スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

ニューヨーク&心情の動揺

2007-12-07 19:08:21 | NOAH
 
 10月の日本武道館大会でサモア・ジョー選手を相手にGHCヘビー級のベルトを防衛した三沢光晴選手は予定通りに渡米。現地時間11月3日のROHニューヨーク大会でKENTA選手の挑戦を受けました。
 三沢選手は渡米自体が3年ぶり。ROHには初登場でしたが,アメリカでもプロレスファンの間では有名人。これはもうネット社会の賜物で,まだ渡米経験のなかった全日本プロレス時代にすでにその試合は注目されていました。ということで会場は満員。KENTA選手はたびたびROHに出場しているということで,ROH側の依頼によってのタイトル戦。三沢コールもKENTAコールも同じように起きていました。
 三沢選手はヘビー級のレスラーとして,その体格は恵まれているとはいえません。ただ,常々,自分より小さい選手と試合をするのは楽であるということを言っています。KENTA選手は丸藤選手よりさらに小柄の選手ですから,そういう意味では三沢選手にとっては楽な試合であったかもしれません。事実,ここは力で圧倒するようなプロレスを展開し,最後はブレーンバスター式のエメラルドフロウジョンを決めて7度目の防衛に成功。完勝といえるような内容であったと思います。

 第三部定理五六を理解するためには,基本感情affectus primariiのほかにもうひとつ,心情の動揺animi fluctuatioというのがどういうことであるのかということを理解しておかなくてはいけないでしょう。これは第三部定理一七備考で説明されています。ごく簡単にいうならば,ある人間のうちで,同一の対象に対して,概念notioの上での反対の感情をともに抱くとき,この人間の心情が動揺している,あるいは同じことですが,この人間には心情の動揺が生じているといわれます。
 当該部分において,スピノザは愛amorと憎しみodiumを例に説明していますが,僕たちが頻繁に経験する心情の動揺というのは,希望spesという感情affectusと,スピノザがmetusというラテン語で示している感情との間での心情の動揺ではないかと思います。metusは岩波文庫版の『エチカ』では恐怖と訳されていますが,これはその内容からして不安といった方がいいかと思いますので,僕は不安といいます。したがって僕が不安という感情は,岩波文庫版でいう恐怖という感情に該当しますので,この点はご注意ください。
 僕たちはある事柄,とくに未来に関係するある事柄を表象するimaginariことによって,希望という感情を抱くことがあります。ところがそれと同一の未来に関係するある事柄の表象によって,不安に苛まれるという場合もあるわけです。これは多くの人が経験していることではないかと思います。希望と不安は,少なくとも『エチカ』においては概念上の反対感情にあたります。したがってこういう場合,僕たちには心情の動揺が生じているということになるのです。
コメント
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