司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

死亡危急時遺言

2014-11-27 11:39:18 | 民法改正
 たかじんさんの闘病生活を描いた「殉愛」が諸々話題になっているが,たかじんさんの遺言の方式は,「死亡の危急に迫った者の遺言」(民法第976条第1項)であるそうだ。

 「殉愛」を読んでいないので,また週刊誌等がこの問題をほとんど取り上げていないので,詳細は不明であるが,ぱらぱらと目に付く情報によれば,弁護士立会いの下に「遺言」が行われたそうである。

 気になるのは,弁護士が遺言の趣旨を読み上げ,たかじんさんは「はい」と肯定の意思表示をしただけであるらしいことである。これでは,「遺言の趣旨を口授」したことにならず,遺言としては無効である可能性がある。遺言無効確認訴訟では,原告(長女)が敗訴しており,地裁は,「遺言は有効」と判断しているようだが・・。

 今後の展開が注目であるが,この条文(民法第976条)は,存外に重要ですね。

民法
 (死亡の危急に迫った者の遺言)
第976条 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
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代表取締役の辞任届

2014-11-27 11:06:10 | 会社法(改正商法等)
 現在パブコメが実施中の「商業登記規則等の一部を改正する省令案」においては,「印鑑の提出をしている代表取締役又は代表執行役の辞任の登記申請について,辞任届に押印した印鑑に係る印鑑証明書の提出又は辞任届に届出印での押印を求めることとする」改正案が示されているところである。改正の方向性としては,極めて妥当であると考える。

 しかし,「印鑑の提出をしている代表取締役」がメールや電話等で辞任の意思を表示したものの,辞任届の提出に協力をしない場合も想定される。このような場合に,どのように対処すべきかも検討しておくべきである。

 代表取締役の辞任の意思表示を会社が受領したことによって,当該代表取締役の辞任が法的に効力を生じているにもかかわらず,辞任届の提出がないことから辞任の登記をすることができず,敢えて解任の手続をとったり,任期満了を待たなければならないとすれば,妥当ではない。

cf. 平成21年10月23日付け「取締役の辞任による退任を証する書面」

 例えば,新しい代表取締役を選定したことを証する書面である取締役会議事録等において,従前の代表取締役から辞任の意思表示を受領した旨及びその日付が明らかになっているのであれば,当該書面を「退任を証する書面として取り扱って差し支えないように思われる。
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