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てらまち・ねっと



 日本の報道機関があまり流さないことの一つが、福島の原発の事後対応の実態。
 原子力発電自体は、いったん大事故が起きたら対処困難になることは、初めから分かっていたこと。

 実際に事故が起きて、東京電力は対処に及び腰。
 正規の費用も、裏のルーズな費用も電気代に上乗せして回収。

 政府は「事後処理」の名目で、税金での負担を上乗せし続ける。
 結局も、これは国民負担。

 そんな構図が確定してくる中で、現場の作業員の実態をロイター通信が積極的に流している。
 ここのところの報道や評価をいくつか記録した。
 ・・・東京電力をトップとするゼネコン、・・下請け・・雇用のピラミッドを示している。
   
 ロイター 【<慢性的な人手不足と緩い法規制>
 こうした労働トラブルが続発する背景には、福島第1原発の廃炉や除染作業で現場労働者が不足し、なりふり構わない人員調達が行われているという実態がある。作業現場では、雇用の発注者である東電の下に鹿島や大林組といった元請け、さらに7層を越す下請けが連なり、複雑な業務委託ピラミッドが出来上がっている。その末端には会社登記すらない零細企業も存在する】
 【東京五輪の影響で人手がさらに不足か】


 ということで、以下を記録しておく。

★特別リポート:福島作業員を蝕む「違法雇用と過酷労働」/ ロイター 2013年 10月 25日
★特別報道 福島が上げている悲鳴 : 低賃金、深刻な危険、そして暴力団 / ロイター通信 / アメリカNBCニュース 10月23日

★福島原発作業員、ヤクザが1,050人を「使い捨て」? 海外メディアの告発 /newsphere 2013年12月12日
★東京五輪も影響? 福島除染にヤクザがホームレスを送り込む 海外メディアの問題提起とは /ewsphere. 2014年1月9日
★特別リポート:福島除染に巣喰う「ホームレス取引」と反社勢力/ロイター 2014年 01月 8日

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●東電:福島原発作業、日当「中抜き」容認…元請けに文書
      毎日新聞 2014年01月04日
 東京電力が福島第1原子力発電所で働く作業員の賃金を改善するため、工事発注時に計算する人件費の単価(労務費)を1日1万円増やすと発表した後、元請け各社に「(作業員に渡される日当が)1万円増額されることを示すものではない」と説明する文書を配布していたことがわかった。発表の趣旨を事実上変え、元請けや下請けによる人件費の「中抜き」「ピンハネ」を容認する内容で、作業員から反発の声が上がっている。【前谷宏】

 ◇割増金「1万円増」発表後
 厳しい作業が続く福島第1原発について東電は、本来の労務費のほか、被ばく線量や作業内容に応じた「割り増し分」を加えて工事を発注。ただ具体的な金額は「今後の契約や入札に影響が出る」と公表せず、作業員らから「元請けや下請けによる中抜きを助長する」と批判が出ていた。

 しかし東電は昨年11月8日に福島第1原発の「緊急安全対策」を発表した際、これまでの労務費割り増し分の金額が「1万円」だったことを明らかにしたうえ、作業員の賃金改善のため翌月発注分の工事からさらに1万円を増額すると発表。配布資料にも「労務費割増分の増額(1万円/日→2万円/日)」と明記した。広瀬直己社長も記者会見で「元請けの皆さんにも(賃金改善を)徹底してくださいとお願いしますし、今回1万円増えることが末端の方(作業員)も分かるので、しっかりフォローしていきたい」と話した。

 ところが、東電は11月29日になって資材部長名の文書を元請け各社に配布。「緊急安全対策のうち、『設計上の労務費割増分の増額』に関するお願いについて」との表題で、「施策の内容が正確に伝わらず、取引先様の現場対応に混乱を招いた」と謝罪。プラス1万円の労務費の増額が「作業員の皆さまの賃金改善を図っていこうとするもの」と改めて説明する一方で「(作業員に支給される)割増額が更に1万円増額されることを示すものではない」と述べた。

