世論や民意ほどいい加減なものはない。
世論や民意と云うと誰も逆らえない至高なものだと思いがちだ。
特に政治家やメディアはこれに弱い。
これに逆らう事は自分の存在基盤を失ってしまう事になるからだ。
彼等はなにかと言うと「・・・それは国民をバカにした言い方だ」とか「国民はそれほどバカではない」等と、国民の世論・民意を持ち上げてその陰に逃げ込もうとする。その実腹の中で国民を一番バカにしているのは彼らなのかも知れない。
世論・民意を気にするのは政治家とメディアだけではない。
学者や評論家の中でもメディア露出でメシを食っている連中は世論を気にする点では政治家と同じだ。
そんな中,普段は余りメディアに出ない藤原正彦お茶の水大教授がその著書「国家の品格」がベストセラーになったお陰で一時テレビに良く出ていた。
その世論を気にしない発言には今までのテレビ学者には見られない新鮮さが溢れていた。
「皇位継承問題」について司会者が世論や「町の声」を楯に話を進めると「世論なんてそんなものはどうでもいい。 一夜にして世論が変わった例は何ぼでもある。 それに比べれば皇室継承問題は二千数百年も守り続けてきた日本の伝統に関わる問題だ。 いい加減な世論や町の声に日本の伝統を委ねるべきではない」・・・記憶が曖昧だが、大体このような趣旨の事を述べていた。
捉え方によっては「世論」の威を借りたメディアの猛攻撃を受けかねない物騒な意見だ。
確かに一握りの大声を出すグループに民意が右に左に揺れ動く例は何度も見てきた。
世論や民意を軽んじるような発言をすると、独裁者のレッテルを貼られる。
だが、ヒットラーを独裁者に育て上げたのは銃と剣では無い。
ドイツ国民の世論と民意がヒットラーを希代の独裁者にのし上げた事は厳然たる事実として覚えておく必要がある。
目を身近に転ずると、クリントン・橋本の「SACO合意」以来,在日米君基地間問題で大いに揺れに揺れ続けているのも沖縄の「民意」だ。
◆この数ヶ月で典型的な日本のエリート二人が世間の表舞台から相い前後して消えた。
一人は偽メール問題でエリート議員のひ弱さをモロニテレビに露出させて議員を辞職した永田寿康。
東大を出て大蔵省。 更に米国留学を経て国会議員。絵に描いたようなエリートだった。
彼がメディアを通じて作り上げた「民意」は≪エリートは頼りない≫というマイナスイメージだった。
もう一人は「最初はグー。 ジャンケンポン]、・・・じゃない、斎藤健。
東大卒で高級官僚。 そして米国留学まで偽メール議員と同じだ。
千葉県選出の偽メール議員の補欠選挙の自民党側の立候補者だ。
対する民主党が推したのが「元キャクラ嬢」の「庶民派候補」。
千葉県の「民意」は「エリート」候補を非ととし、「庶民派」候補を是とした。
時事ネタにしては一寸古いと思うが、このニュースについて日頃愛読している「国際派時事コラム・商社マンに技ありhttp://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/4月26日号で面白い記事を見たので紹介したい。
≪千葉7区補選。国民をバカにしたほうが負けた、? 千葉7区補選について一言。
ワイドショーを見ていて不愉快だったのは、
まじめな斎藤 健 候補のまじめな、まじめなイメージを危惧するあまりか
おふざけ応援をした老人たちの醜態だった。
武部 勤(ブブキン)のジャンケンといい、
(これはハマコーの応援演説では恒例らしいが)
浜田幸一が土下座ついでに斎藤 健 候補にも土下座させたのといい、
自民党候補が落選したという結果を知って見るからかもしれないが
老醜
不愉快千万。
(中略)
太田和美さん。
26歳。
県議をやって、今回国会議員になった。
これでもってかつてキャバクラ嬢もやっていたとは、
よく時間があったものだと感心したが、
最終学歴が千葉県立沼南高柳高校だった。
ああ、それで時間があったのか。
(中略)
まさかと思いますが、
高卒を売りにして
「自分は負け組の代表です」的なものの見方をしてはいないでしょうなぁ。
すべての国会議員は、野党議員も含め、
みな 「国権の最高機関に属する権力者」なのだ、
ということを忘れてほしくないものです。 ≫
この本文に対するコメントが実に面白いので煩雑を承知で転載したい。
あわせて同コラムと同じ日の産経抄も「エリート候補と庶民は候補」を取り上げているので、文末に貼り付ける。
≪選挙ってこんなもん? ma62473mさん
Web上で見つけたマメ知識です。
☆民主党候補者 太田和美
裕福な産廃業者の家に生まれる
→ 遊びほうけて偏差値38の高校へ
→ さらに遊びほうけて補導
→ 高卒後キャバクラでバイト
→ 悪徳商法の教材販売業者で勤務
→ 親のコネで起業
→ 親のコネで県議
→ 衆院選立候補、「負け組ゼロ社会」の実現を唱える
⇒ 努力しなかったおかげで庶民扱いされ持ち上げられる。
★自民党候補者 斎藤健
貧乏な家(写真屋)に生まれる
→ 努力して名門校卒
→ さらに努力して東大卒
→ さらに努力して旧通産省入省
→ さらに努力してハーバード留学
→ 努力して書いた著書が各所で絶賛される
→ 実力が上田埼玉県知事に認められて埼玉県副知事に
→ 衆院選立候補
⇒ 努力しすぎたためエリート呼ばわりされ叩かれる。
(Apr 26, 2006 07:19:35 PM)≫
産経抄 4月26日
小学生の親を対象にした雑誌が相次いで創刊されたというので、書店でめくったら驚いた。難関中学合格者の家を訪問したり、中学、高校どちらで受験すべきか、脳科学で分析したり、有名大学現役学生に小学生時代をどう過ごしたのか聞いたり。
▼受験雑誌そのものではないか。そういえば、新聞社系週刊誌の有名大学合格者の特集も健在というか、ますます力が入っている。少子化の結果、数字上は希望者の全員が大学に入学できる大学全入時代が来春に迫っていることと関係がありそうだ。
▼受験戦争がなくなってもよさそうなものだが、さにあらず。大学が高校なみになると、新しい基準の「大学」が必要になる、と仏文学者の内田樹(たつる)さんはいう(「『おじさん』的思考」)。つまり東大など超難関大学と欧米の大学めざして、かえって競争が激化するというわけだ。
▼もっとも学歴は万能ではないし、あだになる場合だってあることを、衆院千葉7区の補欠選挙は教えてくれた。政権五年を迎えた小泉首相と小沢民主党代表の最初で最後の戦いをおぜん立てしたのが、民主党の偽メール事件だ。
▼若手議員の軽率で幼稚なふるまいを際立たせたのが、東大、大蔵省という申し分のない経歴だったことを武部幹事長は失念したのか。二百人以上の候補者のなかから、東大出のエリート官僚の擁立を決めるとは。そのセンスは「最初はグー、サイトウケン」のおふざけ以上に罪深い。
▼現職最年少の国会議員となる太田和美さん(26)は、「キャバクラで接客」などとビラで攻撃された。それがかえって反エリート、反格差社会の主張に真実味を与えることになった。政治の面白さである。教育パパママの熱気をさます効果も少しはあればいいが。