庭にはえる雑草・・・本当にすごい生命力です。
抜いても抜いても、どこからか種が飛んできて、芽を出し、成長していきます。
弱者の戦略
稲垣栄洋著 新潮社・新潮選書 1100円+税
面白い本を読みました。
著者は、雑草生態学を専門とする静岡大学大学院教授。
「生き物」が、いかにサバイバルして種を保存していくか?について、豊富なケースをもとに面白おかしくエッセイ風につづられています。
例えば、食われる者の食われない戦略、生き延びる戦略として、4つの戦略を取り上げています。
アフリカの大草原やアマゾンのジャングルで生きる動物や昆虫、植物をイメージされるといいと思います。
- 群れる・・・イワシ、シマウマ
- 逃げる・・・チーターから逃れる、蝶の舞
- 隠れる
- ずらす・・・蛾、タンホポ、ラクダ
弱者が生き延びるためには、自身の強みを認識、活用し、与えられた環境をフル活用し、強者との距離や相手の癖やワザを熟知して、すばやく行動していくことが重要。
著者は、「強いものが勝つのではない。勝ったものが強いのである」と喝破します。
チャールズ・ダーウィンの言葉も思い出します。
このあたりは、孫子の兵法あたりとも多くの共通項があると思います。
◆目次
第1章 生き物にとって強さとは何か
第2章 食われる者の食われない戦略
第3章 すべての生き物は勝者である
第4章 弱者必勝の条件
第5章 Rというオルタナティブ戦略
第6章 負けるが勝ちの負け犬戦略
第7章 逃げられない植物はどうしているか
第8章 強者の力を利用する
同書の中で、気づきをもらったのが「中程度攪乱仮説」。
これは、米国の生態学者コネルが提唱した説とのこと。
安定した環境よりも変化のある環境の方が多くの弱者にとってチャンスがあるというものです。
変化が少ないときは強者が生き残り生物の数が減る・・・環境変化の大きい攪乱期も生息数も生息できる数は減少するというもの。
変化をどうとらえ、どう適応していくかということの重要性を意味しています。
結構、笑いながら読んだのですが、生き物はサバイバルするため、子孫を残すために、様々な努力を重ねていきます。
スニーカー戦略(こそこそ忍び寄るもの)
サテライト戦略(コソ泥戦略)
女装する戦略
負け犬戦略・・・
生き物も大変・・・本当によく編み出されたサバイバルのための戦略だと思います。
書名は「弱者の戦略」となっていますが、強者も楽か?と言えば、そんなこともありません。
まずは、命がけでボスの座を目指して戦わなければならない・・・場合によっては、ここで命を落とす・・・ボスになったとしても、縄張りをライバルから守らなければならない・・・ほかのオスが配下にあるメスに手を出して来たら戦わなければならない・・・常に群れのナンバー2に狙われているのです。
これもかなりのプレッシャーであり、ストレスです。
自然の世界は、弱肉強食。
ビジネスの世界も、基本的には同じです。
この本には、ビジネスパースンにとってはお馴染みのランチェスターの法則(第1法則、第2法則)も紹介されています。
このほか取り上げてある動物、植物、昆虫などの事例を、ポーターやアンゾフ、コトラーの戦略論と結び付けながら読むと一層面白いと思います。
同書は、すべてのビジネスパースンに読んでいきたい生き延びるための一冊です。