界にいるという結論に達する。そしてその誰かとは他でもない八人のうちの一人らしい・・・。
これまたありえない設定、というか何でもありの設定ですね、しかしながら何でもありの世界でありながら、逆に一本筋の通ったミステリーになってます。
何より学園青春物として秀逸。
自分もこんな青春を過ごしたかった・・・と思わずにはいられません。

『夏と花火と私の死体』、乙一著。
《ストーリー》九歳の夏のある日、私は木から転落して死んでしまう(!)。死んでしまった私はこれからいったい・・・?
自分が一番贔屓にしている作家である乙一の、十七歳の驚異のデビュー作。
以後コンスタンスに奇妙なお話をつむぎ続けてましたが、『GOTH』がヒットしたおかげで現在優雅に逃亡中。笑。

こんなところです。
しかしめっきり小説、読まなくなったなぁ。。。
コメント (6)
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