十年ほど前から、左耳に耳鳴りを持っている。
当時、鍼灸学校の学生だった。
自分に耳鳴りが出たなんて、こんなに興味深くいじくり放題な患者はいない。
しかし、うまく治すことができず、なんだか諦めモードになってしまって、今に至る。
※
聴力検査をすると、左耳だけある周波数のところに聴力が低い部分が有る。
「そこの音域で耳鳴りが鳴っていて、邪魔で聞こえにくいんでしょう。」
と、近所の爺医が言う。
ジジ咽喉科か。
おそらく、順番が違う。
そこの周波数に聴力の低下が有る。感度が低いのだ。
それを補うべく、脳の側で出力の増幅をする。
すると、かすかなノイズも増幅されてしまう。
この、増幅されてしまったノイズ成分が、耳鳴りとして聞こえている。
と、考えられる。
※
ある居酒屋で。
店員が冷蔵庫にビールジョッキを片付けている。
ジョッキがぶつかり合って、きついガラスの衝突音がする。
隣のテーブルで話していた60前後の男性の一人が、声をかける。
「ちょっとちょっと。
耳が痛いよ。」
「はあ。」
曖昧な返事をして、店員は作業に戻る。
ジョッキがぶつかる音は静まらない。
思うに、若い店員は何を注意されたのか、分からなかったのだろう。
「耳が痛いよ。」では、何が原因で耳が痛いと訴えているのか、伝わらない。
「お兄さん、もう少し静かに作業してくれないかな。
けっこう音が大きくて、耳が痛いんだよ。」
くらい、説明しないと分からない。
※
若者がアホなわけじゃない。と、思う。
耳が痛い、という感覚は、なってみないと分かりにくい。
それに、人は得てして、自分のたてている音は気にならない。
※
私も、耳が痛いと感じることが有る。
大きい音、堅い音、きつい声、突然の拍手、などなど。
ある居酒屋で。(また呑んでんのか)
隣のテーブルの四人組のうち、向い側の男の声がきつい。
狭いスペースにぎちぎちにテーブルを並べているので、隣席が近い。
ただ、反対側の隣の客の声がまったく気にならないところ見ると、
やはりこの男の声がきついのだ。
ただ大きい声というのではなくて、声質も関係しているようだ。
幸い、数分後に彼らは精算をし始めた。
おうおう帰れ帰れ。
※
ほっとしたのも束の間。
空いたその席に来たカップルの女性が、早口な上に声質が堅い。そして、高めだ。
これはまずい。
けたたましい声が攻撃してくるので、
何も集中できない。
参った。
メニューの文字が頭に入ってこない。
私は向いの席の連れの声も聞き取りづらい。
連れも私の声が聞き取りにくいと言う。
こうしてごらん、と私は耳に両耳の後ろに手を当てた。
すると、周りの声はカバーされ、
自分の声と、正面にいる連れの声がぐっとクローズアップされる。
まるで耳元に音源が有るような聞こえ方になる。
※
聴力が落ちていることが原因で耳鳴りがしてしまうなら、
その聴力を補ってやれば良い。
では、私の左耳に集音器をいつも付けておけば良いのではないか。
マギー審司さんのみたいな耳。
百円均一ショップの手品コーナーで売っているだろう。
※
いやそれでは全ての音域の音が拾われてしまう。
やはり、聴力が落ちている周波数のところだけを上げてやらないと、
別の問題が起きそうだ。
だからつまりそれって、
特定の周波数帯だけ上げることのできる補聴器ってことだわね。
そういう機器は有りますわね。
何?まず飲み過ぎをやめろ?
はいはい
当時、鍼灸学校の学生だった。
自分に耳鳴りが出たなんて、こんなに興味深くいじくり放題な患者はいない。
しかし、うまく治すことができず、なんだか諦めモードになってしまって、今に至る。
※
聴力検査をすると、左耳だけある周波数のところに聴力が低い部分が有る。
「そこの音域で耳鳴りが鳴っていて、邪魔で聞こえにくいんでしょう。」
と、近所の爺医が言う。
ジジ咽喉科か。
おそらく、順番が違う。
そこの周波数に聴力の低下が有る。感度が低いのだ。
それを補うべく、脳の側で出力の増幅をする。
すると、かすかなノイズも増幅されてしまう。
この、増幅されてしまったノイズ成分が、耳鳴りとして聞こえている。
と、考えられる。
※
ある居酒屋で。
店員が冷蔵庫にビールジョッキを片付けている。
ジョッキがぶつかり合って、きついガラスの衝突音がする。
隣のテーブルで話していた60前後の男性の一人が、声をかける。
「ちょっとちょっと。
耳が痛いよ。」
「はあ。」
曖昧な返事をして、店員は作業に戻る。
ジョッキがぶつかる音は静まらない。
思うに、若い店員は何を注意されたのか、分からなかったのだろう。
「耳が痛いよ。」では、何が原因で耳が痛いと訴えているのか、伝わらない。
「お兄さん、もう少し静かに作業してくれないかな。
けっこう音が大きくて、耳が痛いんだよ。」
くらい、説明しないと分からない。
※
若者がアホなわけじゃない。と、思う。
耳が痛い、という感覚は、なってみないと分かりにくい。
それに、人は得てして、自分のたてている音は気にならない。
※
私も、耳が痛いと感じることが有る。
大きい音、堅い音、きつい声、突然の拍手、などなど。
ある居酒屋で。(また呑んでんのか)
隣のテーブルの四人組のうち、向い側の男の声がきつい。
狭いスペースにぎちぎちにテーブルを並べているので、隣席が近い。
ただ、反対側の隣の客の声がまったく気にならないところ見ると、
やはりこの男の声がきついのだ。
ただ大きい声というのではなくて、声質も関係しているようだ。
幸い、数分後に彼らは精算をし始めた。
おうおう帰れ帰れ。
※
ほっとしたのも束の間。
空いたその席に来たカップルの女性が、早口な上に声質が堅い。そして、高めだ。
これはまずい。
けたたましい声が攻撃してくるので、
何も集中できない。
参った。
メニューの文字が頭に入ってこない。
私は向いの席の連れの声も聞き取りづらい。
連れも私の声が聞き取りにくいと言う。
こうしてごらん、と私は耳に両耳の後ろに手を当てた。
すると、周りの声はカバーされ、
自分の声と、正面にいる連れの声がぐっとクローズアップされる。
まるで耳元に音源が有るような聞こえ方になる。
※
聴力が落ちていることが原因で耳鳴りがしてしまうなら、
その聴力を補ってやれば良い。
では、私の左耳に集音器をいつも付けておけば良いのではないか。
マギー審司さんのみたいな耳。
百円均一ショップの手品コーナーで売っているだろう。
※
いやそれでは全ての音域の音が拾われてしまう。
やはり、聴力が落ちている周波数のところだけを上げてやらないと、
別の問題が起きそうだ。
だからつまりそれって、
特定の周波数帯だけ上げることのできる補聴器ってことだわね。
そういう機器は有りますわね。
何?まず飲み過ぎをやめろ?
はいはい
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