 この内容について東電広報部の担当者は毎日新聞の取材に「作業員の賃金は請負各社との雇用契約で決められるもので、発注段階の労務費と実際に作業員に支払われる賃金とは異なることを説明した」と回答。発注段階の割増額を1万円から2万円に増額すると発表したことにも「代表的なモデルケースとして説明した。実際はより少ないこともあり得る」と述べ、実際の割増額は「契約上の話になるので回答は差し控えたい」と明らかにしなかった。11月8日の東電の発表は地元紙に「原発作業員手当を倍増」などと報じられていた。東電の文書について福島第1原発で働くある作業員は「賃金をきちんと増やす方針の会社とそうじゃない会社が出てきており、現場の不公平感が強まっている。東電の文書は作業員の士気の低下を引き起こしかねない」と話している。


●特別リポート:福島作業員を蝕む「違法雇用と過酷労働」
         ロイター 2013年 10月 25日
 [いわき市(福島県) 25日 ロイター] - 高濃度の放射線にさらされている東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所の廃炉・除染現場で、作業員を蝕むもうひとつの「汚染」が進行している。不透明な雇用契約や給料の中抜きが横行し、時には暴力団も介在する劣悪な労働環境の存在だ。

東電や大手建設会社を頂点とする雇用ピラミッドの底辺で、下請け作業員に対する不当な取り扱いは後を絶たず、除染や廃炉作業への悪影響も懸念されている。
「原発ジプシー」。 福島第1原発をはじめとする国内の原発が操業を開始した1970年代から、原発で働く末端労働者は、こんな呼び名がつくほど不当で不安定な雇用状態に置かれてきた。電力会社の正社員ではなく、保全業務の受託会社に一時的に雇用される彼らの多くは日雇い労働者で、原発を転々としながら、生計を立てる。賃金の未払いや労働災害のトラブルも多く、原発労働者に対する待遇改善の必要性はこれまでも声高に叫ばれてきた。

しかし、福島第1の廃炉および除染現場では、こうした数十年に及ぶ原発労働者への不当行為が改善されるどころか、より大規模に繰り返されている可能性があることが、80人余りの作業員、雇用主、行政・企業関係者にロイターが行った取材で浮かび上がってきた。

福島第1では、800程度の企業が廃炉作業などに従事し、除染作業にはさらに何百もの企業が加わるという、過去に例のない大掛かりな事故処理が続いている。現場の下請け作業員は慢性的に不足しており、あっせん業者が生活困窮者をかき集めて人員を補充、さらに給与をピンハネするケースも少なくない。下請け企業の多くは原発作業に携わった経験がなく、一部は反社会的勢力にも絡んでいるのが実態だ。

<不透明な雇用記録>
2012年の夏、同原発で現場作業員の放射線モニター担当として雇われた林哲哉(41)も、そうした末端労働者の一人だった。同原発に職を求めた動機には、日々の暮らしを支えるためだけでなく、自分が持つ建設や溶接の技術を復興に役立てたいという気持ちもあったという。
しかし、福島での雇用形態は予想以上に複雑だった。林によると、雇用契約は東電の6次下請けにあたるRH工業との間でサインしたはずだったが、現場で作業する手続きには同社も含め、6つの企業が関与していた。

さらに、当初に伝えられた仕事内容は現場から離れた放射線のモニター業務だったが、下請け会社の一つ、プラント工事会社のエイブルからは、実は放射線量が高い現場作業であることを告げられた。エイブルは、同原発で200人程度の作業員を管理する東電の元請け会社東京エネシス(1945.T: 株価, ニュース, レポート)の下請けだ。

「一週間経てば、(被ばくした)放射線量は半減する」、「被ばくしたとしても線量が積み上がることはない」。現場の上司からは、こんなデタラメも耳にした。
2週間の作業を終えた後、林は自分の被ばく放射線量の記録帳をみて、雇い主がRH工業ではなく、鈴志工業とテイクワンという上位の下請け企業になっていることに気がついた。林の主張については、両社のほか、東電、東京エネシス、エイブル、RH工業のいずれもロイターの取材にコメントはしていない。

