●地域の英知集めたい きょうから統一地方選
中日 2015年3月26日
神奈川、三重、福井など十道県で知事選がきょう告示され、統一地方選が始まる。地域の未来を決める重要な選挙だ。関心を持ち、貴重な一票を投じたい。
十道県知事選に続き、二十九日には相模原、静岡、浜松など五つの政令指定都市の市長選、四月三日には四十一道府県議選と十七政令市の市議選が告示され、いずれも統一地方選の前半戦として四月十二日に投開票が行われる。
後半戦として四月二十六日に、二百十一市町村の首長選、六百六十八市町村の議員選と、東京都の十一区長選、二十一区議選でも有権者の審判が下る。
投票率は低下傾向に
四年ごとの統一地方選は一九四七年四月に第一回が行われ、今年が十八回目。首長選びに戦後、住民による公選制が導入され、議員と合わせて全国一斉に選挙を行うことになった。
苛烈な地上戦の舞台となった沖縄県では四六年九月、本土に先駆けて首長、議員選挙が行われたため、今でも七カ月早く統一選が行われている。
選挙をまとめて同じ日に行うのは、有権者の関心を高め、経費を節減することが目的だった。
とはいえ、全地方選に占める統一選の割合を示す「統一率」は27%台にまで落ち込んでいる。
任期途中での首長辞任や、昭和・平成期の自治体同士の大合併、東日本大震災の被災自治体での選挙延期など、統一選から選挙時期が外れる自治体が増えたためだ。
統一率が落ちていく一方で、投票率の低下も激しい。
統一選での道府県議選の投票率は、第一回は81・65%だったが、前回二〇一一年は48・15%。ほかの選挙でも当初は70~80%台だった投票率は前回は40~50%台に落ち込んでいる。投票率低下は統一選に限らず、地方選挙で著しい。
相次ぐ議会の不祥事
なぜ、生活の場により近い、身近な選挙のはずの地方選で投票率が低下しているのだろうか。
首長選では、主要政党の「相乗り」が増え、有権者から投票意欲を奪うことが挙げられる。共産党系候補が立候補しても、自民、民主両党の相乗り選挙では、投票率は低くなる傾向がある。
今回、十道県知事選で自、民両党の激突は北海道、大分の二つだけ。三重などで候補者擁立を見送った民主党の責任は大きい。
多少古い調査だが、〇六年十二月に本社加盟の日本世論調査会が行った全国面接世論調査では地方議会の現状に「満足していない」との答えは六割を超え、最も多い理由は「議会の活動が住民に伝わらないから」(53%)だった。
私たち報道機関にも責任の一端はあるが、地方議会が何をしているか分からないから、投票にも行かないという悪循環に陥っているのだろう。有権者の目が届かなければ、質が劣化するのは当然だ。
政務活動費をめぐる兵庫県議の号泣会見は記憶に新しい。東京都議会では女性蔑視やじもあった。地方議会が話題に上るのは、不祥事があったときばかりだ。そんな議会に、行政に対する監視機能を果たせるはずはあるまい。
その結果が、不要不急の公共施設建設による財政窮迫、福祉レベルの低下、人口の流出・減少であり、自治体消滅という予測だ。有効な手を打てなければ、地域が衰退するという当然の結末である。
これを候補者だけの責任にしてはならない。地方自治への無関心のつけを払うのは結局、私たち住民自身だからだ。
地域活性化のための解決策を見つけ出すには多様な人材が自治体の意思決定に参加し、地域の英知を集める必要がある。
議会改革はその一歩だ。夜間や休日にも議会が開けるよう工夫すれば、住民の関心はより高まり、幅広い層に政治参加を促す。
ドイツの市町村議は本業の傍ら活動するボランティアが基本だそうだ。こうした例も参考に地方議会改革を進めたらどうか。
若者や女性、いずれは民間企業の会社員も議員として政治参加できるような環境が整えば、眠っていた経験や知恵を地域の活性化に生かすことができる。そのとき、地域は劇的に変わるだろう。
困難乗り越えてこそ
こうした改革のいくつかは、これまでも試みられ、地域のしがらみの中で葬り去られてきた。しかし、その困難を乗り越えてこその地方自治でもある。
英国の歴史学者で政治家のジェームズ・ブライス(一八三八~一九二二年)は「地方自治は民主主義の学校である」と言った。
代表を通じて地域を変えられるのは主権者たる住民だ。現状に安住せず、改革意欲を持つ首長、議員を見極めて、選び出すことができるのか。見識が問われているのは、私たち住民自身でもある。 |