今回読んだのは、「名探偵に甘美なる死を/方丈貴恵(ほうじょう きえ)著」です。
この本のことも、朝日新聞の夕刊の書評欄で知って、図書館で予約していたのです。
ところがようやく順番が回ってきたのが先の旅行出発直前だったので泣く泣く権利を
いったん手放し、予定外の早い帰宅に再度予約を入れ、そうして再び順番が巡ってきて、
やっとこさ手元にできたようなドタバタを経て読むことができました。
物語出だしは、正直あまり気乗りせず読み始めました。今時、クローズドサークルを
創り出そうとすると、「孤島」「携帯電話を没収される」などなど、だいたいパターンが
決まっているんだなとちょっと冷めたのと、「VR空間」や「ミステリゲーム」を
取り入れてストーリーが進行する…というか、そんまんまVR空間上が犯行現場、
舞台となっていて、こうなるともう、古い人間の私にはさっぱり理解できず、これは
どうやらついていくのが無理そうだなと、半ば放棄寸前という感じでした。
なので、特に物語序盤でのVR空間における設定やルールはあまり理解できないまま
読み飛ばしたので、当然犯行を暴くことも阻止することもできるはずもなく、その時点で
私は名探偵失格、甘美なる死を与えられるところでした。その分、物語導入部の、
ちょっとしたヒントには、早くから気がついたりはしましたよ、名誉挽回?
50代より上の世代の方には、正直あまりお勧めできない推理小説ではあります
(それって、ついていけないのあなただけじゃない?)。しかし読み進めると、
VR空間と現実世界で同時並行して事件が起こる設定や、トリック、犯罪手法などは
秀逸で、スリリングな展開に引き込まれ、途中から加速度的にページがめくられ、
あっという間に読み終えました。ただし繰り返しになりますが、細かいところは
「横に置いて」みたいな感じでしたが… 今時は、こんな最新技術を用いて、あるいは
その技術の盲点をついて、密室での完全犯罪が成り立つんやなあ。乱歩や横溝さんらが
このトリックを知ったら、どんな感想をお持ちになったのでしょうか…
シリーズ第三弾となるらしいこの作品は、まったく問題なくこれだけでも独立して
楽しめますが、前二作を読んでおいたなら、登場人物により感情移入しやすくなるなど、
さらに物語世界観への理解が深まりそうです。人気作のようだし、図書館で順番待ちに
なっているなら、先に前作を読んでおくのも手かもしれませんよ。