先週の「マイカー選びとテツドウモケイ」の続きです。
(前項より続く)
思えばモジュールレイアウトという概念自体、当時の日本以上にワゴンが普通に普及していたモータリゼーション先進国のアメリカから発祥した事を思うとこうした変化も必然だったのかもしれません。
「運転会会場への運搬は、当然ながら自動車で、という事になります。従って、運搬中に自然風景や建築物に損傷を受けないように考慮しなければならないので、自動車のトランクに平積み、というわけにはいきません」(メイツ出版 片木祐一著「鉄道模型レイアウトのコツ55」6Pより引用)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/0e/ffb796b3da3550544527f4169d85556d.jpg)
モジュールが大型化したり、複数のモジュールを持ち込むともなれば従来のセダンのトランクルームではいかにも役不足。どうしても容積の大きな車が選ばれることになります。
とはいえ、今では普通の鉄道模型の入門書にもこういう事が書かれる様になりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/bb/419fb336b74390c7db722ed311875e70.jpg)
モジュールレイアウトが紹介される直前の時期のTMSの読者は半数が中高生、25歳までの読者が全体の80%を占めていたのだそうですから(注1)そこからも「マイカーを持っている鉄道模型ファン」がいかに少なかったかが伺い知れます。
してみると、クルマで運搬することが前提となるモジュールレイアウトの普及は、同時に鉄道模型ファンの平均年齢の上昇も象徴している気がします
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/1b/e9f53ec490bbed3835c8051320e0354d.jpg)
日本の場合、1980年代までは「ワゴンやバンを自家用車として使う」という意識はごく希薄なものでした。ミニバンの先祖である1ボックスカーは荷物を積むというよりも多人数乗車を優先していましたしSUVやワゴンにしてもクルマ社会全体の中では傍流的な扱いにすぎませんでした。
そんな中では「テツドウモケイの趣味のためにクルマの形を選ぶ」という発想がなかなか根付かなかったのは確かです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/ba/56ba26599a3020a8b035ce5c3227fcc2.jpg)
ですが1990年代以降その流れは大きく変わりました。アウトドアブームに伴うRVの普及という側面は大きかったとはいえ「鉄道模型の趣味のためにクルマを使う」という発想もごく自然に出せる様になってきたのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/a9/ca8d9bbcdb5dcba4e52f559951bb625f.jpg)
(あるいは逆にそうしたRVに乗る様になってから「マイカーがテツドウモケイの趣味に寄与する」側面に気づかれてきたところもあるかもしれません)
それは同時にマイカーの概念が「持つ事のステイタス性を自慢する流れ」から「それぞれのホビーに適応する形での車選びがごく自然にできる様になってきた」精神的な成熟性を得てきたとも言えます。
もう一つ見逃せない要素として上述の様に70年代、80年代には中高生が主流だったテツドウモケイのファンが平成以降、年齢を重ねマイカーを持つ様になったという点があると思います。今の鉄道模型ファンの免許の保有率やマイカー普及率は昔よりもはるかに高いのではないでしょうか。
モジュールレイアウト自体がモータリゼーションの産物といえますが、同時にそれは従来「コンテスト形式でなければ外に出る事もないテツドウモケイという趣味が」限られたイベント参加という形にせよ「外に飛び出すアウトドア性を持ち始めた」という事でもあると言えます。実際、JAMやグランシップといった大規模なものでなくとも県レベルでの鉄道模型ファンの祭典的なイベントは今次のコロナ禍直前までは増加傾向でしたし。
そしてモジュールレイアウトの側面を抜きにしても、カーライフが鉄道模型の趣味のあり方を大きく変えつつあるのは別な面からも説明できます。
単純に「テツドウモケイを買う」という面だけ取って見ても田舎によくある「県境を越えて模型を買いに行く」「模型屋の集まる街にクルマで出かける」のはごく普通になりましたし「鉄道写真を撮りに行くのにマイカーを使う」なんてのも今では普通の光景です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/8b/8f609a616241ea7b39f3c02bc8e9bd20.jpg)
それを端的に象徴しているのが「レンタルレイアウト」ではないでしょうか。
これまでユーザーにとっては「電車で行けるご近所」の範囲ゆえに大都市圏に限定されてきたレンタルレイアウトが地方に波及するのに伴い「お気に入りのレンタルレイアウトを探して県境を越える」ライフスタイルが登場しています。
レンタルレイアウトに車両を持ち込む層はNゲージと言えども10編成20編成を一時に持ち込む事が多く、これもマイカーなしではなかなか成立しにくいスタイルと言えましょう。
してみると「撮り鉄」「レンタルレイアウト」もある意味モータリゼーション成熟の産物という事が言えそうです。
こうした傾向は大都市圏よりもむしろ地方において特に顕著と思われ、ホビールームのこもりっきりのインドアな趣味としてのテツドウモケイからイベントや外出を通して見識を広げられる趣味への脱皮をも意味しているのかもしれません。
ただし、この傾向についてはモータリゼーションだけではなくインターネットの普及に伴う「家から出なくても見識が広がる」方向についても同じことが言えますが、この二つの方向の「どちらかだけ」では説明としては不十分と思います。
