先に断っておこう。
最後に書いて最後まで読まない人がいると困るので。
以下は、私の母の例を挙げて、自分の体の状態と向き合うことについて述べているのであって、
複視や眼瞼下垂に対する手術が無効だと言っているのではない。
※
母は、若い頃から斜視があった。
常に斜視なのではなく、ぼんやりと気を抜くと、片方の目がすうっとそっぽへ向くのだ。
本人はロンパリという言葉をつかった。
ロンドンとパリを同時に睨む、という俗語だ。
今では差別用語ということになるのだろう。
見え方としては、物がダブって見える複視という状態になっていた。
ただ、斜視が必ず複視を伴うわけでもない。ここがひとつのポイントでもある。
母の場合、左目が外へ向くので、これは左の目を内側に向ける筋肉が外側に向ける筋肉に
負けているからだ。
複視を改善する可能性のある方法のひとつの選択肢として、手術を受けることにした。
左目を内側に向ける筋肉をいっぺんちょん切って、
もっと短く引っ張れる位置に縫い付け直すのだ。
「手術して多少は良くっても、しばらくするとまた元に戻っちゃうと思うよ。」
市内に眼科のオペの名医がいる。
先生はよく通るでかい声でわかりやすくきちんと説明する。
なるほど、斜視は無くなった。
複視はマシになったように感じたが、わりとすぐに戻ってしまった。
そう、都合良くはいかないようだ。
※
今度は、「目が開かない」と言い出した。
開かないことはない。
開けるのがけっこうたいへんなようだ。
「まぶたを開ける筋肉の力が弱ってんの。
自分でね、毎日体操するんだよ、壁を見て、天井のほうを見るの。」
先生はよく通るでかい声でわかりやすくきちんと指導する。
母は、手術を選択した。
「これも、手術したら多少は良くなるかもしれないけど、
時間が経ったらまたたるんできちゃうよ。」
まぶたを上げる筋肉をいっぺんちょん切って、
もっと短く引っ張れるように縫い合わせ直した。
手術してしばらくはマシになったが、数ヶ月、半年、一年、
と時間が経つと、元のように開けにくくなっていった。
※
「もう一度手術したいんならしてもいいけどね、
でもしばらくしたらまた元に戻っちゃうよ。」
先生の説明どおりで、手術したらすっきり治るなんてことが無いのは、
もうさすがに分かっている。
「目は自分で開けるんだよ。」
先生はあなたと同じことを言う。と、母は私にブツブツ言う。
私に言われても納得できないのだが、医師に言われたら従わないわけにいかないようだ。
聞く耳持たない人にものを言うことに、私はもう疲れきってしまったな。
自力で目を開けずにいたら目は開かなくなってくる。
聞く耳持たずにいたら、いつか、ひとの話が聞こえなくなってしまうよ。
最後に書いて最後まで読まない人がいると困るので。
以下は、私の母の例を挙げて、自分の体の状態と向き合うことについて述べているのであって、
複視や眼瞼下垂に対する手術が無効だと言っているのではない。
※
母は、若い頃から斜視があった。
常に斜視なのではなく、ぼんやりと気を抜くと、片方の目がすうっとそっぽへ向くのだ。
本人はロンパリという言葉をつかった。
ロンドンとパリを同時に睨む、という俗語だ。
今では差別用語ということになるのだろう。
見え方としては、物がダブって見える複視という状態になっていた。
ただ、斜視が必ず複視を伴うわけでもない。ここがひとつのポイントでもある。
母の場合、左目が外へ向くので、これは左の目を内側に向ける筋肉が外側に向ける筋肉に
負けているからだ。
複視を改善する可能性のある方法のひとつの選択肢として、手術を受けることにした。
左目を内側に向ける筋肉をいっぺんちょん切って、
もっと短く引っ張れる位置に縫い付け直すのだ。
「手術して多少は良くっても、しばらくするとまた元に戻っちゃうと思うよ。」
市内に眼科のオペの名医がいる。
先生はよく通るでかい声でわかりやすくきちんと説明する。
なるほど、斜視は無くなった。
複視はマシになったように感じたが、わりとすぐに戻ってしまった。
そう、都合良くはいかないようだ。
※
今度は、「目が開かない」と言い出した。
開かないことはない。
開けるのがけっこうたいへんなようだ。
「まぶたを開ける筋肉の力が弱ってんの。
自分でね、毎日体操するんだよ、壁を見て、天井のほうを見るの。」
先生はよく通るでかい声でわかりやすくきちんと指導する。
母は、手術を選択した。
「これも、手術したら多少は良くなるかもしれないけど、
時間が経ったらまたたるんできちゃうよ。」
まぶたを上げる筋肉をいっぺんちょん切って、
もっと短く引っ張れるように縫い合わせ直した。
手術してしばらくはマシになったが、数ヶ月、半年、一年、
と時間が経つと、元のように開けにくくなっていった。
※
「もう一度手術したいんならしてもいいけどね、
でもしばらくしたらまた元に戻っちゃうよ。」
先生の説明どおりで、手術したらすっきり治るなんてことが無いのは、
もうさすがに分かっている。
「目は自分で開けるんだよ。」
先生はあなたと同じことを言う。と、母は私にブツブツ言う。
私に言われても納得できないのだが、医師に言われたら従わないわけにいかないようだ。
聞く耳持たない人にものを言うことに、私はもう疲れきってしまったな。
自力で目を開けずにいたら目は開かなくなってくる。
聞く耳持たずにいたら、いつか、ひとの話が聞こえなくなってしまうよ。
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