林はこの雇用契約には違法性があったとして、仕事を辞めたあと、労組の派遣ユニオンとの連名で福島労働局に是正を求める申告書を提出した。その中で、雇用主や雇用内容が契約と異なっているほか、複数の企業による賃金の中間搾取、社員経歴書への虚偽記載の強要、放射線管理手帳への虚偽記載などの問題点を上げている。同労働局からの返答は来ていないという。
同年の9月、林は同原発で、あらためて鹿島(1812.T: 株価, ニュース, レポート)の下請け会社テックに雇われ、別の仕事に就いた。
 しかし、新しい仕事では、テックから支払われた1万6000円の日当のうち、ほぼ3分の1は仕事を仲介した長野県の元暴力団員を名乗る人物が受け取っていた。

「毎日あそこ(福島第1原発)では3000人の作業員が仕事をしている。作業員がいなくなれば、(原発処理はできずに放射能が拡散し)日本人がみんな死んでしまうことにもなるだろう」。廃炉や除染にかかわる仕事の重要性は十分に認識している、と林は語る。しかし、現実の労働実態は、許容できるものではなかった。「だまされて、はめられた思いだ」。林はいま、福島での体験を厳しい口調でこう振り返る。

暴力団との関係に見切りをつけ、福島原発近くの除染現場で働き始めた五島亮(23)も、林と同じ長野の人物を通じてテックによる除染作業に加わった。五島は14歳から関西系暴力団の地方支部に出入りし、ゆすりや借金の取り立てを続けていたが、20歳で同組織との縁を切った。しかし、その見返りとして、毎月20万円を数カ月間取り立てられ、借金した130万円を返済するため、除染作業に職を求めたという。

だが、実際に手にすることができた給与は、雇用時に約束されていた額の半分程度だった。仲介者による中抜きだったと五島は言う。これについてテック側はロイターに対し、横領したのは別の従業員で、その従業員を解雇したとし、五島には未払い分の給与を支払ったと説明している。五島は昨年12月に同社での仕事を辞め
テックの元請けである鹿島の広報担当者は、2人のケースについて、直接契約を交わしていないためコメントする立場にないとし、「我が社では契約先の企業に費用を払い、彼らから危険手当を払うよう指示している」と話している。

<慢性的な人手不足と緩い法規制>
こうした労働トラブルが続発する背景には、福島第1原発の廃炉や除染作業で現場労働者が不足し、なりふり構わない人員調達が行われているという実態がある。
作業現場では、雇用の発注者である東電の下に鹿島や大林組(1802.T: 株価, ニュース,レポート)といった元請け、さらに7層を越す下請けが連なり、複雑な業務委託ピラミッドが出来上がっている。その末端には会社登記すらない零細企業も存在する。


同原発では現在、約8300人を超す作業員が登録されているが、東電では廃炉事業を急ぐため、2015年までに少なくとも1万2000人を動員する計画を立てている。汚染水対策として緊急性が高まっている凍土遮水壁の建設要員を含めると、その数はさらに膨れ上がる見通しだ。

・・・・・・・・・・・(略)・・・
<避けられない下請け依存、届かない監視の目>
末端作業員への搾取がなくならない福島第1原発の実態について、雇用ピラミッドの頂点に立つ東電はどう考えているのか。
同原発の廃炉や地域の除染に必要な時間と作業量があまりにも大きく、自社だけでは人員も専門技術も不十分で、下請けに任せるしかない、というのが同社の現状だ。 同社は下請け作業や雇用の実態まで十分に監視できていないと認める一方、下請け業者は、作業員の酷使や組織的犯罪への関わりを防ぐ措置を実施していると強調する。

