犬と引越し

夜、寒空に近所の犬の吠え声が響く。

なんてな情景も、今はすっかり減ってしまった。
犬を家の中で飼うようになったからだ。
通りがかりに吠えつく犬も減った。

が、近所にそういう犬がいた。
人が通るたびに吠え、通行人が行き過ぎようとすると
家の向こう側を走って回ってまたこっちの隅から吠える。

その犬も、いつも戸外にいるわけではなかった。
それでも、夜も外に出している時間があるらしく、
夜空を吠え声が渡ってきた。

今日、犬の散歩をしていたら、その家の前に引越しのトラックが停まっていた。
家のあちこちが開放してあり、既にがらんとした室内が見える。
いつも犬の散歩をしていたおばさんが出てきたので、話しかけてみた。

ウチのオス犬の方が、お宅の犬が好きだったんですよ。
「ああ、そうでしたか。
犬はもういないんですよ。
獣医さんに引き取ってもらって。」
ありゃりゃ。
引越し先では飼わないのだろうか。なんとなく、聞けなかった。

あきらかにテリアが入っている雑種の、きたなーい色の、
爺むさくってかわいい、元気なメス犬だった。

さみしくなるな。