3月9日成田を飛び立ち、赤道を越えてオーストラリアを旅していたところ、同11日、あの東日本大震災が日本を襲った。シドニーからメルボルンの日々、東北の海岸を襲う津波と原発事故のテレビ映像を毎日見ながら、災難を逃れた後ろめたい気持ちで旅をつづけた。帰京後もその思いは重くのしかかったままであったが、4月、今度は私自身が脳梗塞に襲われた。
実は昨年暮れにも同じ症状が起こったのだが、しばらくすると収まり、翌日病院にいって検査を受けたが特に異常がなかったのでそのままにしておいた。ところが、今度は職場で発症したので「現行犯」で病院に担ぎ込まれた。病院に着いたころには前回同様収まっていたので、特にどうということはなかったのであるが、MRIはじめあらゆる検査を1週間にわたり受けたので事態はことごとく判明……、「不整脈――心房細動により発生する血溜(血栓)が脳に飛んで起こった梗塞」と診断された。病院に着いた時にはすでに症状は治まっていたので、検査の結果は「左脳にその痕跡がある」という程度であったらしいが…。
その程度であったので、幸いにして現在も殆ど正常通りの生活をしている。ただ、当然予想される再発を防止するため、“血液さらさら薬”と、“心房細動を抑える薬”と、胃潰瘍などで出血しないように“胃の薬”の3種類を常用する身となった。76歳にして初めて「毎日薬を飲む体」になって、いささかうんざりしている。齢からしてやむを得ないとも思いながら…。
入院中、先生と一番議論したのは「酒と脳梗塞の関係」であった。私のしつこい質問に対する先生の言は明確で、「酒と脳梗塞の直接的な関係はない。むしろ飲みたい酒を我慢して起こるストレスの方が悪い。ただ、酒は心房細動の原因となる。これも、少し飲んだら心房細動が収まった、という例もあるが…。ただ、飲み過ぎは悪い。ほどほどにして、かつ週に何回か休肝日を」というものであった
したがって酒は続けている。極力量を減らし、月に1日か2日は絶っている。
おかげで4月から8か月、脳梗塞の症状は起こっていない。何とか今年も、年を越すことができるだろうか?