朝日新聞夕刊書評欄で紹介されていた「対決/月村了衛著」の図書館での順番が
回ってきて、このたび読むことができました。「ミステリー小説」くくりで
取り上げられていた本書、しかし、犯人探しやトリックをあばくような推理小説で
ないことは明白で、ホラーやSF的要素もまるでなく、「ミステリー」の範疇の
広さを改めて思い知らされました。あえて分類するなら「社会派ミステリー」と
なるのでしょうか、ある私立医大が女子受験生の点数を操作することで男子を
優遇している情報を得た女性新聞記者と、マスコミ対策を命じられた大学側の
女性理事との「対決」を軸に物語は進行します。
しかし共に女性である両名は、新聞社、医大という男性優位社会を生き抜くために、
これまでセクハラ、パワハラなどの差別や嫌がらせにさいなまれてきただろうことを
重々承知しているだけに、お互いをリスペクトし、共感しあう気持ちがやがて芽生え
始めますが、追うもの、追われるものの立場上、それを封印し、それぞれの信念に
基づいて対決を重ねます。
一方、彼女らの同僚の男性たちの、女性差別とはなにか? と戸惑う姿も並行し
描かれます。昭和どっぷり世代の私などもまさしくそうで、容姿をからかうことが
悪いのは当然わかるとして、容姿を褒めることすらもはばかられる昨今の情勢には
戸惑いを隠せません。相手の嫌がることをしないことは大前提、できるだけ当たり
障りのない話題に終始するのが無難なのでしょうけど、関西人としてはちょっと
笑いをとりたい気持ちもあるし、でも聞きたくもない、しょうもないおやじギャグ
を繰り出されるのも迷惑千万なのかもしれませんねえ、気をつけねば。
加速度的に物語は熱を帯び、「最後の対決」の章などは一気読みすること間違い
ありません。
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