改正会社法においては,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは,その旨が登記事項とされる(新会社法第911条第3項第17号イ)。
しかし,特例有限会社については,この規定は適用されない(整備法第14条の規定による改正後の会社法整備法第43条第1項)。
ところで,会社法整備法においては,特例有限会社における監査役の監査の範囲については,次の規定が置かれている。
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年7月26日法律第87号)
(監査役の監査範囲に関する特則)
第24条 監査役を置く旨の定款の定めのある特例有限会社の定款には、会社法第389条第1項の規定による定めがあるものとみなす。
この点に関して,「一問一答 平成26年改正会社法」(商事法務)342頁においては,「特例有限会社は,その商号中に「有限会社」という文字を用いること(会社法整備法第3条第1項)から,監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されていることは,その商号からも明らか」とあり,どうやらみなし定款規定の変更は不可の立場を採っているようだ。
しかし,郡谷大輔編著「中小会社・有限会社の新・会社法」(商事法務)211頁においては,特例有限会社にあっても,定款を変更することにより,限定を解除することが認められる旨が述べられていた。
「定款の変更により,この定款の定めを廃止することは差し支えない・・・監査範囲の限定に関する定款の定めを廃止した後は,監査役設置会社に関する規律が適用される」(上掲・郡谷)
私は,この点に関しては,郡谷説を支持したい。