この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

人の想いが繋がってやがて奇跡を起こす、『クラウド・アトラス』。

2013-03-19 23:21:46 | 新作映画
 ラナ&アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ監督、トム・ハンクス主演、『クラウド・アトラス』、3/16、ワーナー・マイカル・シネマズ筑紫野にて鑑賞。2013年14本目。


 突然ですが、皆さんは自分に生きてる価値があると思いますか?生きてる資格って言ってもいいですけど。
 俺には生きてる価値がバリバリあるぜ!!とか、私はユーキャンで生きてる資格を取ったばかりよ♪なんて人も中にはいるかもしれませんが、フツー、そういう自覚がある人はあまりいませんよね。
 少なくとも自分にはないです。

 自慢じゃないですけど、リアルでは友だちが一人もいないですからね。
 友だちを作る努力をまったくしなかった、ってわけではないですよ。
 一時期は出来るだけオフ会に参加するようにしていたし、今でも映画を観た帰りは行きつけのカフェに寄るようにしています。
 そこでは顔馴染みも出来て、フツーに会話もしています。でも、友だちって感じじゃないかな。
 その顔馴染みの人とプライヴェートで会う、みたいなことは想像出来ないですもん。

 今自分が死んだら、葬式には親戚と仕事関係以外で出席する人はいないだろうな、と思います。
 もしかしたら、親戚と仕事関係でも出席する人はいないかもしれません。笑。

 死んでも誰も葬式に出ないような人間って果たして生きてる価値があるんですかね?もしくは生きてる資格。生きてる意味。
 自分はしばしば自分には生きてる価値がないんじゃないか、生きてる資格がないんじゃないか、生きてる意味がないんじゃないか、って思います。

 意味がないといえばこのブログもそう。
 ブログを始めてもう八年にもなります。
 八年も続けてるんだから、少しずつ訪問者数が増えてるかというと全然そんなことはないです。
 記事にコメントがつかないことも珍しくないです。むしろコメントが二つ以上つくことの方が稀です。
 このブログをある日突然止めたとしても誰も困らないだろうなと思います。
 誰からも必要とされないブログってやってる意味があるんですかね?

 そんなふうに物事をネガティブに考えることが多いです。
 っていうか、自分としては別にネガティブに考えてるつもりはないのです。
 ごく当たり前に自分が置かれた状況を分析しているだけであって。
 コメント欄が解放されているのにコメントがつかないというのは単純にそのブログを面白いと思う人、必要としている人がいないってこと何だろうなぁと思ってるだけです。
 やっぱり、コメントはつかないけど面白いと思ってる人は多い、というふうには考えにくいですからね。

 けれど先日、以前書いたある映画のレビュー記事がGoogleでの検索結果が5位であることを知って、すごく驚きました。
 そしてこんなふうにも思いました。
 もしかしたら、自分が知らないだけで自分が書いたブログの記事は誰かが読んでいて、その誰かに影響を与えているかもしれないって。

 映画『クラウドアトラス』はつまり、そういう映画です。
 誰かの何気ない行為がやがて大きな結果の違いを生む、専門用語でいう(というほどではない)バタフライ・エフェクトについての作品です。

 本作は時代も場所も異なる6つのエピソードから成り立っているのですが、この6つのエピソードを時系列順に並べ直して鑑賞しても、もしくは一つだけ抜き出したとしても、おそらくつまらないはずです。いや、間違いなくつまらない。
 例えば1869年のエピソードなんて、奴隷商人であり、弁護士である男が故郷へと向かう船の中、命を狙われたところを黒人奴隷に助けられ、奴隷解放運動に身を投じるようになる、というだけのお話です。大して面白くもない。
 けれどこのエピソードが次のエピソードに、さらにその先のエピソードにも影響を与えていると考えると俄然輝きを増します。
 一つのエピソードを単独で楽しむのではなく、他のエピソードとの繋がりを見つけるのが映画『クラウドアトラス』の本当の楽しみ方なのではないでしょうか。

 この映画の楽しみ方はもう一つあり、それは一人一人の役者の各エピソードで演じる役柄をチェックすることです。
 本作ではほとんどの役者が6つのエピソードで異なる役柄を演じているのです。
 面白いのはあるエピソード主役を張っていた俳優が別のエピソードではまったくの端役を演じたりしているんですよね。
 エンドクレジットでこれほど驚かされる映画というのはそうはないと思います。

 ただ、あまりにも異なる役柄を演じているので、それが一人の人間の転生した姿なのだ、これは輪廻についての物語なのだと言われても正直言って首をひねらざるを得ないですね。
 一人の役者が演じているということ以外に6人のキャラクターに共通性が見い出せないので。

 複数のエピソードが複雑に絡み合い、干渉し、影響する、このスタイルはどこかで見覚えがあるなと思ったんですが、伊坂幸太郎の『ラッシュライフ』や『フィッシュストーリー』に似ていると自分は思います。
 伊坂幸太郎作品が好きだという方は『クラウドアトラス』もきっと気に入るんじゃないでしょうか。
 そうでない方はたぶん6つのつまらないエピソードがややこしく絡まってるだけ、みたいに捉えると思います。
 自分は前者なのでとても楽しめました。


 お気に入り度は★★★★☆、お薦め度は★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント (9)
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