この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

パプリカ。

2007-01-14 14:23:26 | 新作映画
 監督今敏、原作筒井康隆、『パプリカ』、Tジョイ久留米にて鑑賞。

 先日の記事で、絵が尋常じゃなく綺麗で現実と非現実の境界線が曖昧なアニメが多すぎる、みたいな発言をしましたが、懲りずに観てきましたよ、『パプリカ』。
 何やかやといって自分はやっぱりアニメが好きみたいです。
 まぁ現実と非現実の境界線が曖昧といっても『パプリカ』の場合テーマが“夢”そのもので、ある意味潔いとは思います。
 ストーリーは割愛。
 はっきりいって紹介するほどのストーリーでもないと思うし。

 『パプリカ』で特筆すべきは何といっても“絵”でしょうね。
 それこそ尋常じゃないぐらいに美しいです。
 でもそれが問題だと思いました。
 突然ですが、ダ・ヴィンチの『モナリザ』って美しいと思いますか?
 まぁ審美眼なんてものは人それぞれなのですけど、ここでは美しいということにしておきましょう。
 ではダ・ヴィンチが、『モナリザ』と同じモデルを真正面から描いたとしたら、その絵画は『モナリザ』同様美しいと思いますか?
 仮定の問題なので結論を出すのも無意味かもしれませんが、おそらく美しくないでしょう。
 なぜなら人の顔というものは正面から見るよりも若干斜めから見る方が美しく映えるように出来ているからです。
 理由は(正面からだと)陰影がつけにくい、立体感が出にくい、構図として安定しない、などがあると思います。
 誰にでも自分の顔はこちら側から見た方が見栄えがする、といった決めの角度があるんじゃないでしょうか。
 肖像画の中で名画と呼ばれるもののほとんどは、すべてとはいいませんが、人の顔を斜めから見たものばかりだと思います。
 一瞬の美を捉える絵画であれば、それで問題ありません。
 というか、それが当たり前です。
 しかしながら連続した人の動きを映像にする映画であればどうでしょう。
 クライマックスの主人公のポーズが構図的にビシッと決まっている、というならわかります。
 けれど、構図的にビシッと決まったシーンが延々と九十分間続くとしたら?
 人の美しいポーズとポーズの間には、どうしたって美しくない動きが挟まるものなのです。
 というか、それがあるからこそ、ある瞬間の美しさが際立つというか。
 『パプリカ』は尋常でないぐらい美しい映画だと思います。
 作り手が意図的に彼女の美しくない構図を排除したのでしょう、本作では金太郎飴の如くどこを切っても、どのシーンでもヒロインのパプリカは美しく、構図的に完璧です。
 それはそれでスゴイことだとは思いますが、、、同時に不自然の極みでもあると思います。
 本来であればパプリカの顔を正面から捉えるべきシーンであっても、それを斜め四十五度(角度は適当です)から捉えてるんです。
 確かにその方が構図的には収まりがいいんでしょうが、正面から捉える構図がほとんどないというのはどうかと思います。

 CGが進化して、我々は極限的に美しいアニメーションを目にすることが出来るようになりました。
 でも、手に入れたその技術を、上手く活かせるだけのストーリーを作り手は果たして提供できるのでしょうか。
 前述の通り尋常じゃなく美しいアニメって現実と非現実の境目が曖昧なものがやたら多いんですよね。
 これって結局その美しさを活かせる舞台は夢の中だけというイマジネーションの限界を露呈してるんじゃないかってついつい危惧してしまいます。
 それが杞憂であることを願ってやみません。

 次回鑑賞は1/27公開『どろろ』の予定です。
コメント (6)
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