◆昨日から今朝にかけてのテレビ・ワイドショーは 『主婦パートから社長昇格!…「ブックオフ」サプライズ人事』(サンケイスポーツ)で持ちきり。
41歳の子持ちの主婦が娘二人の学費の足しにと自給600円のパートに就職した。
それが僅か18年で社長就任。(6月24日付け)
しかもその会社が一部上場会社であるというから、このシンデレラボーイならぬ“シンデレラパート”にメディアが集中するのもわかる。
もう一つの話題は、この「元パートさん」の社長の実弟がタレントの清水國明さんということだが、これはテレビワイドショーに任せるとして・・・。
「元パート」は非正社員の典型である。
「正規雇用と非正規雇用の格差拡大」については先日「小泉改革の光と影 雇用は本当に回復したか」で触れた。 http://blog.goo.ne.jp/taezaki160925/e/104edca1b4b1be5aeba4fcd321160b0c
同ブログのコメントに「審判さん」と言う方から「ストライク!」のコメントを頂いた。
≪あなたのブログ (審判) 2006-05-05 10:24:55
>だが、求人数の増加を引っ張っているのは非正社員だ。3月の新規求人数では、非正社員は前年同月比4.2%増えたが、正社員は0.2%にとどまった。実際に就職に結びついた件数も、正社員が2.2%に対し、非正社員は3.6%だった。
↑ストライ~ク!!!
非正社員の使い捨て格差社会は危険!! ≫
新聞記事を引用して何が言いたかったかと言うと「雇用は増えていると言っても、その内訳を良く見ると非正規社員が増えている」と言うことだ。
私見を述べさせてもらうと民主党小沢党首が言う「終身雇用と年功序列は、日本社会が考えたセーフティーネットの最たるものだ」はフランスの学生デモの主張と同じく時代に逆行する考えだ。
バブル崩壊までの日本経済発展のキワードを列挙してみよう。
「行政指導、護送船団、横並びの経営」、そして「終身雇用、年功序列」。
これらは日本的経営モデルとして世界的に賞賛された。
が、これらの日本型手法による成功は「もっとも成功した社会主義国」と揶揄された。
◆ところが、1990年代初頭、過熱した日本経済は一気に崩壊する。
いわゆる「バブルの崩壊」以後「日本型手法」は一気にその弱点を露呈する。
このとき、行政指導をした筈の政府も、それに唯々諾々と従った経済界も、誰一人として責任を取ろうとしなかった。
政府は経済の建て直しを財政出動に頼り、金融機関の不良債権に象徴される「負の遺産」の処理を官民一体となって先送りした。
これは、「行政指導、護送船団、横並び経営」の弊害の最たるものであった。
また、「終身雇用、年功序列」の雇用環境下において、業績が不振であるにもかかわらず事業の見直しやリストラが進まず、多くの企業が余剰労働力=企業内失業者を抱え込む破目に陥ってしまった。
つまり、戦後の高度成長を支えた日本的経営モデルが、「バブルの崩壊」という国家的危機に直面して、その限界を一気に露呈したのである。
政治は責任を取らない。経営者も責任を取らない。労働者も、企業一家意識から抜けきれない。
日本的経営は、成長期には威力を発揮したが、バブル危機に直面すると、その無責任体質を露呈したのだ。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」が「不始末は、みんなで逃げれば怖くない」に転化したのだ。
大銀行や大企業の破綻や倒産が続出すると、リストラによる大規模な人員整理が避けられない急務となった。
そして、正規社員が減って非正規社員が増える時代となった。
これは小沢民主党党首の「終身雇用と年功序列」とは逆の流れだ。
が、この大きな時代の流れであり、もはや誰も止めることは出来ない。
◆そんな中での「元パートさんの社長就任」のニュースだ。
このニュースは「正規社員と非正規社員」の格差に大きな問題提起をした。