あっせん業者による給料の横取りを防ぐために、雇い主と管理企業が異なるような雇用形態は禁止されているが、東電が昨年行った調査では、福島第1の作業員の約半数がそうした状況に置かれていた。同社は元請け会社に労働規制の順守を求める一方、作業員の疑問に答えるため、弁護士が対応する窓口も設立した。さらに、厚生労働省による労働規制の説明会を下請け業者向けに開いたほか、6月には、新しい作業員に対し、不法な雇用慣行を避けるための研修を受けるよう義務付けている。

待遇改善が進まない背景には、東電自体が金融機関と合意した総合特別事業計画の下で厳しいコストカットを要求されているという現実がある。同社はすでに2011年の震災後に社員の賃金を20%削減した。業務委託のコストも厳しく絞りこまれており、結果的に下請け労働者の賃金が人手不足にもかかわらず、低く抑え込まれているという現実を生んでいる。
ロイターがインタビューした福島第1の現場作業員の日当は平均で1万円前後で、一般の建設労働者の平均賃金よりはるかに低い。

賃金や雇用契約の改善のみならず、現場での作業の安全性が確保されなければ、廃炉や除染事業そのものが立ち行かなくなる懸念もある。今年10月、作業員が淡水化装置の配管の接続部を外した際に、作業員計6名が高濃度の汚染水を浴びる事故が起きた。8月には作業員12名が、原子炉からがれきを取り除いていた際に被ばくした。
こうした事故の続発を受け、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、不注意な過ちを防ぐには適切な監督が重要だ、と指摘。現時点で東電は下請け業者に作業を任せ過ぎている可能性があると述べている

福島労働局によると、通常の業務委託は2次か3次の下請けぐらいまでだが、福島原発の廃炉や除染事業については、膨大な作業量を早急に処理すべきという社会的な要請が強く、下請け企業を大幅に増やして対応せざるを得ない。雇用者が下請け企業や作業員をしっかりと選別できないという現状の解決が最優先課題という。
「下請け構造が悪いとはいえない。労働者が全然足りない状況にあるということが大きな問題だ」と同局の担当者は指摘する。「廃炉や除染事業にヤクザの関与を望む人は誰一人いないはずだ」。


 ●福島が上げている悲鳴 : 低賃金、深刻な危険、そして暴力団
         とある原発の溶融貫通(メルトスルー) / 1月3日
以下は,米国のNBCニュースの記事「Help wanted in Fukushima: Low pay, high risks and gangsters」を和訳してくださった星の金貨プロジェクトさんからの引用です。

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特別報道 : 福島が上げている悲鳴 : 低賃金、深刻な危険、そして暴力団
信じられないほどに劣悪な、作業員の待遇 – どんぶり飯1杯とイワシの缶詰が半分、それが夕食…
他の場所では職を得ることが出来ない、だからと言ってこの扱いは許されるのか

アントニー・スロドコウスキー、斎藤まり、ケヴィン・クロリッキ、ソフィー・ナイト、クリス・メイヤー、長田よしゆき / ロイター通信 / アメリカNBCニュース
10月23日

▽ 除染・廃炉作業に募る不満

120913
福島第一原発周辺の市町村では、避難している住民たちの帰還がかなうよう、線量計を身に着けた何千人もの作業員が、産業用のホースを何本もつなぎ、掘削機械を操作し、民家の屋根や壁、道路などをこすり洗いし、地面の表面を削り取り、木の葉をかき集め、木の表皮をはぐなどの作業をして、環境中の放射線量を下げるための努力を続けています。

数百社に上る零細企業が、この除染作業を行うための契約を得ました。

7月の厚生労働省の報告によると、2013年上期、これらの企業の70%が労働関連法規に関する違反を行いました。
厚生労働省の福島県事務所は、除染作業に関連する567件の告発を受理し、10件について悪質であるとして警告を行いました。
しかし、処分を受けた会社はありませんでした。

警告を受けた会社のひとつがデンコー警備という会社です。
福島第一原発の事故の前、この会社は工事現場に警備員を派遣することを主な業務としていました。
デンコー警備は福島第一原発近くの田村町で、35人の労働者を管理していました。

