この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

全然駄作じゃなかった実写版『鋼の錬金術師』。

2017-12-02 23:00:38 | 新作映画
 荒川弘原作、曽利文彦監督、山田涼介主演、『鋼の錬金術師』、12/2、Tジョイ久留米にて鑑賞。2017年51本目。


 現在ネットで絶賛炎上中の実写版『鋼の錬金術師』を観てきました。
 ネットでのあまりのバッシングぶりに、よほどひどい出来なのだろうなと自分の中でハードルをかなり下げて観に行ったのですが、いやいや、全然ハードルを下げる必要のない、充分及第点を与えてよいと思う漫画原作の実写化作品でしたよ。
 何ごとであれ、自分の目で確かめないとわからないものです。

 まず自分の『鋼の錬金術師』に対するスタンスについて書いておきます。
 自分は原作コミックを全巻初版で持っています。
 初版で持っているから偉いのかというと別にそういうこともないと思いますが、ともかく付き合いは長いわけです。
 そしてこれまで読んだ漫画の中で五指に入るぐらい好きな漫画でもあります。

 一方アニメの方はほぼ未見です。
 正確にはシリーズ第一期の2話ぐらいまでは見たかな。でも、イメージが違う、という理由で見るのを止めちゃいました。
 やっぱりアニメは原作通りじゃないと嫌なのです。
 まぁその原作通りというのも『賭けグルイ』ぐらいの作画レベルであれば充分満足するんですけどね。

 そんなイメージと違うという理由でアニメ版を見なくなった自分ですが、実写版は(必ずしも)イメージ通りである必要はないと考えています。
 そもそも二次元のものを三次元に起こす段階でイメージ通りにするというのが土台無理な話なんですよ。ヴィジュアル的なイメージというのはある程度寛容にならざるを得ないでしょう。
 大切なのはストーリーであり、そしてメッセージ性である、と考えます。
 その点実写版『鋼の錬金術師』はメッセージ性においては充分及第点を与えてよい作品でしたよ。残念ながらストーリーの方はまとめ方に無理がありましたが…。

 実写版は原作漫画のイメージ通りである必要はないと述べたばかりですが、ことキャスト面に関して言えば、実写版『鋼の錬金術師』はほぼ理想に近いと言ってよいのでは、と思いますね。
 松雪泰子のラストを始めホムンクルス三人衆は完璧ですし、端役は芸達者なベテラン陣で固められ、唯一難を言えば主役のエドを演じた山田涼介がエドとは若干イメージが異なることでしょうか。
 しかし山田涼介がイメージが異なるからと言って、では他に誰かエドを演じるのに相応しい俳優がいるかというとこれはいないわけですよ。
 実年齢が14、5歳で、身長が160センチ以下、さらにアクションもこなせる子役俳優なんていますか?いませんよね?少なくとも自分は寡聞にして知りません。
 他にいないのであれば、年齢は20歳を超えていても、童顔で、そこそこアクションもこなせる山田涼介でも悪くはない、自分はそう思います。

 ストーリーはまとめ方に無理があると思いました。
 そもそも長大な原作を二時間半にまとめること自体難しいだろうとは思いますが、だとしても終盤の展開には無理がありますよね。
 ハクロ将軍は賢者の石のことをタッカーに分析させたようですが、キメラ研究の権威ではあっても、タッカーってそんな短時間で賢者の石のことを分析できるような優秀な錬金術師ではないはずですからね。
 もっと上手い幕の引き方はあっただろうとは思います。

 ただ、幕の引き方には不満があっても、それでも自分が本作を観に行ってよかったと思ったのは、ニーナとアレキサンダーのエピソードを逃げずに正面からきっちりと映像化していたからです。
 実は自分が原作のコミックスを読んですごいな、と思ったのは1巻ではなく、2巻でした。
 1巻もそれなりに面白いなとは思ったのですが、よく出来た王道の少年漫画だなぁぐらいで、そこまで評価は高くなかったのです。
 それがオールタイムベスト5に入るほどのお気に入りの漫画になったのは、2巻のニーナとアレキサンダーのエピソードを読んだ時で、ガーン!とハンマーで殴られたような衝撃を受けました。

 今回の実写版でもキメラが「エド…おにいちゃん…」とつぶやいたとき、自分はゾワゾワと鳥肌が立ちそうになりました。
 ヤフー映画で本作を☆一つの評価をしている人はあのシーンを見ても特に何も思わなかったんですかね?不思議に思います。

 実写版『鋼の錬金術師』は傑作というわけではありません。
 自分は今年年間50本を越えるペースで映画を観に行っていますが、ベストテンには入りません。
 ただ逆にワーストテンにも入らないです。
 本作を☆一つで評価している人は普段どんな映画を観ているのか、とても気になるところです。


 お気に入り度★★★☆、お薦め度★★★(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント
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