旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

デンマークに学ぶ

2008-05-01 14:15:19 | 政治経済

 

 『なぜ、デンマークは幸福な国をつくることに成功したか どうして、日本では人が大切にされるシステムを作れないのか』(ケンジ・ステファン・スズキ著、合同出版)という長い長い題名の本がある。今まで接した一番長い題の本のようだ。しかしそれだけに、本の趣旨は言い尽くされているとも言える。
 著者はれっきとした日本人だが、今やデンマークの国籍を取得して当地に住んでいる。自分を元日本人と書いたりしているが、元日本人として日本の現状を見るにしのびず、この本を書いたようだ。あらゆる面で素晴らしい本だ。

 デンマークの歴史を見ると、バイキングの国であったように自ら略奪もし、またドイツなどに絶えず苦しめられてきたようだ。しかし今は「全世界で民主主義が最も進んでいる国」(世界銀行発行の『全世界の当地指数』)であり、万人の認める高福祉国家である。医療費も教育費も全て無料、しかも国の収支は黒字。(その裏には国民の高負担があるのだが)
 その他、この本について書きたいことが山ほどあるが、一番強調したいのは、著者が「戦争しない決め手は、食料とエネルギーの完全自給にある」として、デンマークの取り組みを強調している点だ。
 デンマークは氷の下にあった国で、元来不毛の土地であった。それを耕し育て続けて、今や食料自給率300%、酪農製品では世界有数の輸出国である。また石油も石炭もないこの国は第一次オイルショック時代のエネルギー自給率は1.8%であったが、国民の総意で風力電力などを生み出し、今やエネルギーの自給率も156%に達し電力を輸出している。そして著者は、「食料とエネルギーの自給率を高める課題は当面の安全・安心だけでなく、国際社会の共生を含めた世界を平和な構造に変革していく上で不可欠な政策」(163頁)と書いている。
 加えて、日本がこの二つの自給率を確保していたら、アメリカの尻馬に乗ってイラクに自衛隊を派遣することはなかったのではないかと、ドキリとするような指摘をしている。
 医療問題なども含め、日本の現状を考え直す材料に満ち満ちた本である。
                             


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