ロイター通信が傍聴した5月の調停の席上、労働者は小さな宿舎の1部屋に5人が詰め込まれ、寝起きさせられたと不満を訴えました。
夕食はほとんどの場合、どんぶり飯一杯と少量の野菜、あるいは缶詰のイワシだけだと彼らは訴えました。

除染01
昨年12月には、凍結した道の上でスリップ事故を起こしけがをした作業員を病院に運ぼうとした運転手に、現場の監督がけがをした作業員のユニフォームを脱がせ、遠い場所にある病院に連れて行くよう命じました。
デンコー警備は労災保険に未加入で、事故の報告をしなくていいように、隠ぺいを謀ったのだと訴えました。

「私たちはすぐに現場に入り、ただちに作業行うように依頼されていたため、各種の手続きが後回しになってしまったのです。」
デンコー警備の役員はこう語って、作業員に謝罪しました。
後に作業員はそれぞれ60万円の補償金を受け取りました。
「結果論になりますが、作業現場に全くの素人を送り込んだために起きたという事故ではありません。」

ロイター通信が傍聴した調停の席上で、デンコー警備は労働環境に問題があったことは認めましたが、12月の事故については未だ調査中であると答えています。

この問題の解決にあたった労働組合の関係者は、デンコー警備のケースのような多数の労働者が関わる事例が解決を見たのは、珍しいと語っています。
多くの作業員は雇用主に借金をしていることになっており、雇用を打ち切られ、借金が返済不能になることを何よりも恐れており、そのため何事にも口を閉ざそうとする傾向があるのです。

NBC 4
「ブラックリストに自分の名前が載ることを恐れ、彼らは告発すること尻込みしているのです。」
かつては自身が福島第一原発で作業員として働き、いまは福島の作業員を守るための組合を運営している相沢みつお氏がこう話してくれました。
「彼らが他ではほとんど職を得る可能性を持っていないことを、忘れてはなりません。」

福島第一原発での体験は、林さんを活動家に変身させました。

2012年後半の福島第一原発における体験を記録したビデオをインターネットに投稿した後、彼は2度目の雇い主によって東京郊外の建設現場に配置換えになりました。
週刊誌が林さんに関する記事を掲載すると、会社の上司は彼に辞職するよう頼み込みました。
彼は東京に住まいを移し、労働基準監督署に告発を行いました。

その上で林さんは元俳優で、国会議員に選出された山本太郎氏の下で、ボランティアとして働きました。

NBC 3
「多数の下請け業者を使っている大手企業は、現場の作業員が職を失うことを恐れて、口をつぐみ続けるだろうと考えています。」
林さんがこう語りました。
「しかし、日本は永遠にこの問題を無視し続けることはできません。」〈 完 〉



●福島原発作業員、ヤクザが1,050人を「使い捨て」? 海外メディアの告発
             newsphere 2013年12月12日
 ロイターは、福島原発で汚染水貯蔵タンクの組み立てなどを行う作業員の雇用実態を告発した。記事は、過酷な現場に最後まで残ったある作業員の、内部告発闘争記に近い趣きを帯びている。

【違法派遣で粗製乱造されているタンク】
 取材された作業員は、求人が少なく賃金が低い沖縄で2012年7月に募集された17人のひとりで、福島原発での仕事、としか説明されなかったという。契約書もなかった。作業員らは、現場では大成建設の下請けであるテック社の指示を受けていたが、雇用主は沖縄の東建興業で、派遣業免許が無い上、違法な孫請けである。さらにテックも作業員らに対し、テックに直接雇用されているよう、調査に対して偽ることを指示していたという。

 小部屋に3~4人が放り込まれ、朝5時に朝食など、労働環境も劣悪であった。貯水タンク不足の焦りからか、作業は質よりスピードが優先で、作業員らも「粗末な仕事」と認めるものであった。タンク自体も、溶接ではなくボルト留めの簡素なものだったとのこと。雨や雪の天候下、金属には付かない充填剤でタンクの隙間を塞ぐような「何の意味もない」作業もあれば、説明なしに危険な作業をさせられることもあったという。沖縄からの17人は、最初の1ヶ月で5人が辞めた。

