昨夜、風呂から出てふと秋の気配を感じた。
私は汗かきで、特に上半身から頭にかけて汗をかき、夏は風呂から出てしばらく汗が引かない。クーラーなどで体を冷やしきらないと服を着れない。
ところが昨夜は、それほど汗をかくこともなく「アレッ?」と思ったのだ。もちろんこの涼しさは、寒気の影響による一時的なもので、まだまだ真夏日や熱帯夜がつづくであろう。
しかし涼しい秋、とくに朝晩が涼しく感じられる時節が近づいていることは確かである。というより、今月7日が立秋で、暦の上では既に秋なのである。
江国滋という俳人がいた。食道癌との壮絶な戦いの末、平成9年8月10日に亡くなった。その辞世の句は、8月8日に詠まれた次の句と言われている。
おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒
8月8日に酌み交わす酒は、既に秋の酒である。
正岡子規が芭蕉没後200年にあたり『奥の細道』の後を辿ったのは、明治26年の夏であった。その旅の最北端、八郎潟町の三倉鼻(八郎潟を望む絶好の展望地)に立ったのは同年8月14日で、そこで詠んだ句がこの句である。
秋高う入海晴れて鶴一羽
立秋を一週間も過ぎた8月14日は十分に秋である。もっとも、その時の子規の旅行記『はて知らずの記』によれば、出発前の旅館の庭には落葉がたくさん見られたという記載もあるので、北東北の8月中旬は季節感の上でも秋であったのかもしれない。いずれにせよ「夏高う・・・」では句にはならない。
今日は少しはしのぎやすいが、これほど不快な暑さが続くと秋が待ち遠しい。