この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ゾンビーノ。

2008-03-16 23:57:19 | 新作映画
 アンドリュー・カリー監督、『ゾンビーノ』、3/16、CIEMAにて鑑賞。

 ゾンビ映画は無限とまではいかずともそれなりにまだまだ可能性を秘めたジャンルだと思っています。
 けれど実際にはゾンビ映画のほとんどはクズばかりです。
 それはなぜかというとゾンビ映画の作り手が、画面にゾンビさえ出ていれば観ている側は満足するだろう、ぐらいにしか思ってないから、要は手を抜いているからだと自分は考えています。
 『ゾンビーノ』は、作り手が本気になればこんな面白いゾンビ映画が出来るのだ、という見本みたいな映画です(他には『28週間後・・・』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』など)。
 いろいろ考えてるなぁと感心するところがあって、例えば『ゾンビーノ』の世界では人は死んだらゾンビになってしまうので(そして人々に単純労働力として奉仕する)、普通に埋葬して欲しかったら生前からローンを組んでそのための費用を貯めなければいけません。
 あ、今「普通に」と書きましたが、これは一般常識的な「普通に」であって、映画の中では埋葬して弔ってもらうのを希望する方がごく少数派という設定なんです。
 なので、主人公の少年の父親が「俺の稼ぎでは家族三人分の葬儀のローンは組めない!」と叫ぶと、母親が「だったらあなただけが埋葬してもらえばいいじゃない。私たちはゾンビになるんだから!」と言い返します。
 我々の考える「普通」はちょっと状況が変わっただけで「普通」ではなくなるんですよね。この価値観の逆転は面白い、と思いました。
 どんなジャンル映画も偉大な先人に対してリスペクトは必要だと思います。ゾンビ映画でいえばジョージ・A・ロメロの『ドーン・オブ・ザ・デッド』がそれに当たるでしょう。
 しかしながらリスペクトする一方、呪縛されてはいけないんですよ。独自のカラーを打ち出さなければならない。
 そういった意味では『ゾンビーノ』は文字通り全体的な色調が総天然色で統一されていて、こんなゾンビ映画観たことない!と思わせるのに充分で、その一点だけでも評価に値すると思います。
 ゾンビ映画が暗い色調でなければならない、なんて誰が決めたわけでもないですからね。
 まぁゾンビをコントロールする首輪がそんなに頻繁に故障してどーするとか(何しろ天気が悪いだけで故障するので。笑。)、一家の大黒柱を失ったのに最後こんなにのほほんとしていて大丈夫なのかとか、いろいろツッコミどころはありますが、基本的に少年が言葉の通じない相手との友情を育む、いってみれば『E.T』や『小鹿物語』、『ドラえもん のび太の恐竜』などと同じ非人類交流ファンタジーとして楽しむことが出来ると思います(そんなジャンルがあるかどーかはさておき。笑。)。
 個人的お気に入り度★★★☆、客観的お薦め度★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。  
コメント
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