高知県の酒蔵は現在18蔵で全国平均(約28)より少ないが、なかなかの名酒が多い。中でも『土佐鶴』、『司牡丹』、『酔鯨』は大手で、東京にも多く出回っている。しかしここでも、『南』や『亀泉』など小さい蔵がいい酒を造って、近時人気を博している。
その中の一つ、「『久礼』という銘柄を醸す西岡酒造店を訪ねた。初日の宿『黒潮本陣』のある中土佐町久礼の蔵で、生産石数こそ数百石であるが純米酒比率80%を超え、土佐の酒らしいキリッとしたいい酒だ。自慢の「久礼 純米吟醸」は、使用米「吟の夢」、水は四万十川の伏流水だ。何と言っても高知県下で一番古い蔵で、創業は江戸中期の天明元(1781)年、230年の歴史を誇り、現西岡忠臣蔵元は10代目である。ご長男、杜氏さんともども出迎えてくれて歓待してくれた。
230年の歴史を誇る蔵と、玄関の部屋構え
もう一軒、空港近くの香南市赤川町にある『豊の梅』を造る高木酒造を訪ねた。会長さんが友人K君の高知大学同級生として親しく、私は初めて知った蔵であったが、これまた歓待を受けた。蔵が製造する酒11種類(含む梅酒)を総て並べて試飲させてくれたのには感動した。特別純米酒と純米吟醸が美味しく、高木会長も純米吟醸が好きだと言っていた。
思いがけなかったのは、そのあと「絵金蔵」を案内してくれたことだ。絵師金蔵、略して絵金は、もとは土佐藩家老桐間家の御用を勤める狩野派の絵師で、赤間の町に定住し酒蔵をアトリエに絵を書いてきたという。初めて知った画家であったが、なかなかの美術館であった。
ずらりと並んだ『豊の梅』
絵金蔵