旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

作り出された貧困ーー『ルポ 貧困大国アメリカ』について

2008-05-23 16:01:57 | 政治経済

 

 堤未果氏の『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)をようやく入手して読んだ。というのは、このベストセラーを本屋に行くたびに探したがいつも売り切れていて、なかなか買えなかったのだ。読んでみてそれだけすばらしい著作だと思った。
 それは、今の日本が抱えている問題の根源を、驚くべき調査力で「アメリカの中に」見出しているからだ。
 ワーキングプアーの問題、後期高齢者医療制度に端を発した医療不安・保険制度の問題、教育の破壊、中間層の崩壊・貧困化と格差問題、そしてその延長線上にある戦争の問題などなど、日本が直面している根幹的問題が、新自由主義政策を推し進めるアメリカに、既に何年か前から深刻に現れていた。それを見事な調査力で暴いている好著だ。

 アメリカの貧困を示すいくつかの数字を、この本の中から挙げておく。

 「アメリカ農務省のデータによると、2005年にアメリカ国内で『飢餓状態』を経験した人口は3510万人(全人口の12%)」(27頁)
 「アメリカ内国歳入局の発表によると、2006年度の時点でおよそ6000万人のアメリカ国民が一日7ドル以下の収入で暮らしているという」(30頁)
 「医療保険未加入者の数は2007年の時点で4700万人、この数は毎年増え続け、2010年までには5200万人を超えると予想されている」(91頁)
などなど・・・。

 これは恐ろしい数字だ。国民の2割が「一日7ドル(700円強・・・月2万2千円弱)で暮らし、国民の一割強が「飢餓状態を感じて」いる! アメリカは決して裕福な国ではなく、大国とも言えないのではないか? しかも医療費の高いので有名なアメリカで、国民の10数%が医療保険にも入れない。
 この本は、それらが生み出された原因を新自由主義、市場原理主義政策の推進、特に医療や教育の民営化の中に見ている。そして次のような恐ろしい指摘をしている。
 「現在、在日米国商工会が『病院における株式会社経営参入早期実現』と称する市場原理の導入を日本政府に申し入れているが、それがもたらす結果をいやと言うほど知っている多くのアメリカ国民は、日本の国民皆保険制度を民主主義国家における理想の医療制度だとして賞賛している」(93頁)

 日本は今やこのアメリカの後を追っている。
 小泉・竹中路線、いわゆる民営化路線を、日本国民は傍観視しすぎたのではないか?
 いや、今気がつけば何とかなるかもしれない。
                            
                                              

 

 


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