「終身雇用と年功序列の会社」ではこのようなニュースになる人事は行われなかっただろう。
そう、問題は正規社員と非正規社員にあるのではなく両者の「待遇と身分」の問題なのだ。
3月23日の厚生省の発表によると「短時間パートを除く契約や派遣、嘱託など非正社員の給与は正社員の60%の水準にすぎない」ことが分かった。
◆共同通信
非正社員の賃金は60% 正社員との格差浮き彫り
厚生労働省が23日発表した2005年賃金構造基本統計調査で、フルタイムで働く一般労働者のうち、正社員の平均賃金(残業代などをのぞく所定内給与、平均40・4歳)が月額31万8500円だったのに対し、短時間パートを除く契約や派遣、嘱託など非正社員は同19万1400円(同42・9歳)で、正社員の60%の水準にすぎないことが分かった。
同調査で正社員と非正社員の賃金格差を比較したのは初めて。厚労省は格差要因を「正社員は昇進して役職につくことで賃金が上昇することや、勤続年数が相対的に長いため」と分析する一方、「若者にフリーターなど非正社員が多いことから、将来の格差拡大には注意が必要」としている。
(共同通信) - 3月23日18時39分更新
これにパートなどを加えた実感はもっと格差があるような気がする。
今までの日本型雇用市場はあまりにも硬直していた。
例え正社員であり、能力があっても四月の新規採用社員で無いかぎり昇進の道は閉ざされていた。
雇用市場は柔軟でなければならない。
年功序列を復活させれば、意欲や能力のある者が勤労意欲を失う。
「非正規社員」の増加の問題と、「正規社員」との待遇格差の問題は、終身雇用や年功序列とは別問題である。
「非正規と「正規」の壁を見事に打ち砕いた「橋本さん」それに「ブックオフさん」、あんた達はエライ!
これで「どーせパートだから」と言っていた「非正規社員」もきっとやる気を出すと思う。
橋本次期社長がテレビのインタビューに答えて「愚直にこつこつやれば報われる会社にしたい」といった言葉を六本木ヒルズに巣食う金の亡者達に聞かせて上げたい。
因みに「元パートさん社長」の人事をしたブックオフは現在、従業員6500人のうち正社員が焼く600人で約91%の約5900人がアルバイト、パートの非正規社員で占めると云う。
◆産経新聞 (05/17 21:00)
バイト出身ブックオフ次期社長「最強の現場集団を」
「現場のことならだれにも負けません」-。女性パートから身を起こし、古本買い取り販売最大手、ブックオフコーポレーションの次期社長に内定した橋本真由美常務(57)が17日、神奈川県相模原市の本社で記者会見し、「中古業は人材の質によって繁盛店にも不振店にもなる。永久に人材が育ち続ける会社、最強の現場の軍団をつくる」と抱負を述べた。パート時代から約16年の経験を生かし、「新卒入社の社員を半年で店長に育成できる仕組みを整えたい」と意気込んだ。
平成2年、相模原市に開店した直営1号店にパートとして入った当時の時給は600円。月収は「多くて6-7万だった」。今や珍しくない古本買い取り販売も当時は新業態で試行錯誤の連続。だが創業者の坂本孝社長(次期会長)は「橋本さんが私のアイデアを現場に落とし込み、収益化した。その集積が今日のブックオフを築いた」とその手腕を認める。
「現場はだれにも負けないぐらいやってきた」と言い切る橋本さん。経営の中枢を担う立場になった今も、気になる店舗を時折抜き打ちで訪れ、エプロンを着けてレジ打ちなどを行うほどの徹底した現場主義者だ。
同社は平成11年、中古子供服の買い取り販売事業に参入したが、収益が上がらず苦戦。立て直しを志願し、価格帯見直しや人件費削減、従業員の意識改革で黒字転換に成功した実績を持つ。
実弟は、同社のCMに起用されたタレントの清水國明さん。会見前、電話で「私は『清水國明の姉』と新聞に書かれるけれど、あなたが『橋本真由美の弟』。何であなたの名前が前に出るの」と笑って話したという。
(05/17 21:00)