スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

倉敷藤花戦&基本感情

2007-12-06 18:52:34 | 将棋
 斎田晴子倉敷藤花,清水市代女流王将が1勝ずつをあげて迎えた第15期倉敷藤花戦三番勝負第三局は,11月23日に指されました。遅くなりましたがここで紹介します。
 振駒で先手は清水王将。後手のごきげん中飛車に対して☗7八金と上がり,先手が2筋,後手が5筋の歩を交換するのは第一局と同じ。25手目と27手目が入れ替わってはいますが,ここまで同一局面で進行しました。
 第一局は後手が勝ちましたが,途中は先手が優勢でしたので後手から変化するのは当然。玉の囲いを後回しに☖3三桂と跳ね,☖1三角と上がって別の将棋に。
 先手の作戦はとにかく中央からの抑え込み。後手が38手目に☖2一飛と回って☗2七歩と受けさせたのはポイントでしょうが,これ以上踏み込む順がなかったようです。
 そうこうしている間に先手は金銀を中央に集中。64手目の☖3五歩は待望の桂頭攻めですが,ここから☗5二歩☖同飛☗5三歩☖5一飛と抑えてから☗2五桂で桂交換。直後に☖7四桂と角銀両取りに打たれて駒損にはなりますが,すぐに☖5三飛と出ると☗2一飛成と成りこまれてしまうので一旦は☖2四歩と打たなければいけなかったのが後手の泣き所。これで角が使えなくなってしまいました。
 先手は81手目に☗8六桂と据え,87手目には☗7五桂と2枚目の桂馬を打ちました。さらに8九の桂馬までが101手目に☗6五桂と跳ね出せて必勝の構え。以下,いくばくもなく後手の投了となりました。☖9四王と逃げれば詰むわけではありませんが,☗6二成桂くらいでも先手の楽勝でしょうから止むを得ないでしょう。とにかく一局を通して先手のいいところばかりが出たという印象です。
 女流王位を失い,第一局も敗れ,トップを走っていた女流名人戦のA級リーグでもすでに降級の決まっていた相手に負けるなど,清水新倉敷藤花は不振を極めているという印象でしたが,ごく短期間の間に立ち直ったようでこれで再び二冠に復位。一方の斎田前倉敷藤花はこれで無冠に転落となってしまいました。

 第三部定理五六を確実に理解するためには,これはスピノザの感情論の基本中の基本といえるであろう,人間の基本感情affectus primariiという考え方を知っておかなければならないと思います。スピノザは,人間の感情というものは,その基本感情としての,欲望cupiditas,喜びlaetitia,悲しみtristitiaの3種類以外には存在せず,それ以外の名称で呼ばれるような感情についてはすべて,これら3種類の感情のどれかに含まれると考えているのです。この定理Propositioにおいて,あらゆる感情がこれらみっつの感情の合成されたものか,そうでなければこれらみっつの感情から導き出されたものであるかのどちらかであるといわれているのは,こうした理由によっています。
 たとえば第三部諸感情の定義一八における憐憫commiseratioですが,これはその定義Definitioに示されているように悲しみの一種であるということになります。また第三部諸感情の定義二四で示されている,憐憫の習性としてみられない限りでの同情misericordiaという感情は,ある種の愛amorという感情であるといわれていますが,愛という感情自体は第三部諸感情の定義六において喜びの一種であるとされていますから,この場合は同情という感情はある種の喜びであるとみなされていることになります。このように考えれば,憐憫と同情がまったく異なった種類の感情であるということは,さらに容易に理解できるでしょう。憐憫が基本感情のうちの悲しみとされるのに対し,同情はむしろ喜びとされているからです。
 このように,どんな複雑に思われるような感情もこれら基本感情のどれかなのです。そしてその感情がそのうちのどれであるのかということは,今回のテーマに大きく関係してくるといえるのです。
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