しらが賛

小学生と一緒に、テレビを見ていた。

選挙の夜、開票がすすみ、続々と当選が決まっていく時だ。
政治家がぞろぞろ登場する。
顔を見て、ああだこうだ言っていた。
ある人を見て、子どもが言った。

「この人、しらがだからヤだ」

なぬ？
白髪(ここでは、はくはつではなくしらがと読むことにいたしましょう）
だからイヤだとは。
なるほどしかしそれは世間の人もそうなのかもしれない。
そう思って見ると、この人もこの人も染めている。
あ、珍しい、この人はホラここに白髪があるから染めてない。
白髪を黒く染めると、若く活き活きとした人に見えるのか。
政治家も貫禄を求められる立場じゃないのか。
若白髪ならいざ知らず、誰でも年を取れば白髪は出るのに。
高齢化社会だというのに、白髪が嫌われているのか。
年を取ること自体も嫌われているのじゃないか。

いろんな思いが駆け巡る。

あらちょいと、私の前でよくもそんなことが言えたものね。

と言ってみた。
私は前髪の半分が白い。
20代から、生え際の右端に数本の白髪があったが、
30代後半でいつの間にやら増えて、今や半分白い。
前髪を伸ばすとブラックジャックみたい、なんて言っていたが、
今や白くない方にも白いものが混じるので、ただの白髪。

言われて子どもは言葉に詰まっていた。
ごめんなさいね。
でも
年を取れば誰でも白髪は出るし
お母さんが白髪出た時にそんなふうに言ったらきっと傷つくし
でも年を取れば誰でも白髪は出るから傷つかなくてもいいけれど
お祖母ちゃんだって白髪はあるけどヤじゃないでしょ

と、また思いが駆け巡るぐる。

白髪はひどく嫌われる。
黒い頭に一本発見されれば、抜かれる。
抜くと増えると言って、根元から切られる。
切っていたのに増えたと言って、部分染めされる。
部分じゃ追いつかないわと言って、全体染められる。
根元が伸びてきたと言って、繰り返し染められる。
染めている陰でしかし白髪は増える。
しかし染められる。
黒く、茶色く、黄色っぽく、ときには紫に。

アンチエイジングって言葉が流行っている。
超高齢化社会なのに。
誰しも年は取るものなのに。
年上の者を尊敬し、年寄りを大切にする文化が失われつつある
ところにもってきて社会の高齢化。
気持ちをかえた方が良いように思うんだけどねぇ。

ハタチの頃、二十歳らしくなくありたいと思った。
40歳になったら、０歳と80歳の中間のような40歳になりたいと思った。
半分白髪になってたら面白いな、と思っていた。
思っていたら、なるもんだね。

心の中も、０歳と80歳の部分を持ちたいと思っていた。
それができているかは自己評価できませんが。