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風のゆくえには~たずさえて29-2(山崎視点)

2016年09月25日 07時21分00秒 | 風のゆくえには~たずさえて

**

「わー! 山崎さん! 子供いたんだ?!」

 オレに気がついた樹理亜がビックリしたような声をあげた。

「えー!! なんかショック~!! みんな知ってたー?!」
「甥っこだよ。弟さんの子供」

 オレが訂正する前に、渋谷が冷静にツッコミを入れてくれたので安心した。戸田さんに変な誤解をされたくない。

(って、そんなことより!)

 こんな不意打ちで、母と戸田さんが会うことになるなんて! 心の準備ができてないっての! な、なんとかしなくては……っ

「あの……っ」
「こんにちは」

 オレが何か言うよりも早く、戸田さんはにっこりとオレと翼、そして母に頭を軽く下げてくれた。

「すごい偶然。私も今、来たばかりなんですよ」
「あ……そう、なん……」
「はじめまして。戸田菜美子と申します。今日はバスケットをしようっていう話でこちらに来ていまして……」

 オレと違って全然動じた様子もなく、戸田さんがにこやかに母に話しかけている。

「まあ、バスケット……」
 母も笑顔を張り付けたまま、うなずき……

「ねえ、まさか? もしかして?」
「…………」

 こちらを振り返ったので、腹をくくってうなずき返す。

「うん。彼女」
「うそっ、本当に? まあ!」

 相当驚いたらしい母。

「まあまあまあ、こんな若くて綺麗な方だなんて……そりゃお友達のこと殴るわけよね」
「殴る?」

 戸田さんの疑問の声に、慌てて母に向かってブンブン手を振る。

「いや、未遂だから。殴ってないから。っていうか、いいからその話は」
「え……気になる……」

 戸田さんは小首をかしげながら、

「今度教えてくださいね?」

 って、微笑んだ。め、めちゃめちゃ可愛い。って………

(今、今度って言った……)

 『今度』があるんだ、とホッとする。こんなことでホッとしてしまうあたり、情けないというかなんというか……



 目黒樹理亜は、自殺未遂をして退院してから、なんと渋谷の実家に身を寄せているそうだ。一人にするわけにはいかない、と悩んだ挙句の苦肉の策、らしい。
 でも、渋谷のお母さんの通っているフラダンス教室の発表会のお手伝いをしたり、何かと忙しくしているそうで……

「お嫁さんみたいでしょー?」
「『嫁』じゃなくて、『娘』」

 喜々としていった樹理亜の言葉を速攻で否定している桜井。あいかわらず大人げない。

「嫁はおれだし……。お母さんも目黒さんのことは娘みたいっていってたし……」

とブツブツいって、渋谷に「お前しつこい」と苦笑されていた。


「ねー山崎さんもやろーよー」

 樹理亜が下手くそなドリブルをしながら、オレに言ってくる。

「2対2じゃ勝負にならないっていうからさー」
「あ……うん」

 勝負にならない……というのは、渋谷のいるチームが強すぎるってことだな……


 と、いう予想通り。

「渋谷ー!!ちょっとは手抜けって!」
「抜いてるって」

 嫌味なくらい、余裕の表情でボールをついている渋谷。こっちはすぐに息が上がったというのに……
 そういえば、渋谷はジムに行くと、平日は2キロ、休日は4キロ泳ぐ、とか恐ろしいことを言っていた……なんて思っていたら、

「わ」

 するするするっと渋谷はオレと戸田さんの間を通り抜けゴール下に行き、立ちはだかった桜井の横を抜ける、と思いきや、後ろ手に樹理亜にパス。再度、樹理亜からボールを受け取ると、その場からあっさりとシュートを決めた。3ポイントシュートだ。

「きゃーーー慶先生、カッコいい!!」

 渋谷と樹理亜がハイタッチする。すると桜井が、本気で怒りだした。

「もーーー!チーム変えようよ!目黒さんと戸田先生、逆になって!」
「えーやだよーあたし慶先生と一緒がいいー。というか、浩介先生と同じチームヤダー」
「おれだってやだよ!」

 いつもの喧嘩。その横で、渋谷がため息をついている。

 その様子がおかしくて、笑いながら戸田さんの方をみると、戸田さんも笑顔でオレのことを見ていてくれて……

(ああ……)
 こうやって、同じことをして同じことで笑って……そんな風に毎日過ごせたらどんなに良いだろう。

 見つめ合い、笑い合うことのできる幸せ……

 戸田さん、オレはやっぱりあなたと一緒にいたい。




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お読みくださりありがとうございました!

うーん、書き終われませんでした(って毎回そんなこと言ってる^^;)。
でも、この先のお話が、この「たずさえて」で書きたかったことベスト3に入るシーンなので、
どうしてもちゃんと書きたくて……
でも、2日に一回の更新はどうしても守りたい……
のせめぎ合いの中での、「とりあえずここまで」の更新でございます。

うーん。やはり今の私の状況で、この頻度の更新は無理がある……
ので、「たずさえて」終了後、慶と浩介のただイチャイチャしているだけの話でも一つアップして、
それから、年始まで……といいたいけど、そんなに自分が我慢できるわけないので、
11月はじめくらいまで、お休みしようと思っております。
その頃には少しは落ちついているはずなので……

結婚、親離れ子離れ、高齢の親との関係……ってどんだけ真面目なテーマだ!なのにも関わらず、
クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!!
残すところあと3回(たぶん……)よろしければ、どうぞお願いいたします!

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コメント (2)
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