 孫請けの問題点は、賃金のピンハネと、責任の所在が曖昧になることである。記事からは、東電が現場の実態を正確に把握しようとしていた印象は受けないが、東電は11月、下請け監視の強化と数千の労働者の賃金倍増を約束した。なお東建興業は9月に、沖縄の労働規制当局に摘発されている。

【人手不足の東電に群がるヤクザ】
 福島原発の除染・解体には30年掛かると言われており、作業員はまるで足りていないという。英メール・オンラインは、こうした違法派遣にはヤクザ・ギャングが関わっており、債務者やホームレスを強制的に送り込んでは被曝するとすぐクビにしている、と報じた。

 潜入した覆面記者の調査によれば「使い捨て人間」たちには、保険や放射線計さえ与えられていなかったという。ある作業員は「連中は大金を約束し、長期契約さえ署名したのに、その後いきなり終わりにして、約束した合計の3分の1も払っていない」と証言している。

 警察は現在、50におよぶヤクザが1050人の労働者を抱えていると見積もっており、英雄視された震災直後の作業員第一陣、「フクシマ50」でさえ、少なくとも3人はヤクザに送りこまれたものだという。

●東京五輪も影響? 福島除染にヤクザがホームレスを送り込む 海外メディアの問題提起とは
            newsphere. 2014年1月9日
 昨年12月30日付のロイターの特別報道をきっかけに、福島の廃炉・除染現場の現状を、海外メディアが報じている。

 以前にも、福島復興事業の行政下請のずさんさを報道したロイターはが、今回は日雇い除染作業員のヘッドハンターへのインタビューに成功。ホームレスの男性が、違法な労働条件のもと、除染作業に従事している現状を報じた。

【除染作業現場でのホームレスの労働の実態】
 同記事によれば、この男性は毎朝仙台駅にてホームレス男性らに声をかけ、除染作業員の仕事の「リクルート」をしているという。「リクルート」に成功すると、この男性は、1人あたり1万円の報酬を得るそうだ。ホームレスの除染作業員の時給は、最低賃金と同等またはそれ以下であり、寮代や食費等の給与天引きで実質的な賃金がほとんど手元に残らないケースや、むしろ借金を負うことになるケースもあるという。
 ロシア国営テレビ局『ロシア・トゥデイ』の報道によれば、これらの労働者はその作業内容の危険性にもかかわらず、保険に加入することも、放射能測定機を利用することもできないのだそうだ。

【日本では広く報道されず】
 海外メディアは、この状況を、人権問題と認識した報道を展開。BBCワールド・サービス・ラジオで放送された、同記事の主要執筆者の一人である斉藤真理記者へのインタビューでは、「日本人は彼ら(ホームレス)のこの現状について気にかけているのですか」等、日本人の意識を問う質問が投げかけられた。これに対し、斉藤記者は「気にかけていると思う」と答えていた。
 実際、同日本語記事はアクセスランキング1位で、1000件以上ツイートされている(9日17時時点)。ただ、日本ではこうした現状は広く報道されているとはいえない。

【背景には不透明な行政下請と人手不足】
 ロイターの分析によれば、背景には、行政の復興事業委託業者に対する監督の不十分さと、除染作業現場における深刻な人手不足がある。
 ロイターは同記事にて、監督不足の一因が、2011年に成立した放射性物質汚染対処特措法にあると指摘。同法により、従来道路建設等の公共事業を行う際に委託業者に対して要求されていた基本情報の開示や、国土交通省の認可等の諸条件が、除染作業の委託では緩められた。福島第一原発の除染作業を下請けしている業者名は公表されていないものの、ロイターの調べによれば、放射能汚染が最も深刻とみられる10の市町村と高速道路にて、除染作業に携わる企業733社のうち、56社は国土交通省未認可のものである。

