「花子とアン」の仲間由紀恵さんの白蓮が人気で、
林真理子さんの「白蓮恋々」が売れているそうです。
「~~恋々」のほうはともかく、
かなり前に読んだ同じ作者の
「着物をめぐる物語」(新潮社」を再読してみました。
文庫本発行の年ですから、単行本ではもっと前。
きものに興味を持ちつつも、まだ子どもや仕事できりきり舞いをしていた頃です。
再読すると、これが面白い。
というのは、この小説、きものにまつわる人々の裏の世界を描いているのです。
最盛期の銀座で働く女性たち、
芸者さんたちにきものを着せる箱屋、
歌舞伎座に出るという幽霊ーー
こういう話を集めて、
今は滅んでいってしまった
「きもの全盛期」を忍んでいるんですね。
きもの業界や銀座、歌舞伎、映画界などの
裏話を教えてくれる貴重な資料になっているように思います。
林真理子さんの文章には独特の匂いがあり、
好き嫌いもあるのですが、
そこを外してながらでも、
資料として読んでおいて損はないように思います。
最初に読んだときには、
あまり興味を持てなかったのも無理はありません。
だって、きものを着るのもおぼつかないのに、
業界の裏話なんてとてもとても追いつきません。
月日は経ち、少しは着られるようになり、
きもの周辺のことにも興味を抱けるようになりました。
その上で映画好きな私にとって面白かったのは、
「ぼっけえ、きょうてえ」(岩井志摩子著・
角川文庫)というホラー大賞を獲った本の
表紙になった怖い絵がありました。
この絵、甲斐庄楠音という画家の作品。
私は、この本で初めて知りました。
画壇で注目を浴びたものの「穢い絵」の烙印を押され
「悩んで悩んでとうとう描けんようになってしもうた」
(「お夏」より)
そんな彼を映画界の巨匠、溝口監督
(小説の中では名前は堀口監督となっています)が、
「この人は女と美しさの百科事典のような人だ」と、
女優の衣裳考証を依頼したといいます。
「女ときものを知り尽くした」画家は、女優の卵に言います。
章の終わりにこんな帯留の写真が添えてあるのも楽しい。
「この世のきれいなものはみんな女が
ひとり占めしてしまうもんや。
~~わしは綺麗なべべ着られる女に嫉妬(へんねし)
してたんやないやろか」
いや、ホント、いまさらながらこの言葉が身に沁みます。
美しい色と模様にあふれたきものの海を前にしたときの女、
役者、着付け師たちの執着は怖いほどですが、
自分のなかにもそんな怖さは潜んでいるのかもしれません。
けれど、やはりきれいなきものを楽しめるのは女の特権。
皆さん、もっともっときれいを、きものを楽しみましょう。
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