狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

小泉政治の光と影 雇用は本当に回復したか

2006-05-02 13:21:35 | 県知事選

今朝のテレビ朝日「スーパーモーニング」で≪変人総理の五年間 その光と影≫というテーマで片山さつき自民党議員と長妻昭民社党議員のバトルがあった。

何回かに分かれたシリーズの二回目で、今朝は経済改革がテーマだった。

そもそも経済の問題は地味過ぎてテレビ討論には馴染み難い。

バブル崩壊以来、経済学者の説く理論はほとんど社会に対して影響力を失ってしまった。

なぜ経済学は実際の経済に通用しなくなってしまったのか。

これにはいろいろな理由が考えられる。

医学の進歩が医術を細分化させ、一つの分野の専門家は他の分野に疎いと言った現象を引き起こした。

同じように、経済学の研究が細分化され数字を操る技巧に走り過ぎた。

現実の経済をさまざま要素に細分化して、その因果関係をいろいろな数式に当てはめて証明しようとした。

このような数学的理論性を主張するアメリカ型の主流派経済学に異論を唱えたのが先日亡くなった「不確実性の時代」その他の著書で知られるガルブレイスである。http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060430AT2M30006300
42006.html

経済学も木を見て森を見ない愚に陥ったのかも知れない。

話をテレビのバトルに戻そう。
 
長妻昭: 「タクシーの規制緩和が過当競争を生み、労働者の給与を圧迫」

片山さつき: 「規制緩和しなければ新規参入が出来ない。 雇用も増えない」

又しても脱線。

突然、思考がフランスのデモ騒動へ飛んだ。・・・≪仏の若者雇用政策撤回≫

若者雇用政策とは≪企業が26歳未満の若者を雇用した場合、試用期間にあたる2年間は、理由を提示しなくても解雇できる≫という内容。

経済や雇用の論議は矢鱈と数字が出て来るので素人には判り難い。

テレビの長妻、片山の議論も三百代言の理屈の捏ね合い、或いは詭弁の弄し合いにも聞こえた。

ただでさえ判り難い議論に途中で思考がフランスへ飛ぶなんて、遂に狼魔人もローマ人と化したか。 (ローマ人とは沖縄方言でロウモウ・老耄の始めと云う)。

話を単純化するため「タクシーの規制緩和」を是とする片山氏を「改革派」と呼ぼう。

これを批判する長妻氏はこの件に関しては「保守派」になる。

フランスの「デモをで勝利を勝ち得た若者達」は、保守派になる、・・と言うと違和感を覚える人も居るだろう。 若者が常に改革の担い手とは限らない。

若者達に屈したフランス政府側が改革派なのだ。

フランス政府は「若者救済策」と主張していた。

背景には深刻なフランスの雇用事情がある。

フランスには、民間企業が大学新卒者を同時に大量採用する制度がない。

企業は、退職や転職で正社員に空きが出ると社員を募集する。
・・が、その場合には職能や職務経験を重視するため、新卒者は不利になる。

正社員には中高年が多くポストもなかなか空かない。 

空席待ち状態である。

このため、新卒者は無給や低賃金で企業研修を受け、正社員採用の機会を待つ。

一方、企業側にとっては、正社員として雇用すると、高額の社会保障負担を強いられ、手厚い労働者保護もあって解雇が難しい。

その結果、新規雇用には慎重になりがちだ。

このような事情で、25歳未満の若者の失業率は、全世代を通じた平均(9・6%)の2倍以上の21・7%にのぼっている。

この現実を変えるため、ドビルパン首相は、いわばショック療法で企業の雇用意欲を高めようとしたのだ。

実際、「解雇されても、とにかく職につきたい」とする失業者には、期待を抱かせる政策だった。

多くの失業者を抱え、昨年秋には大暴動が起こった移民地区でも、今回は激しい反対運動がなかった。

しかし、学生や労組の反対は政府の予想を超える激しさだった。

学生は、「雇用増」より「職の安定」を重視し、新制度導入は企業による解雇の乱発を招いて「使い捨て」雇用が横行すると反発した。

労組も、今まで保護されてきた正社員の地位が新制度で脅かされる危機感から大規模な抗議活動を展開した。

1968年の学生デモは、社会変革を求めるものだったが、今回は「フランスの伝統的雇用」保持の訴えだった。 

つまり既得権、終身雇用を守るためのデモだった。

それで結局何が云いたいのか、と言うと数字の出てくる経済や雇用の問題はテレビでには馴染みにくく、論理よりも弁舌滑らかで声の大きい人の論が正しいような気がする、と冒頭のボヤキニ話が舞い戻るわけ。

                    ◇

ついでだから地味な話題を承知で、雇用の問題に驀進する。

「雇用は増えた」、と言う意見。

一方「正社員と非正社員の固定化に過ぎない」と反論の意見。

これを、新聞記事で検証してみよう。

経済の問題は数字が出るから、どの新聞も大同小異だろうと思うのは素人の赤坂見付け、・・で乗り換えたら、では無く、浅はかさだ。(東京に詳しくない人へ:赤坂見附とは、地下鉄・丸の内線と銀座線の乗り換え駅で同じホームで乗り換え出来た)

