●「今、日本は戦後最大の危機を迎えている」大江健三郎氏、鎌田慧氏が会見
BLOGOS編集部 2015年03月10日
10日、ジャーナリストの鎌田慧氏と、作家でノーベル文学賞受賞者の大江健三郎氏が会見を行った。両氏は2011年、内橋克人氏、落合恵子氏、坂本龍一氏、澤地久枝氏、瀬戸内寂聴氏、辻井喬氏、鶴見俊輔氏と9名で「『さようなら原発』一千万署名 市民の会」を結成、「さようなら原発1000万人アクション」を続け、署名や集会などの活動を行ってきた。
両氏は東日本大震災と福島第一原発事故の発災から4年を迎えるのを前に、改めて原発の再稼働反対を訴えた。
鎌田氏の冒頭発言要旨
・・・4年経ってもどこに住んだらいいのか、どういう仕事をしたらいいのか、まだわからない人が11万人以上います。こういう人たちを見捨てる形でまた原発を動かそうとしている、これは本当に、人類の叡智に対する挑戦だと思います。間違いを改めない、犠牲者を振り捨てて新たな利権に向かっていく。全く人間のモラルに反することを、今、日本政府と電力会社はやろうとしているのだと思っています。
・・・5年目に入るにあたって、ドイツからメルケル首相が来られたのは象徴的です。
再稼働しようという国と、きっぱりそれをやめて新たな道に進むという国の首相が相まみえて、これからの日本の進路を考えていく。つまり自己決定したドイツと自己決定しない日本のその対比が明らかになって、これからの原発反対運動に大きな力になっていくと思います。
私たちは3月28日、新宿で大江さんなどの講演会を開きまして、5月3日には、みなとみらいの臨港パークで3万人規模の大集会を開きます。これは原発反対運動と戦争反対運動、全ての運動を一緒にした大運動を行いながら、新たな日本に向かってやっていこうと思っています。
大江氏の冒頭発言要旨
・・・・メルケルさんと安倍首相が話をしたということは、私は非常に大きい、象徴的な、あるいは現実的な意味を持っている出来事だと考えています。
メルケルさんはまず最初に、非常に高度なテクノロジーを持っている日本の人々が原発を十分にコントロールできなかったということは事実だと言われました。ドイツは福島の事故を見て、これからのエネルギーの課題として原発を用いるということは全く不可能だということを認識した、そしてそれに向かって働き始めているということです。
それに対して安倍氏は、今いくつもの原発が稼働をやめているけれども、今年のうちに4つ、あるいは5つの再稼働を行うということを言った。そしてその方針を変える気はないとも言った。この日本の態度はヨーロッパに対してそうであると同時に、アジアに対しても最も明らかになっているということは、皆さんがよくご存知だと思います。今、戦後最大の危機を我が国が迎えているということだと考えています。
・・・それは尖閣諸島の問題につきましても、竹島、韓国の方々の言い方では独島の議題とも同じです。アジア諸国との関係も非常に悪い状態にあるということを明らかに知っていながら、政府にそれを作り変えようという意思があるとは思えない。そのための努力を何もしていない。
その証拠に、今の首相が韓国、あるいは北朝鮮の政治家たちと話し合いをすることは途絶えたままですし、中国に対してもそうです。アメリカの占領期は別ですが、戦後、こんな日本に全くなかったことが行われて、福島以後の危機を最も全面的なものにしてしまっている。
・・・・・・・(略)・・・
質疑応答
ー東京地検が東電の経営陣の不起訴を決めたタイミングについて。一回目がオリンピックの開催地が決まろうとする時期、もう一回は総選挙の直後でした。何か政治的な配慮があったと思いますか。
大江:もちろん彼らは政治的な言葉を発している。日本の裁判官たちも、あるいは官僚たちも、政治家とともに、非常に不思議なほど、安倍政権のやり方を支持するほかない、というところに固まっていて、原発の再稼働に向かって、あらゆることよりもそれを第一目的としている。すなわち今や我が国は原発再稼働に向かっての動きにおいても、非常に危険な状態を迎えている。
これを日本人が、我々が集会や運動によって作りかえなければいけない。
今、原発事故の大きな悲劇の後で、どのように人間的なものを回復していくかを中心に考えて、それ以外のことは二次的なものとする、そしてその原則に従って我々が今取ろうとしている態度はすなわち、ともかくも原発は再稼働させよう、それだけの目的で全日本的な宣伝活動が行われ、オリンピックの決定も含めて明るい要素があるかのごとく振る舞おうとしているのは間違っていると。
その大きい大きい一番の間違いがわかるのは次の原発の大事故がおこるときでしょうが、そのときは我々の未来はないんですから、芸術はないんですから、今の政府の原発に対する態度を根本的に改めさせないといけない。
そのために唯一あるとすれば、選挙によって完全に安倍を打ち倒すということですが、その希望はこの2年ほど、なくなってしまっている。まさに我々は窮地にある。しかし、そういう窮地にも、強い認識でもって新しい動きをはじめなければいけない、それが一番大切な問題だと、そう考えたい。
皆さんからの知恵を頂きたい、励ましを頂きたいと考えている。
・・・・・・・(略)・・・
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