 昨年には、除染作業の委託先であり、建築業界の二番手でもある株式会社大林組の下請け会社が、違法な派遣事業を行ったとして、関係者の逮捕が相次いだ。下請け会社に対する監督が行き渡っていない現状が伺える。山口組や住吉会、稲川会など複数の暴力団関係者が、最低賃金以下でホームレス男性らを福島第一原発周辺の除染作業に従事させたなどとして逮捕されたという。

【東京五輪の影響で人手がさらに不足か】
 前述の斉藤記者によれば、福島第一原発の廃炉・除染作業現場での人手不足は2020年の東京五輪による影響でますます深刻化しているという。以前から、人口全体の高齢化と政府の過去の公共事業支出削減による業界全体の縮小によって建築業界における人手不足が進行しつつあることは指摘されていたが、東京五輪に向けた建築ラッシュにより、労働力が首都圏に流れているという。

 東京電力の試算によれば、福島第一原発の廃炉作業には2015年だけでも1万2000人の労働者が必要とされる見込みである。しかし、政府の発表によれば、現在廃炉作業に従事している労働者数は約8000人であり、総求人数の25%にもなる人員を未だ確保できていない。この需要と供給のギャップを、前述の日雇い労働者たちが埋めているのも、今回報道された問題の背景にあるようだ。

●特別リポート:福島除染に巣喰う「ホームレス取引」と反社勢力
            ロイター 2014年 01月 8日
[仙台 8日 ロイター] -冬場の最低気温が氷点下にもなる未明の仙台駅。凍てつく寒さをこらえながら、段ボールにしがみつくようにして眠る路上生活者たちを、ほぼ毎日のように訪れていた人物がいる。

元プロレスの興行師だったというこの男性は生活困窮者を支援するケースワーカーではない。放射能汚染が続く福島での除染作業などにホームレスを送り込む手配師のひとりだ。

「俺のような手配師は誰でもここに来て、作業ができそうなやつを探してきたんだ」がっしりした肩を揺すり、寝込んでいるホームレスの間を歩きながら、佐々誠治(67)はロイター記者にそう話した。除染やがれき処理などに作業員を送り込む手数料として、佐々が受け取っていた謝礼は作業員1人当たりおよそ1万円。始発電車もまだ動いていない夜明けの仙台駅は、実はそうした「ホームレス調達」の拠点と化していた。

福島地域の放射能汚染によって避難生活を強いられている被災者は14万人にも及ぶ。彼らが帰還するには、徹底した除染や復興推進が絶対条件だ。しかし、ロイターによる政府資料の分析や多数の関係者への取材で明らかになったのは、国から膨大な事業費が流れこむ除染や復興事業の一部が、作業員不足につけ込んだ不法行為の温床となり、暴力団関係者の資金源にもなっている、という実態だった。

<暴力団関係者への依存>
ホームレス作業員の手配師として佐々が関与していた事業は、福島市の道路除染を行うために発注された約1億4000万円の契約の一部だった、と佐々を職業安定法違反容疑で逮捕した捜査当局者は話す。その主契約企業は大手ゼネコンの大林組(1802.T: 株価, ニュース, レポート)。佐々が仙台駅で調達したホームレスたちは大林組の下請けに連なっている業者4社を経由して、福島での除染作業などに投入された。

「自分は人を送ればいいだけ」と、佐々はロイターの取材に語った。「送って、お金と交換すればいい。その奥までは入れない。こっちは関係ないから」。
だが、佐々がうまみを感じた手配師ビジネスが、ホームレスたちに過酷な結末をもたらすことも少なくなかった。佐々に送り込まれた作業員が受け取る賃金は、大林組の下請けが賃金予定額として支払う金額の3分の1程度しかない。

捜査当局などによると、残りの3分の2は仲介する業者の懐に入る。食事と寝泊まりする場所の費用を差し引けば、作業員の手元に残る賃金は時給600円程度。福島県の最低賃金(675円)を下回る額だ。作業員の中には、食費と宿舎費用を差し引かれて持ち金が底をつき、借金する羽目になる例もあるという。


