[あらすじ]
まちなかですれ違う人、店員といった赤の他人に対しても挨拶していきたい。
治安の悪化が言われたり、「絆」という言葉が流行ったり、
公共のマナーが問われたり、ちょっといい話がやっぱりウケたり。
地域性もあるとは思うが、都市化の影響は否めないんじゃないかと思う。
私は20代から14年間、水道のメーター検針の仕事をしていた。
雨の日も嵐の日も積雪の日も猛暑の日も
一軒一軒を回って、地面に在って忘れられているメーターボックスを
こじ開けてはハンディーターミナルに数字を入力して
水量と料金のお知らせ票を配布する。
私は集団の中での人付き合いが得意でなかったので、
一人で外を回る仕事と思って始めたのだが、
意外と深く人と接することもある仕事だった。
一日誰とも会わずに仕事が終わることもあったが、
面白いことに、そんな日は疲れが大きかった。
やっぱり人間、他の人とちょいとでも言葉を交わしたりすると
いきいきとするようだ。
担当のある地区に、小さな墓地があった。
墓地の隅にはお堂があって、お堂に続いて小さな家が建っており、
そこには墓守の一家が住んでいた。
ある日、墓守の婆さんがちょうどお堂の前に出ていた。
「検針員さん?いつもありがとうね、うちのメーター、見にくくてごめんね」
狭い隙間に有って、上に箱が載っているのだ。
毎回、物をどかさなければ見られないのでたいへんだが、
こういう一言があるとかなり気持ちが変わる。
婆さんというのはよくしゃべる。
「この前お墓参りに来た人がね…」と始まった。
でもさすが墓守の婆さんで、いい話を持っているので聞きでがある。
しまいにゃ「今度お茶飲みに来なさいよ」とのお誘い。
はい…
なんの話の流れだったか忘れたが、この婆さんが言っていた。
「道を歩く時もね、しかめっ面してちゃダメ。
顔はみんなが見てるんだから。」
通りすがりの人がいい気持ちになるような顔で歩きなさい、と言う。
私が歩く仕事だから、そんな話をしたのだろう。
「にやにや笑ってたらおかしな人だと思われるから、
笑わなくてもいいけどね。」
じゃあ、穏やかな顔で?
「そう!いい言葉ね。穏やかな顔で。」
ほめられて気持ちいいし、婆さんの話は大概長過ぎるけれど
「あなたもまだ仕事たくさん有るわね、またいらっしゃい。」
と送り出してくれたので、その後は穏やかな気持ちで穏やかな顔で仕事ができたものだ。
「阿弥陀さまはいつも見てらっしゃるのよ。」
何人かで何かを決める時にしかお世話になっていないと思っていた阿弥陀如来だったが。
阿弥陀さまの遣いの婆さま、長生きだったらまだいるかもしれない。
久しぶりに行ってみようかな。
まちなかですれ違う人、店員といった赤の他人に対しても挨拶していきたい。
治安の悪化が言われたり、「絆」という言葉が流行ったり、
公共のマナーが問われたり、ちょっといい話がやっぱりウケたり。
地域性もあるとは思うが、都市化の影響は否めないんじゃないかと思う。
私は20代から14年間、水道のメーター検針の仕事をしていた。
雨の日も嵐の日も積雪の日も猛暑の日も
一軒一軒を回って、地面に在って忘れられているメーターボックスを
こじ開けてはハンディーターミナルに数字を入力して
水量と料金のお知らせ票を配布する。
私は集団の中での人付き合いが得意でなかったので、
一人で外を回る仕事と思って始めたのだが、
意外と深く人と接することもある仕事だった。
一日誰とも会わずに仕事が終わることもあったが、
面白いことに、そんな日は疲れが大きかった。
やっぱり人間、他の人とちょいとでも言葉を交わしたりすると
いきいきとするようだ。
担当のある地区に、小さな墓地があった。
墓地の隅にはお堂があって、お堂に続いて小さな家が建っており、
そこには墓守の一家が住んでいた。
ある日、墓守の婆さんがちょうどお堂の前に出ていた。
「検針員さん?いつもありがとうね、うちのメーター、見にくくてごめんね」
狭い隙間に有って、上に箱が載っているのだ。
毎回、物をどかさなければ見られないのでたいへんだが、
こういう一言があるとかなり気持ちが変わる。
婆さんというのはよくしゃべる。
「この前お墓参りに来た人がね…」と始まった。
でもさすが墓守の婆さんで、いい話を持っているので聞きでがある。
しまいにゃ「今度お茶飲みに来なさいよ」とのお誘い。
はい…
なんの話の流れだったか忘れたが、この婆さんが言っていた。
「道を歩く時もね、しかめっ面してちゃダメ。
顔はみんなが見てるんだから。」
通りすがりの人がいい気持ちになるような顔で歩きなさい、と言う。
私が歩く仕事だから、そんな話をしたのだろう。
「にやにや笑ってたらおかしな人だと思われるから、
笑わなくてもいいけどね。」
じゃあ、穏やかな顔で?
「そう!いい言葉ね。穏やかな顔で。」
ほめられて気持ちいいし、婆さんの話は大概長過ぎるけれど
「あなたもまだ仕事たくさん有るわね、またいらっしゃい。」
と送り出してくれたので、その後は穏やかな気持ちで穏やかな顔で仕事ができたものだ。
「阿弥陀さまはいつも見てらっしゃるのよ。」
何人かで何かを決める時にしかお世話になっていないと思っていた阿弥陀如来だったが。
阿弥陀さまの遣いの婆さま、長生きだったらまだいるかもしれない。
久しぶりに行ってみようかな。
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