狼魔人流沖縄語講座。
先ず巷でよく聞く話から。
「テレビから聞く沖縄出身タレントの沖縄訛りは判り易いが、・・・沖縄で聞く生の沖縄方言はさっぱり判らない。 まるでチンプンカンだ。」
そして本音では留めの一発が入る。
「やっぱり沖縄語は日本語の方言ではない。 これはやっぱり外国語だ。」
ブー! それは間違い。 沖縄語は紛れもなく日本語から分派した方言の一種だ。
沖縄ブームに乗って沖縄方言の独自性を殊更強調する人々がいる。
そして中国語の影響を強調する。
先日も琉球新報コラムで「沖縄方言と中国語」と題して中国語に語源を持つ沖縄方言を解説している地元の弁護士の先生がいた。
その弁護士先生の博識の一つを紹介すると、沖縄方言の「チファーラ」は「いっぱい食べたこと」の意味だが、これは中国語の「喫飯了」から来ているという。
うーん、説得力がある。
外にも種種の例を挙げて「沖縄方言・中国説」を書いていたが、闘鶏(沖縄方言・タウチー)や獅子(シーサー)、西瓜(シークヮー)はむしろ中国語と言うより日本語語源で説明できる。
日本語も漢字を通じて中国語の影響は大いに受けている。
そのコラムは最後をこう結んでいる。
≪さて、「沖縄方言話さずして、沖縄文化を知ったふりするなかれ」。方言に誇りをもって接すれば、中国語も堪能となること請け合いである。≫
成るほど判ったような気もするが、文の前段はともかく、後段の部分は件の弁護士先生一寸筆のお遊びが過ぎたようだ。
当ブログでは、沖縄方言にいくら誇りを持って接しても中国語に堪能になる事は請合いかねる。
沖縄語がその地理的、歴史的特異性から中国の影響を受けたのは紛れも無い事実だろう。
だが、沖縄語はその語法・文法に於いては中国語とは全く別の言語であり、起源は日本語と同じ語法を持つ。
沖縄語を習得するには沖縄独特の単語を習得すれば足りる。
沖縄独自の単語を日本語の話法で話せば、それで沖縄語は卒業だ。
沖縄独自の単語は、①日本語の訛り、②日本語の古語由来③中国語由来、④その他に分類される。
そのうち①日本語訛りを覚えれば大半は覚えた事になる。
幸いな事に、訛りには覚えやすい法則がある。
それを覚えれば沖縄語の日常会話は簡単にマスターできる。
■①日本語訛り 「母音の法則」
先ず単語をローマ字で書いて見る。
(例)
手→TE 目→ME 毛→KE
ここで E→I と変化する法則を覚えると「手」は沖縄語では「てぃ」、「目」は「み」、
「毛」は「き」と沖縄訛りが三つ習得できる。
これを応用すると泡盛を入れる「甕(かめ)」は?
はい、沖縄語では「かみ」でも通じるが、更に訛って「かーみー」となれば完璧。
更に「O→U」の変化を覚えたら母音の法則は卒業。
(例)
タバコ→TABAKO→「たばく」が沖縄訛り。
※「E→I O→U」変化の応用例 米→KOME→「くみ」が沖縄訛り。
卒業問題
「そば」そしてそばに付き物の「かまぼこ」は?
それを沖縄方言では「すば」、「かまぶく」と言う。
退屈な話が続いたがたった二つの母音変化「E→I」と「O→U」を覚えるだけで沖縄訛りの語彙が無限に広がる。
■②日本語の古語由来
沖縄でよく使われる「おじー」、「おばー」は説明の必要も無いだろうが、これが
「たんめー」→おじいさん、祖父(士族の)
「うすめー」→おじいさん、祖父(平民の)
「はーめー」→おばあさん、祖母(平民の)
「うんめー」→おばあさん、祖母(士族の)
「はんしー」→おばあさん、那覇で士族の祖母・老婆
・・・と、なると考え込んでしまうだろう。
何れもお年寄りを意味する言葉のようだが随分年寄りに対して冷たい表現ではないか。
「たんめー」は「短命?」、「うすめー」は「薄命?」、「はーめー」は「早命?」、
「うんめー」は「運命?」、
そして言うに事欠いて、「はんしー」を「半死」呼ばわりでは余りにも年寄り虐待が酷すぎる。
沖縄方言とはこのように老人に冷たい言葉だったのか。
「沖縄ではお年寄りを大事にすると聞いたが、この年寄りハラスメントは一体どう言うことだ!」
ハイ、この謎は次回に解き明かしてみよう。