注1:鉄道模型趣味1973年8月号より
(前項より続く)
思えばモジュールレイアウトという概念自体、当時の日本以上にワゴンが普通に普及していたモータリゼーション先進国のアメリカから発祥した事を思うとこうした変化も必然だったのかもしれません。
「運転会会場への運搬は、当然ながら自動車で、という事になります。従って、運搬中に自然風景や建築物に損傷を受けないように考慮しなければならないので、自動車のトランクに平積み、というわけにはいきません」(メイツ出版 片木祐一著「鉄道模型レイアウトのコツ55」6Pより引用)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/0e/ffb796b3da3550544527f4169d85556d.jpg)
モジュールが大型化したり、複数のモジュールを持ち込むともなれば従来のセダンのトランクルームではいかにも役不足。どうしても容積の大きな車が選ばれることになります。
とはいえ、今では普通の鉄道模型の入門書にもこういう事が書かれる様になりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/bb/419fb336b74390c7db722ed311875e70.jpg)
モジュールレイアウトが紹介される直前の時期のTMSの読者は半数が中高生、25歳までの読者が全体の80%を占めていたのだそうですから(注1)そこからも「マイカーを持っている鉄道模型ファン」がいかに少なかったかが伺い知れます。
してみると、クルマで運搬することが前提となるモジュールレイアウトの普及は、同時に鉄道模型ファンの平均年齢の上昇も象徴している気がします
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/1b/e9f53ec490bbed3835c8051320e0354d.jpg)
日本の場合、1980年代までは「ワゴンやバンを自家用車として使う」という意識はごく希薄なものでした。ミニバンの先祖である1ボックスカーは荷物を積むというよりも多人数乗車を優先していましたしSUVやワゴンにしてもクルマ社会全体の中では傍流的な扱いにすぎませんでした。
そんな中では「テツドウモケイの趣味のためにクルマの形を選ぶ」という発想がなかなか根付かなかったのは確かです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/ba/56ba26599a3020a8b035ce5c3227fcc2.jpg)
ですが1990年代以降その流れは大きく変わりました。アウトドアブームに伴うRVの普及という側面は大きかったとはいえ「鉄道模型の趣味のためにクルマを使う」という発想もごく自然に出せる様になってきたのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/a9/ca8d9bbcdb5dcba4e52f559951bb625f.jpg)
(あるいは逆にそうしたRVに乗る様になってから「マイカーがテツドウモケイの趣味に寄与する」側面に気づかれてきたところもあるかもしれません)
それは同時にマイカーの概念が「持つ事のステイタス性を自慢する流れ」から「それぞれのホビーに適応する形での車選びがごく自然にできる様になってきた」精神的な成熟性を得てきたとも言えます。
もう一つ見逃せない要素として上述の様に70年代、80年代には中高生が主流だったテツドウモケイのファンが平成以降、年齢を重ねマイカーを持つ様になったという点があると思います。今の鉄道模型ファンの免許の保有率やマイカー普及率は昔よりもはるかに高いのではないでしょうか。
モジュールレイアウト自体がモータリゼーションの産物といえますが、同時にそれは従来「コンテスト形式でなければ外に出る事もないテツドウモケイという趣味が」限られたイベント参加という形にせよ「外に飛び出すアウトドア性を持ち始めた」という事でもあると言えます。実際、JAMやグランシップといった大規模なものでなくとも県レベルでの鉄道模型ファンの祭典的なイベントは今次のコロナ禍直前までは増加傾向でしたし。
そしてモジュールレイアウトの側面を抜きにしても、カーライフが鉄道模型の趣味のあり方を大きく変えつつあるのは別な面からも説明できます。
単純に「テツドウモケイを買う」という面だけ取って見ても田舎によくある「県境を越えて模型を買いに行く」「模型屋の集まる街にクルマで出かける」のはごく普通になりましたし「鉄道写真を撮りに行くのにマイカーを使う」なんてのも今では普通の光景です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/8b/8f609a616241ea7b39f3c02bc8e9bd20.jpg)
それを端的に象徴しているのが「レンタルレイアウト」ではないでしょうか。
これまでユーザーにとっては「電車で行けるご近所」の範囲ゆえに大都市圏に限定されてきたレンタルレイアウトが地方に波及するのに伴い「お気に入りのレンタルレイアウトを探して県境を越える」ライフスタイルが登場しています。
レンタルレイアウトに車両を持ち込む層はNゲージと言えども10編成20編成を一時に持ち込む事が多く、これもマイカーなしではなかなか成立しにくいスタイルと言えましょう。
してみると「撮り鉄」「レンタルレイアウト」もある意味モータリゼーション成熟の産物という事が言えそうです。
こうした傾向は大都市圏よりもむしろ地方において特に顕著と思われ、ホビールームのこもりっきりのインドアな趣味としてのテツドウモケイからイベントや外出を通して見識を広げられる趣味への脱皮をも意味しているのかもしれません。
ただし、この傾向についてはモータリゼーションだけではなくインターネットの普及に伴う「家から出なくても見識が広がる」方向についても同じことが言えますが、この二つの方向の「どちらかだけ」では説明としては不十分と思います。
注1:鉄道模型趣味1973年8月号より