佐世子の外見の若さには当初、刑事も驚いた様子だったが、今回の事件とは無関係と判断したのか、それについては何も聞かれなくなった。しかし、佐世子は黙ってはいたが、理屈でなく、本能的に自身の外見もこの事件と深い関りがあるような気がしてならなかった。
マスコミの報道によれば、正志はナイフを前もって準備し、事件当日の土曜に林田恵理を殺す目的で午後1時頃からK公園で待ち伏せした。午後5時前に孝と恵理が彩乃の目撃したベンチに現れ、数分間、様子を伺った後、近くの木々の中から恵理に向かって一直線に走り、ナイフを向けた。しかし、孝が前に立ちはだかり刺してしまったということを伝えていた。佐世子にとって新しい情報はなかった。
事件から1週間が過ぎた。報道陣や野次馬が自宅の周りを取り囲んでいたが、数日で潮が引くように姿を消した。日々、新たな事件や事故は起こり、上書き保存されていく。佐世子はその間、世の中で何が起こっているのか、全くと言っていいほど知らなかった。いまは夜逃げするように自宅を抜け出し、都内のホテルの一室に彩乃と二人、身をひそめるようにして生きている。
彩乃は自分自身を責めていた。彼女が孝と林田恵理がK公園のベンチで腕を組んで楽しそうにしていたという事実を正志に伝えなければ、この事件は起きなかったとの考えに強くとらわれていた。激しく泣いたかと思えば、人形のように表情を変えず、感情をなくしてしまったのではないかと心配になることもある。それを繰り返している状態だ。彩乃から見れば、兄が父を殺したのだ。当然、麻美のことも心配だが、いまは目の前の彩乃を守るのに全力を尽くすしかないと佐世子は決意していた。夜中、すやすやと彩乃の寝息が聞こえてきた。佐世子の心がわずかに安らぐ瞬間だった。
マスコミの報道によれば、正志はナイフを前もって準備し、事件当日の土曜に林田恵理を殺す目的で午後1時頃からK公園で待ち伏せした。午後5時前に孝と恵理が彩乃の目撃したベンチに現れ、数分間、様子を伺った後、近くの木々の中から恵理に向かって一直線に走り、ナイフを向けた。しかし、孝が前に立ちはだかり刺してしまったということを伝えていた。佐世子にとって新しい情報はなかった。
事件から1週間が過ぎた。報道陣や野次馬が自宅の周りを取り囲んでいたが、数日で潮が引くように姿を消した。日々、新たな事件や事故は起こり、上書き保存されていく。佐世子はその間、世の中で何が起こっているのか、全くと言っていいほど知らなかった。いまは夜逃げするように自宅を抜け出し、都内のホテルの一室に彩乃と二人、身をひそめるようにして生きている。
彩乃は自分自身を責めていた。彼女が孝と林田恵理がK公園のベンチで腕を組んで楽しそうにしていたという事実を正志に伝えなければ、この事件は起きなかったとの考えに強くとらわれていた。激しく泣いたかと思えば、人形のように表情を変えず、感情をなくしてしまったのではないかと心配になることもある。それを繰り返している状態だ。彩乃から見れば、兄が父を殺したのだ。当然、麻美のことも心配だが、いまは目の前の彩乃を守るのに全力を尽くすしかないと佐世子は決意していた。夜中、すやすやと彩乃の寝息が聞こえてきた。佐世子の心がわずかに安らぐ瞬間だった。