昨夜のNHKサンデースポーツに、今年で現役を引退したプロ野球選手金本知憲選手が出演し、「21年年間の現役生活」を語った。
金本選手は広島時代からのファンで、次々と塗り替える新記録を追って何度か本稿にもとり上げた。今シーズンの最終戦まで、「打点」で長嶋の記録に追いつくことを期待したが、走者を置いて打席に立つ機会に恵まれながらついに1打点及ばなかった。あの努力をもってしても追いつけなかった長嶋茂雄の力を多とすべきか…?
しかし金本の値打ちを一番示すのは連続出場記録であろう。「1492試合フル出場」は不滅の記録とされ、その過程での伝説的なエピソードもいくつか紹介された。何と言っても有名な話は、左手首を骨折しながら出場し「右手1本で打ったヒット」のことだ。昨夜も、「あの時は手首が腫れて手袋をするのも痛かったが、退場する気はなかった」と話していた。
驚いたことに金本は名うての三日坊主であったという。しかも体は小さく、鍛えるしかなかったという。「細い体で上にも伸びないので横に大きくするしかなかった」と、180キロのバーベルを上げるトレーニングが映し出されていた。またオフには寺に通い、燃え盛る火の前での読経で心を鍛えた。「義務的に行った業やトレーニングでは何も残らなかった。積極的に取り組んだ時しか成果は出ない」とも言っていた。
こうして達成した連続フル出場1492試合とはどんな行程だろう。この数字は、たまたま「イヨー、クニが見えたぞ」と記憶した「コロンブスのアメリカ発見年」と同じ数字であるが、三日坊主がたてた連続記録は遥か海洋の彼方同様、何とも遠い数字だ。
しかし、金本本人が一番誇る記録は「1002打席無併殺打」ということだ。無走者内野ゴロで全力で走り一塁に生きれば安打となり打率は上がるが、走者がいる場合はその走者が封殺され、自分が併殺を逃れて一塁に生きても打率は下がる。しかし全力で走る! これがチームプレイで、自分の記録は下がっても全力疾走で一塁に生き、次打者が本塁打を打って1点差で勝ったこともある。「この記録だけは自信をもって後輩たちに話している」と胸を張った。
頭が下がるというほかない。