旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

台湾紀行(7)--揺れる台湾の政情

2008-05-21 17:28:16 | 

 

 今日の新聞各紙は、馬英九台湾総統の就任の様子を伝えている。台湾は1996年に初めて総統選挙が行われ、国民党の李登輝が総統に選ばれた。4年後の2000年には民進党の陳水扁が勝って政権交代が行われ、8年後の今回、再び国民党の馬英九が勝ち与党に復帰したのだ。
 民進党の陳氏は台湾独立志向を打ち出した急進性と、不調な経済政策から国民の支持を失い、最後は支持率13%に落ち込み総統選で敗北した。民進党は独立派とは一線を画す穏健派の蔡英文という女性主席を選び、党勢立て直しを図っているという。

 今回の台湾訪問で、二年前といくつかが変っていることがあった。その一つは台北のど真ん中の、広大な敷地の中にある蒋介石を記念する「中正記念堂」の名前が、「台湾民主記念館」と変えられていたことであった。
 台湾では1947年に起こった「二・二八事件」の真相が解明されるにつけ、同事件による台湾人民弾圧の張本人が蒋介石であることが知れわたり、蒋介石の人気は低落を続け、ついに「中正記念堂」(中正は蒋介石の呼び名)は「台湾民主記念館」と変えられることになった。それを変えた陳総統も今回選挙で敗北して、冒頭に記した馬英九の就任となったが、「馬総統のお父さんは蒋介石とともに台湾に渡ってきた人であるが、『台湾民主記念館』の名前もどうなることやら・・・」というのが、わがガイド蘇麗蘭さんの解説であった。
 蘇ガイドはまた、「陳総統の敗北で台湾の独立は遠のいた」という解説もしていたがこれも前回訪問時と異なる空気だ。ただ私はそうは思わない。台湾独立の方向は変わらず、今後もその方向に進む以外にないのではないか? もちろん急速には進まないが・・・。
 馬総統は就任演説で中国との関係につき、「統一せず、独立せず、武力用いず」という「三つのノー」を提示している。そこには確かに「独立せず」とあるが、同時に「統一もしない」のであるから、それは、あせりはしないが実態的には独立していくことを意味するだろう。中国も大人であるなら、それくらい分かっているはずだ。
 そこらあたりを読みきっているところに、李登輝以来の知恵があるような気がする。

 前回と最も変わったかに見えたのは、改装中であった故宮博物館がきれいになっていたことである。しかし、これは変わったのではなく元通りになったのであるから、「不朽の名品は永遠に変わらぬ美しさを放っていた」と言うべきだろう。
 変わらぬものは変わらぬのだ。
                                                       


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