旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

八十歳のリサイタルーー岩森栄助氏の傘寿記念

2008-10-03 17:11:41 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 親しくお付き合いをいただいてきたバリトン歌手岩森栄助氏の「傘寿記念リサイタル」(9月27日、銀座王子ホール)を聴いた。
 氏は、1974年青山タワーホールで第1回のリサイタルを開催、以降34年、シューベルト、レーヴェ、ヴォルフ、ブラームス、フランス歌曲、ロシア歌曲、そして日本歌曲とリサイタルを重ね、今回が24回になるという。
 
今回は、日本歌曲だけ18曲の、実にさっぱりとしたリサイタルであった。
 驚いたのは、80歳になっても声の衰えのないことだ。しかも難しい日本歌曲に挑戦するところは、まさに芸術家としての執念を見る思いがした。
 もちろん、以前に比べてやや言葉が聞き取りにくくなってはいるが、声の艶にはほとんど衰えがない。東京藝術大学を卒業後、長く研鑽を重ね、現在も名古屋芸術大学名誉教授の地位にある人間には、その道において衰えるということは許されないのかもしれない。
 その精進に心から敬意を表しつつ聴いたリサイタルであった。

 アンコールも3曲歌った。その最後の曲は石川啄木の「初恋」・・・、氏は、この得意とする歌を実に気持ちよく歌った。私はそれを聴きながら、「この歌を歌えるだけで、歌手になる意義があるのではないか・・・」とうらやましく思った。
 80歳の歌手は、この曲にどのような人生を重ねてきたのであろうか?

   砂山の砂に腹這(はらば)い
   初恋の
   いたみを遠くおもい出(い)づる日

                            

                             


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