旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

『串駒』店主大林禎氏の死を悲しむ

2014-09-13 09:10:49 | 


 大塚にある『串駒』という居酒屋は、私の酒の勉強を助けてくれる道場の一つである。そしてそれは、店主の大林禎さんに負うところが大であった。
 独特の風貌、店の風格もさることながら、大林さんの酒の知識、よい酒を広めようとする情熱は並のものではなかった。多くの人が彼の話を聞きながら酒の知識を深めていったのではないか?
 私は大林さんを、「酒を飲ませる立場(料飲店など)から日本酒革命をやった一人」と書いてきた(『旅のプラズマパートⅡ~世界の酒と日本酒の未来』など)。酒は、造る人(蔵元)、運ぶ人(酒販店)、飲ませる人(料飲店)と飲む人の4者のコラボレーションで育てられる。その飲ませる人の役割を十分に果たした人である。今を時めく『十四代』を、まだ無名のころから店に置いて育てたのも彼である。
 私は多くの人を『串駒』に案内したが、そのほとんどは「もう一度あの店に連れて行ってくれ」と言った。それの大半は、大林さん(と奥さん)の魅力にひかれるからである。多くの人が彼を仙人と呼んだ。私は彼をその風貌からウサマ・ビンラディンとからかったが、その度に彼は「せめて諸葛孔明と呼んでください」と言っていたことも懐かしい。
 
 大林禎さんは59歳の若さで亡くなった。今、日本酒は多くの銘酒を生み出し新しい時代を迎えようとしている。その日本酒業界に身も心も捧げつくした壮絶な死と言えよう。

    
       今年(2014年)1月『串駒』にて


         


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