ある時、佐々は仙台駅で路上生活者を物色中、覆面捜査官に写真を撮られ、昨年11月に宮城県警に逮捕されたが、その後、起訴猶予処分となった。彼の背後には暴力団関係者も加わる「ホームレス取引」のネットワークが存在しており、佐々の逮捕に先立つ10月、違法行為に関与した他の業者が労働者派遣法違反容疑などで一斉に検挙されている。
その一人が、稲川会系暴力団元幹部
で人材派遣業を営む西村満徳(67)だった。関係者らによると、西村は佐々の顧客で、本格的な除染作業への労働者派遣が禁じられているにも関わらず、ホームレス作業員を仙台市のはずれの宿舎に住まわせて現場に派遣、毎月、彼らの作業の賃金として政府が支払う金額の一部を不当に手に入れていた。西村への直接の取材はできていないが、彼は25万円の罰金処分となった。
西村は地元では顔が広く、仙台市が出資しているホームレス自立支援施設、清流ホームにも出入りしていた。同ホームは2011年の震災のあと、他のホームレス作業員を復興作業に従事させるため、彼に紹介することもあったという。
「彼(西村)はとても良さそうな人にみえた。運が悪かったね。すべての業者についてすべてを調べるのはとてもできないから」と清流ホーム次長、五百澤洋太は西村とのやりとりを振り返る。

西村と同時に、同じ事件に関与したとして、同市にある産廃物処理業者、伸栄クリーン社長、長田俊明(64)と建設会社、フジサイ工建の社員である林文典(54)、元人材派遣業の佐藤拓也(29)も逮捕された。

フジサイの統括課長である佐山健一は、自社の社員が不法な労働者派遣に加担したことについて、「(暴力団が)絡まなければ、人(作業員)は増えない」とロイターに本音を漏らし、「結局、建設業界というのは、90%暴力団ですからね」と付け加えた。

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実際に除染事業を手がけている業者数は公表されていない。しかし、ロイターが情報公開法に基づき昨年8月に環境省から入手した資料を調べた結果、もっとも汚染がひどい10市町村とその地域を通る常磐自動車道沿いで、733企業が除染作業にあたっていることがわかった。

公共事業への参加には国土交通省の建設業者審査で承認される必要があるが、それらの地域で除染に関わっている56の下請け業者は、そのリストに名前がないことも明らかになった。
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公共工事に詳しい法政大学教授で弁護士の五十嵐敬喜は、菅直人政権で内閣官房参与として初期の災害対応に奔走した。その経験をふまえ、除染作業のためにあわてて企業をかき集めた当初の経緯は、事態の緊急性を考えれば理解できる、という。しかし、今の段階では、不正入札など現場における悪質な行為を防ぐために、政府自らが監視を強化する必要があると指摘する。
「公共事業で(法務局)登録していない業者は絶対にだめだ。税金を使っているので、使い道をはっきりするということが必要」と五十嵐は言う。「確かに除染には緊急性がある。しかし、多くの下請けがあって中間搾取されているのは大問題。それはそれで監視すべきだ」。

<先見えない除染事業>
2011年3月の東日本大震災で東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)・福島第1原子力発電所が破壊され、福島を中心に深刻な放射能汚染が発生してから3年近くが過ぎようとしている。「福島再生にすべての責任を負う」と宣言した安倍晋三首相は、復興加速化に向け国費主導の姿勢を鮮明にし、被災者帰還の前提となる除染関連事業には廃棄物の中間貯蔵施設の建設費用を含む4900億円を確保するなど対応を強化する構えだ。
しかし、深刻な労働者不足や不当雇用に苛まれる除染作業が今後も順調に成果をあげるかどうかは未知数だ。環境省は昨年12月26日、もっとも汚染が深刻な地域での除染終了までには、2014年3月を目標にした当初の計画よりも2─3年は長くかかるだろうとの見通しを発表した。これらの地域からの避難生活を余儀なくされている多くの人々にとって、かつての生活を取り戻せる日はまだ近づいてはいない。



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