平成22年4月16日開催の衆議院法務委員会で,公正取引委員会の竹島一彦委員長が政府特別補佐人として答弁している。
○大口委員 次に、前回も取り上げさせていただきましたが、過払い金返還の問題についての、一部弁護士、司法書士と、依頼者である多重債務者のトラブルの問題につきましてお伺いをしたいと思います。
とにかく広告を派手派手しく出して大量に仕事を受けて、そしてそれを処理しないまま放置するとか、あるいは、過払い金請求だけしか受けない、そして多重債務者の生活再建ということを全く考えない、多額の報酬を受ける。それから、これは非弁活動、犯罪でありますけれども、弁護士本人が直接面談をしないで全部事務所の職員任せにする。とんでもないことが行われているわけでございます。
私は、日弁連、そして日本司法書士会連合会の方々からもヒアリングをさせていただきました。そして、日弁連も日司連も指針を今回出されたわけであります。日弁連は、二十一年七月十七日、債務整理事件処理に関する指針を定め、本年三月十八日にさらに同指針を改定し、直接かつ個別の面談の原則や、広告における弁護士費用の表示等の配慮事項を追加しました。また、日本司法書士会連合会も、平成二十一年十二月十六日、債務整理の事件に関する指針を策定しました。
このような指針の策定自体が独禁法上問題になるのか、公取委員長からお伺いしたいと思います。
○竹島政府特別補佐人 お答えいたします。
今御指摘のことにつきましては、かねてから、公正取引委員会といたしましては、いわゆる士がつくような資格者の団体のガイドライン、それから、より広くは事業者団体のガイドライン、要は、その団体としての行動で必要があっても、独禁法の立場から見て、そういう枠組みなりそういう名目のもとで競争を制限する、各団体の構成員はそれぞれ、広告にしても報酬にしても、それを、耳なれない言葉かもしれませんが、競争手段として自分の判断で使うべきものでありまして、団体として一定のことを義務づけるということが、社会的ないしは常識的に正当化されることであればいいんですけれども、そうじゃないということが往々にしてあったものですから、そういうガイドラインで指導してきているというのが実態でございます。
今御指摘の日弁連にしても日司連にしてもそういう経緯は十分御存じのはずでございまして、我々のガイドラインに基づいて、今御指摘の指針についてもお考えいただいているものと私どもは考えております。
より具体的には、今申し上げたような内容の指針であれば、これはむしろ消費者または顧客の正しい選択に資するということでございまして、そういう意味のメリットが十分にあるだろう。逆に、そのために、それぞれの弁護士さんなり司法書士さんの活動が団体のこういう指針によって縛られて、競争が非常に制限されるというおそれはないだろうというふうに思っております。
○大口委員 では、具体的に聞きます。
日弁連も日司連も、この広告のことあるいは報酬のこと等について、会則でもって義務づけということを考えています。
日弁連の場合の会則、それから日司連の場合は各単位の司法書士会の会則ということでありますが、例えば、日弁連の指針の中に「債務整理事件取扱いの広告」とあり、アで弁護士費用について表示、ウで受任弁護士による直接かつ個別の面談が必要となる旨の表示の努力規定があります。これを会則で広告規制として各表示を義務づけることが独禁法上どう評価されるのか。
それともう一つ、日弁連や日司連、これは各単位司法書士会が、会則で、債務整理の事件の受任契約の際に、日弁連や日司連がホームページ上公表しています過去の報酬額の平均値の一覧ですとかあるいは報酬金額の分布を債務者に提示することを義務づけることは、独禁法上どう評価されますか。
○竹島政府特別補佐人 指針から会則ということになりますと、会則に違反した場合にはそれなりの処罰があるんだろう、そういう意味で、より格が上がるということでございますが、内容的に先ほど申し上げたとおりのことであれば、そういう会則は、特に独禁法上問題にすべきではないだろうというふうに思っております。
要は、競争を制限するのではなくて、消費者の適切な、正確な選択に資するというものであるかどうか。逆に言うと、そういう建前をとりながら、実は同じような報酬を取るとか、それから、より顧客を集めたいと思っている会員に対して、その活動を制限するとかいうことはいけません、こういうことでございますから、そういう基本的な問題意識に触れない限り、特に問題視すべきものではない。
それから、従来から非常に問題であった報酬についてどうするんだということですが、報酬規定というものはもうやめていただくということになって今に至っているわけでございますが、今委員御指摘の、客観的にこういうふうに報酬額というのはばらつきがあるんですよというようなことが、いわば客観的に集められて、かつ統計的にきちんと処理されたものとして、ばらつきはこういうふうになっております、平均値はこうでございます、そういうことを既にホームページで発表しておられる。それを、お客様、消費者に見せて、それで、こうでございますよ、私は幾らですよということを示すことは、これは、消費者がその弁護士なり司法書士の要求する報酬が高いか低いかを客観的に判断できるということになりますから、その限りにおいては、私は問題ないと。
ただ、上限とか標準額とかいって、結局は、そういうサービスは幾らですよということが、いわば極めてそこに集中しているような形で定められる場合には、私どもとしては、それは問題にせざるを得ないということでございます。