棋王戦挑戦者決定戦変則二番勝負第一局。ここまでの対戦成績は,羽生善治二冠が9勝,阿部隆八段が4勝でした。
振駒で阿部八段の先手。羽生二冠の作戦は☖9四歩型の一手損角換り。9筋の位を取ってから14手目に☖2二飛と回るダイレクト向飛車に。戦型としては竜王戦第四局と同じです。
先手は17手目に☗6五角。渡辺竜王は避けた形ですが,本来ならこう打つべきところと思います(感想戦によると阿部八段はこの後の☖7四歩を軽視していたそうです。しかしこの手は前述の竜王戦の際に,こういう形ではある手といわれていた,僕でも知っている手ですので不可解な気がします)。乱戦になるかと思いきや持久戦に。
40手目の☖5四角は勝負手のように思えますがまだ本格的な戦いにはならず。先手は陣形をかなり乱されましたがリフォーム。66手目に後手が☖4四銀と出てようやく戦いに。この間,60手目の☖1四歩~☖1三桂は個人的に謎の手順です(阿部八段によれば☖1四歩の後の☗8七歩が敗着だそうです。この将棋の感想戦は驚くことばかりです)。
68手目の☖4五同飛の局面から観戦。先手は金を繰り出し73手目に☗4三歩と焦点の歩を打ちましたが,ここはぼんやり☗4四歩も有力だったと思います。
先手は抑えこむ方針だったと思うのですが80手目に☖4四飛と走られて後手に捌かれました。85手目の☗5九馬もここに至っては仕方なかったかもしれませんが負けを早めた感じ。阿部八段は諦めの早いタイプということもあり,ここではもうダメと思っていたのでしょう(羽生二冠はインタビューで,ここで☖5八銀が打てたので分かりやすくなったといっています)。90手目の☖6九成銀を見て先手の投了。羽生二冠が佐藤康光棋王への挑戦を決めました。投了以下,取れば王手飛車ですので☗8八玉しかありませんが☖4八飛成が詰めろですので一手一手。投了は致し方ないところです。
棋王戦は五番勝負。第一局は2月13日に指されます。
これで理性ratioに関係する話も終りにします。そこで第四部定理五〇を理解するためにあと必要なのは,悪malumというのが一般にどういうことを意味するのかということになります。そこで悪の定義Definitioである第四部定義二をみておくことにします。
「これに反して,悪とは,我々がある善を所有するのに妨げとなることを我々が確知するもの(quominus boni alicujus simus compotes),と解する」。
以前にも紹介したように,この定義は,善bonumの定義である第四部定義一とふたつでセットであるといえます。実際,これに反して,とか,あるいは善ということばが悪の定義の中に出てくるわけですから,実際のところは第四部定義一を知っていなければ第四部定義二を理解することは不可能であるといってもいいかと思います。ただ,現状は悪の何たるかだけを知ることができれば十分ですので,ここでは第四部定義二の方だけを主に取り扱います。
さて,善の定義である第四部定義一に比べますと,悪の定義である第四部定義二の方は,これに反してといわれているにも関わらず,やや消極的に定義されているといえます。というのは,善が自分にとって有益であると自分が認識するcognoscereものといわれているのに対して,悪は,自分にとって不利益であると自分が認識するものとはいわれずに,自分の善にとって妨げとなると認識されるものといわれているからです。ただし,ここではとくにそのことにはこだわらず,有益な事柄を妨害するものはすべて不利益なものであると考え,人間が自分自身にとって不利益であると認識するすべてのものは悪である,というようにこの定義を理解することとします。
振駒で阿部八段の先手。羽生二冠の作戦は☖9四歩型の一手損角換り。9筋の位を取ってから14手目に☖2二飛と回るダイレクト向飛車に。戦型としては竜王戦第四局と同じです。
先手は17手目に☗6五角。渡辺竜王は避けた形ですが,本来ならこう打つべきところと思います(感想戦によると阿部八段はこの後の☖7四歩を軽視していたそうです。しかしこの手は前述の竜王戦の際に,こういう形ではある手といわれていた,僕でも知っている手ですので不可解な気がします)。乱戦になるかと思いきや持久戦に。
40手目の☖5四角は勝負手のように思えますがまだ本格的な戦いにはならず。先手は陣形をかなり乱されましたがリフォーム。66手目に後手が☖4四銀と出てようやく戦いに。この間,60手目の☖1四歩~☖1三桂は個人的に謎の手順です(阿部八段によれば☖1四歩の後の☗8七歩が敗着だそうです。この将棋の感想戦は驚くことばかりです)。
68手目の☖4五同飛の局面から観戦。先手は金を繰り出し73手目に☗4三歩と焦点の歩を打ちましたが,ここはぼんやり☗4四歩も有力だったと思います。
先手は抑えこむ方針だったと思うのですが80手目に☖4四飛と走られて後手に捌かれました。85手目の☗5九馬もここに至っては仕方なかったかもしれませんが負けを早めた感じ。阿部八段は諦めの早いタイプということもあり,ここではもうダメと思っていたのでしょう(羽生二冠はインタビューで,ここで☖5八銀が打てたので分かりやすくなったといっています)。90手目の☖6九成銀を見て先手の投了。羽生二冠が佐藤康光棋王への挑戦を決めました。投了以下,取れば王手飛車ですので☗8八玉しかありませんが☖4八飛成が詰めろですので一手一手。投了は致し方ないところです。
棋王戦は五番勝負。第一局は2月13日に指されます。
これで理性ratioに関係する話も終りにします。そこで第四部定理五〇を理解するためにあと必要なのは,悪malumというのが一般にどういうことを意味するのかということになります。そこで悪の定義Definitioである第四部定義二をみておくことにします。
「これに反して,悪とは,我々がある善を所有するのに妨げとなることを我々が確知するもの(quominus boni alicujus simus compotes),と解する」。
以前にも紹介したように,この定義は,善bonumの定義である第四部定義一とふたつでセットであるといえます。実際,これに反して,とか,あるいは善ということばが悪の定義の中に出てくるわけですから,実際のところは第四部定義一を知っていなければ第四部定義二を理解することは不可能であるといってもいいかと思います。ただ,現状は悪の何たるかだけを知ることができれば十分ですので,ここでは第四部定義二の方だけを主に取り扱います。
さて,善の定義である第四部定義一に比べますと,悪の定義である第四部定義二の方は,これに反してといわれているにも関わらず,やや消極的に定義されているといえます。というのは,善が自分にとって有益であると自分が認識するcognoscereものといわれているのに対して,悪は,自分にとって不利益であると自分が認識するものとはいわれずに,自分の善にとって妨げとなると認識されるものといわれているからです。ただし,ここではとくにそのことにはこだわらず,有益な事柄を妨害するものはすべて不利益なものであると考え,人間が自分自身にとって不利益であると認識するすべてのものは悪である,というようにこの定義を理解することとします。