昨日、9月10日(土)は「風のゆくえには」の【主役その2】の桜井浩介の誕生日!
現在、「風のゆくえには」スピンオフ、男女カプの「たずさえて」を連載中ですが、今日はお休みして。
せっかくなので、渋谷慶&桜井浩介バカップルが昨日一昨日どのように過ごしたかを書きとめようと思います。
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【慶視点】
「渋谷先生、明日午後からお休みなんですよね? 珍しい……」
「あーごめんね」
金曜日の帰り際、看護師の谷口さんに声をかけられて手を合わせる。明日も午後から休むくせに、今日も早々に帰ろうとしているので、申し訳なさでいっぱいだ。
「何かご予定が?」
「あーうん……まあ……」
明日は浩介の誕生日なのだ。
明日の夜は浩介の実家に行く約束をしているので、今晩は二人で前夜祝いをすることになっている。
でも、あいかわらず、プレゼントの用意ができていない……。
何が欲しいか聞いてもアホな答えしか返ってこないので、結局用意することができなくて……。今年のおれの誕生日には高価なもの(リーディンググラス……、老眼鏡だ)をもらったので、今年こそは何かプレゼントしたいと思っているんだけど……
「あのさ、谷口さんって、今までもらった誕生日プレゼントの中で一番嬉しかったものって、なに?」
「え……、もしかして明日、彼氏さんのお誕生日なんですか?」
「………」
あっさり当てられてしまって苦笑する。いつもながら鋭い。
谷口さんは「あ、すみません」と笑ってから、うーん……と唸りだした。
「もらって嬉しかったもの……。やっぱり指輪ですかね」
「……だよね」
女性に聞くのが間違っていた……。
谷口さんは引き続き、うーん、と唸っていたけれど「あ!」と叫んで手を叩いた。
「プリクラ!」
「え」
プリクラ?
首をかしげると、谷口さんはうんうん肯き、
「中学の時に付き合ってた彼が、すっごい照れ屋さんで、写真とか絶対写ってくれない人だったんですけど、誕生日の時に一回だけ一緒に撮ってくれたんです。それがすっごく嬉しかった」
「へええ………」
当たり前だけど、中学の時からプリクラあったんだ……と、時代を感じる……って、20近く違うんだから当然だけど。
「この歳でプリクラは無理だなあ……」
「じゃあ、ツーショット写真は? 渋谷先生、撮らなそうなイメージありますけど」
「うん。正解。全然ないよ」
前に、写真屋で撮ったものをのぞけば、普通に二人きりでまともに写っている写真なんて、高校卒業時のものしかない気がする。一年くらい前に携帯で撮ったのも、二人とも視線ずれてるやつだし……
「じゃあ、きっと喜ばれますよ」
「でも、どうやって? 誰かに頼むってこと?」
それはそれでハードル高い………
「あー、じゃあ……、明日ってどこに行くか決めてあります?」
「いや……でも、夜、実家帰るから横浜近辺とは思ってたんだけど」
「あ、じゃ、ちょうどいいかも。渋谷先生達、甘いもの大丈夫でしたよね? こんなのどうです?」
携帯の画面を見せてくれた谷口さん。彼氏と思われる優しそうな男性と、山盛りクリームのパンケーキと一緒に笑顔で写っている。
「お店の人の方から『撮りますよ』って声かけてくれたんです」
「へえ……おいしそう……」
写真を撮りたくなる山盛り具合だ……
「場所どこ?」
「あちこち支店あるんですけど、私が行ったのは……」
谷口さんの話を聞きながら、彼女の携帯の写真をあらためて見る。幸せそうな笑顔……。
(浩介も、こんな風に笑ってくれるかな……)
一刻も早く浩介に会いたくなってきたおれは、相当おめでたいと自分でも思う。
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夜0時ぴったり。
「誕生日おめでとう」
ソファーで並んで座っている浩介の耳にキスをすると、浩介は「うわああああ~」と言いながら、ギューッとおれに抱きついてきた。
「もう、幸せ過ぎて何をどうしたらいいのかわかんなーい」
「なんだそりゃ」
もう、何回目の誕生日だろう? 1回目の16歳と2回目の17歳の時は、まだ友達だった。それから……何年? 毎年、色々なことがあって、一緒に過ごせない年もあって……。でも、今年ほど穏やかな誕生日は初めてじゃないだろうか。
「プレゼントなんだけど……」
「うん♪ いつものでお願いします」
「は?」
いつものって何だ? ……って、あれか。
「いや、違くて」
「え!? くれないの!? そんなこと言わず……」
「あほか」
下半身に伸ばしてきた手をピシッとはね飛ばす。
「今年はちゃんとプレゼントがある!」
「え…………」
きょとんとした浩介の眉間に人差し指を突き立てる。
「でも、午後にならないと渡せない。午後まで待ってくれ」
「………………」
固まってしまった浩介………
「浩介?」
おーい、と目の前で手を振ると、
「慶………」
ゆっくりと抱きしめられた。
「浩介?」
「………………」
ぎゅううっと力が入っている。なんだ? わからないけれど、背中をポンポンと叩いてやる。
「どうした? 不満か?」
「不満じゃなくて……」
ボソボソと耳元で声がする。
「…………不安」
「不安?」
「こんなこと初めてじゃん。今年はバレンタインもくれたし………」
今年のバレンタインは26回目にして初めてチョコをプレゼントしたのだ。
間近で瞳をのぞかれる。
「慶………無理してない?」
「………………」
そうきたか………
「もしくは……」
怒られると思うけど、と前置きをしてから、浩介は言いにくそうに言葉をついだ。
「何か、隠し事でもしてるの?」
「………………」
そうくるか………
今まで何もしてこなかったからなあ……
うーん、と内心うなりながら、その愛しい頬を指で辿る。
「隠し事……してるかもな」
「え」
不安に揺れた瞳にそっと口づける。
「隠し事っていうか……」
唇に触れる。ああ……なんて愛しい……
瞳を合わせて、愛しさを込めてささやく。
「お前のことがこんなにも好きだって、隠してた、かも?」
「え………」
目をみはった浩介。
「だから、たまには形で表そうかと思ってな」
「慶………」
相手にきちんと気持ちを伝えることの大切さ。そんな当たり前のことに気づけたのは、たぶん、浩介との関係をカミングアウトしたことにより、まわりからあれこれ言われるようになったからだと思う。今までは誰にも言わず、自分たちの中だけで存在していたので、気づくことができなかった。
「浩介……」
コツン、とおでこを合わせる。
「慶……好き?」
「ん」
軽く唇を合わせる。
「好きだよ」
「…………」
再び、おでこを合わせる。
「お前は? 好き?」
「ん」
再び、唇を合わせる……
「大好き」
「ん……」
キスを深いものにしながら、ソファーに埋もれていく。
(おれ、明日仕事なんだよなあ)
頭をよぎってしまった現実をどうにか端の方に押しこんで。
愛しい人の誕生日の夜は、甘い囁きに包まれていく……
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お読みくださりありがとうございました!
って、浩介視点も書き途中なのですが、書き終われなかったため、明日に持ち越します。
夜中の1時半から書きはじめ、今4時50分。時間かかり過ぎ……。
せめて2時間は寝たいので諦めました。
ということでまた明日!!よろしくお願いします!!
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有り難すぎて泣けます…
よろしければ、また次回も宜しくお願いいたします!
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