●(社説)政務活動費 住民感覚とのずれ正せ
朝日 2015年3月17日
▼政務活動費は何のために必要なのだろう。多くの人がそんな疑問を抱いたのではないか。
47都道府県議会が13年度、議員に支給した政務活動費を朝日新聞が調べた結果、正当とは思えない支出が次々と発覚した。
長男が運営する会社に家賃や印刷代などとして260万円を支出▼他の議員らの政治資金パーティーの参加費▼計108回の外食代計35万円超▼服をかけるマネキンの購入費――。
税金でまかなわれている重みをどこまで理解しているのか。
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地方自治法の改正で、政務調査費が調査研究目的以外にも使える政務活動費に変わったのは2年前だった。議員の政策立案能力を向上するねらいがあったはずだが、「改悪だったのでは」と思わずにいられない。
地方自治体はどこも財政事情が厳しい。その運営を監視すべき議会がこのありさまでは、政治不信は強まるばかりだ。
問題の根源は、議会と住民感覚との深刻なずれだ。直ちに正していかなければならない。
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まずは透明性の確保だ。
議員が議会に提出した領収書は、全議会が「閲覧可」としている。だが、コピーするには情報公開請求の手続きをしなければいけない議会が大半だ。
高知県、大阪府の議会は7月以降、領収書をインターネットで公開することを決めた。ほかの議会も、これぐらいはすぐにやってもらいたい。
使途の厳格化も不可欠だ。飲食費がどこまで許されるかなど、各議会のマニュアルをこの際、総点検してはどうか。
事前に一定額を渡す前払い方式が、無理な使い切りを招くという指摘もある。領収書をもとに事後精算する後払いを徹底することも考えてよい。
政務活動費は自治体予算の一部だ。首長は議会に遠慮しがちだが、議会の動きが鈍ければ改善を強く働きかけるべきだ。
直接的な監視の仕組みも広げていきたい。
「号泣県議」の不適切支出が問題となった兵庫県議会は、有識者による第三者機関を設け、2親等内の親族らへの人件費の支出を禁じる答申を受けた。
人口5500人の北海道鹿追町は町民5人の第三者審議会が、政務活動費の使途を議員に直接、ただしている。
第三者機関を持つのは47都道府県議会で五つだけだが、全議会が設置すべきだろう。
議員は有権者に選ばれた住民の代表であり、間接民主制を体現する責任をもつ。活動をガラス張りにし、常にチェックを受けるのは当たり前のことだ。 |