白雲去来

蜷川正大の日々是口実

「大和」神話。

2016-06-20 17:25:52 | 日記
六月十八日(土)晴れ。

梅雨入りとなった途端にこの暑さ。浪人暮らしには、暑さ寒さは色々な意味で耐えがたい。今日は、青山墓地において「無名烈士の法要」があって、当初は参加予定であったが、仕事が溜まってしまい欠礼。群青の会の大熊雄次氏に参加して頂いた。

午前中に事務所へ。以前、機関誌を作成したのだが、印刷機のインクが切れてしまい、中途半端になってしまった。注文したインクが届いたので、今日の印刷となったのである。事務所の片付けをしながら、印刷機を回して、一時間ほどで終了。

そう言えば、先日、飲み屋で隣に座っていた同輩と思えるおっさんたちが、「大和」の沖縄特攻(※「天一号作戦」)について語っていた。嫌いな話ではないので、片耳は、私の友人の話、もう一つの耳で盗み聞きをした。すると、そう言った話が好きそうな人が、「『大和』は凄かったらしいよ。アメリカの飛行機が『大和』に向かって急降下してくると、あのでっかい大砲を飛行機に向かって撃つと、アメリカの飛行機が、いっぺんに何機もガラガラと墜ちたらしいよ」。もう一人は、「へぇー。さすが「大和」だね」。

私も、子供の頃に、そういった話を幾度も聞いたことがある。これは、不沈戦艦と言われた世界最大の「大和」に対する日本人の誇りと、「そうあってほしい」という思いから、「大和」の大砲で一度に何機もの米軍機が落ちた、と信じたのだろう。そういう私も、その話を聞いた子供の頃は、疑いもしなかった。大人になって、様々な戦記物の本を読んで、その話が、全く根拠のないものと知った時には、本当にがっかりしたものだった。

当時の日本の対空射撃装置の性能は極めて悪く、一機を撃墜するのに要する弾の数は、三千発とも一万二千発とも言われていた。「ミッドウエー海戦」の報告書である「航空戦戦訓並びに所見」には、弾が目標附近より、はるか後方の千メートル~二千メートル後方でさく裂し、ほとんど命中しなかったとある。専門的なことは省くが、「大和」に襲い掛かった米軍機は、「大和」以下十隻の艦船に対して、わずか二時間の間に何と三百七十機前後の飛行機が波状攻撃をしかけた。

『真相・戦艦大和ノ最期』(原勝洋著、ベストセラーズ出版)によると、米側の記録を調査した結果、坊の岬沖海戦での米攻撃隊の損害は被撃墜五機、原因不明の墜落一機(進撃途中で落下し海面に激突した)、海上に不時着水一機、被弾損傷五十二機(内、五機が修理不能と判断され海上投棄)、戦死十四名、負傷四名となっている。「大和」の最終改装時には百五十以上の対空機銃や二十四門の高角砲で武装され、軽巡矢矧以下の駆逐艦の対空機銃が一斉に米軍機に向かって撃っても、米軍機の犠牲は十機程度だった。いかに日本の対空機銃の性能が悪かったかが分かる。因みに「大和」の犠牲は、三千余名にものぼる。

隣に座った、ご同輩にこんな話をしても酒が不味くなるだけなので、片方の耳を閉じた。

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日本版『刺客列伝』。

2016-06-20 11:04:06 | 日記
六月十七日(金)晴れ。

メールを開いたら、先日取材を受けた『宝島』からの校正が入っていた。「今日中に」ということなので、朝食前に、頑張って原稿の校正を行った。私が、一番苦手なのがテープ起こしの作業である。経験のある人は分かるだろうが、これが結構大変で、記憶力と、暗記力が極度に衰えたボケ頭には、作業と言うよりも、苦行に近い。今回のライター氏は、二回目だが、さすがに文章のまとめ方も上手で、感心する。有難うございました。

私が尊敬する作家の山平重樹さんの著書に『戦後アウトローの死に様』というものがある。第一章には「昭和維新家の死に様」として、山口二矢、三島由紀夫、森田必勝、前野光保、野村秋介、阿部勉、三沢知廉、三浦重周と言った人たちが紹介されている。第二章では、「昭和革命家の死に様」として、主に左翼の活動家が取り上げられている。第三章には、「昭和ヤクザの死に様」として、五人の任侠の人が、そして最終章の第四章には「戦後表現者の死に様」として、金子正次、梶原一騎、松田優作、深作欣二と言った人たちの死に様が紹介されている。

私は、山平さんのこの本を読んだ時に頭に浮かんだのは司馬遷の『史記』の中の「列伝」、それも『刺客列伝』である。その『刺客列伝』には曹沫、専諸、豫譲、聶政、荊軻の五人が取り上げられている。この『史記』の列伝七十巻を訳した岩波文庫の『史記列伝・全五巻』は人間観察の宝庫である。この本が何時の時代もトップに立つ者の必読書であったことを見逃すことはできない。「人」に学ぶことによって、その人達が関わった様々な人生と出会い、それまで持っていた価値観とは違う価値観を教えられるかもしれない。

この日本版の『刺客列伝』とも言うべき山平さんの『戦後アウトローの死に様』を是非ご一読頂きたい。

夜は、酔狂亭に友人が来訪しての一献会。

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