令和元年改正会社法により,株式会社は,定款の定めに基づき,株主総会の参考書類等の内容である情報について,電子提供措置をとることができるものとされ(会社法第325条の2以下),当該定款の定めがある旨は登記事項とされる(会社法第911条第3項第12号の2)。
上記に関して,いわゆる振替株式を発行している会社については,第3号施行日(公布の日から起算して3年6か月を超えない範囲内において政令で定める日)をその定款の変更が効力を生ずる日とする電子提供措置をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなされる(整備法第10条第2項)のである。
それでは,改正法の施行前に開催される株主総会において,改正法の施行を効力発生の条件として,電子提供措置をとる旨の定めを設ける定款変更の決議をすることができるか?
この点については,旬刊商事法務2020年5月5日・15日合併号「座談会 令和元年改正会社法の考え方」に解説があり,「可能である」と解されている(15頁竹林発言)。
そして,このように改正前に定款変更の決議を行った株式会社も,整備法第10条第3項の「前項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされた会社」に該当し,施行日後6か月以内に株主総会を開催する場合,会社が希望しても電子提供措置をとることはできない(上掲16頁竹林発言)。
また,整備法第10条第4項及び第5項の規定も適用があり,登記申請期間が猶予される(上掲16頁竹林発言)。
登記実務としても重要な点であり,登記通達等で明らかにされるのが望ましいであろう。
cf.
令和元年10月22日付け「電子提供措置をとる旨の定款の定めの登記と経過措置」
整備法
(社債、株式等の振替に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第十条 この法律の施行前に振替機関又は加入者(社債、株式等の振替に関する法律第二条第三項に規定する加入者をいう。)が加入者集会(同法第三十三条に規定する加入者集会をいう。)の目的である事項について提案をした場合については、前条の規定による改正後の社債、株式等の振替に関する法律第三十九条において読み替えて準用する会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第号。以下「会社法改正法」という。)による改正後の会社法(平成十七年法律第八十六号。以下「新会社法」という。)第七百三十五条の二の規定は、適用しない。
2 附則第三号に定める日(以下「第三号施行日」という。)において振替株式(社債、株式等の振替に関する法律第百二十八条第一項に規定する振替株式をいう。)を発行している会社は、第三号施行日をその定款の変更が効力を生ずる日とする電子提供措置(新会社法第三百二十五条の二に規定する電子提供措置をいう。)をとる旨の定款の定めを設ける定款の変更の決議をしたものとみなす。
3 前項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされた会社の取締役が株主総会(種類株主総会を含む。以下この項において同じ。)の招集の手続を行う場合(当該株主総会の日が第三号施行日から六箇月以内の日である場合に限る。)における当該株主総会の招集手続については、新会社法第三百二十五条の三から第三百二十五条の七まで(第三百二十五条の五第一項を除く。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
4 第二項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされた会社は、第三号施行日から六箇月以内に、その本店の所在地において、新会社法第九百十一条第三項第十二号の二に掲げる事項の登記をしなければならない。
5 第二項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされた会社は、第三号施行日から前項の登記をするまでに他の登記をするときは、当該他の登記と同時に、同項の登記をしなければならない。
6 第三号施行日から第四項の登記をするまでに同項に規定する事項に変更を生じたときは、遅滞なく、当該変更に係る登記と同時に、変更前の事項の登記をしなければならない。
7 第二項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされた場合における第四項の登記の申請書には、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。
8 第二項の規定により定款の変更の決議をしたものとみなされた会社の代表取締役、代表執行役又は清算人は、第四項から第六項までの規定に違反した場合には、百万円以下の過料に処する。
9 第三号施行日において振替投資口(社債、株式等の振替に関する法律第二百二十六条第一項に規定する振替投資口をいう。)を発行している投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十二項に規定する投資法人をいう。以下この条において同じ。)は、第三号施行日をその規約の変更が効力を生ずる日とする電子提供措置(第三十二条の規定による改正後の投資信託及び投資法人に関する法律(以下この条において「新投信法」という。)第九十四条第一項において準用する新会社法第三百二十五条の二に規定する電子提供措置をいう。)をとる旨の規約の定めを設ける規約の変更の決議をしたものとみなす。
10 前項の規定により規約の変更の決議をしたものとみなされた投資法人の執行役員が投資主総会を招集する場合(当該投資主総会の日が第三号施行日から六箇月以内の日である場合に限る。)における当該投資主総会の招集手続については、新投信法第九十四条第一項において準用する新会社法第三百二十五条の三(第一項第三号、第五号及び第六号を除く。)、第三百二十五条の四第二項から第四項まで、第三百二十五条の五(第一項を除く。)及び第三百二十五条の六の規定にかかわらず、なお従前の例による。