いつも小難しい記事を書く日本経済新聞なら経済に関しては信用できると思う人も多いと思うだろうから取り敢えず日経の記事を。

◆日本経済新聞 2006年04月28日

05年度の完全失業率4.3%・3年連続で改善

 総務省が28日発表した労働力調査によると、2005年度平均の完全失業率は前年度比0.3ポイント低下し、4.3%となった。前年度を下回るのは3年連続。景気回復で企業が雇用を拡大しているのを受け、完全失業者数が289万人と前年度より19万人減った。雇用情勢は回復基調を続けているが、若年層の失業率はなお高く、一部に厳しさも残している。

 3月の完全失業率(季節調整値)は4.1%で前月比横ばいだった。男性は同0.2ポイント改善の4.3%、女性は3.9%と同0.3ポイント悪化した。

 厚生労働省が同日発表した求職者1人当たりの求人の割合を示す3月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント悪化し1.01倍だった。

 05年度平均の男女別の完全失業率は男性が4.5%、女性は4.1%で、ともに3年連続で改善した。就業者数は前年度より33万人増加。特に男性は8年ぶりに増加に転じた。 (10:54)


同じデータから書かれる記事でも記者の素質や見出しの編集で受け取る印象は大きく違う。

活字離れの昨今、見出しと最後の一行だけで済ます人も多い。

かく言う私も興味の無い記事は大抵これで済ますか、いやむしろ見出しだけの方が多い。

日経の見出し「05年度の完全失業率4.3%・3年連続で改善」を見ると、景気回復で三年連続の失業率減小で小泉首相の「経済改革」は成功した、の印象を読者に与える。

特に文末の「就業者数は前年度より33万人増加。特に男性は8年ぶりに増加に転じた」を見ると求職中の大黒柱のお父さんは自信回復、バラ色の希望を持っただろう。

ところが同じ日の同じネタをあつかった朝日新聞を見よう。

◆朝日新聞 2006年04月28日

3月の失業率、引き続き好調4.1%

 総務省が28日発表した3月の完全失業率(季節調整値)は、約8年ぶりの水準となった前月と同じ4.1%と、改善傾向が鮮明になってきた。これにより05年度平均は、前年度より0.3ポイント低い4.3%と3年連続で改善した。厚生労働省が同日発表した3月の有効求人倍率(同)も1.01倍と4カ月連続で1倍台。05年度の新規求人数は初めて1000万人を超え、過去最多となった。

失業率と有効求人倍率
 
 厚労省は「企業の業績回復が雇用に反映され、労働市場が活性化してきている」としている。一方で、若者の失業率は依然高いほか、正社員の求職者に対する求人数も0.64倍(3月)にとどまるなど、課題も残る。

 3月の男女別の完全失業率は男性が前月より0.2ポイント低い4.3%、女性が0.3ポイント高い3.9%だった。05年度平均では4.3%で、02年度の5.1%をピークに3年連続で下がった。

 3月の雇用者数は5424万人で、前年同月比で111万人増と13カ月連続で増加。一方で、完全失業者数は289万人で、同24万人減と4カ月連続で減った。失業の内訳をみても、リストラなどの非自発的失業が減り、自己都合の失業が増えており、よりよい仕事を求めて一時的に失業する人の割合が高くなっているとみられる。

 ただ、15~24歳の若者の失業率は9.8%。また、地域間格差も残り、1~3月平均で、最も低い東海は3.2%の一方、北海道では5.5%、東北では5.4%だった。

 一方、求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は、前月より0.03ポイント下がったが1.01倍と引き続き1倍台を維持した。05年度平均では前年度を0.12ポイント上回る0.98倍で、93年度(0.71倍)に1倍を割り込んで以降ではもっとも高い水準となった。05年度の新規求人数は1008万人と、初めて1000万人を超えた。

 だが求人数の増加を引っ張っているのは非正社員だ。3月の新規求人数では、非正社員は前年同月比4.2%増えたが、正社員は0.2%にとどまった。実際に就職に結びついた件数も、正社員が2.2%に対し、非正社員は3.6%だった。

 

見出しは日経が05年度の完全失業率を取り上げているのに対して、朝日も3月の失業率を挙げて景気回復感を読者に与えているのは同じ。

途中は経済記事の特徴で矢鱈と数字の羅列が何の解説も無く続く。

ただ文末に来ると先ほどのテレビ討論の命題「正規社員と非正規社員」にまで及んでポイントを突いた記述が続く。≪・・15~24歳の若者の失業率は9.8%。・・・ 求人数の増加を引っ張っているのは非正社員だ。3月の新規求人数では、非正社員は前年同月比4.2%増えたが、正社員は0.2%にとどまった。実際に就職に結びついた件数も、正社員が2.2%に対し、非正社員は3.6%だった。≫

日経と朝日の雇用に関する記事は朝日に軍配を上げる。

フランスの学生が起こして雇用に関するデモは日本の若者達にも同じ問題を突きつけているとまで視点が広がれば朝日を見直すのだが。


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