友人から薦められて買った一冊・・・面白い中身でした。
よくよく考え抜いたら、世界はきらめいていた 哲学、挫折博士を救う
関野哲也著 CCCメディアハウス刊 1500円+税
著者は、フランスの哲学博士。
リヨン第三大学大学院で博士号(哲学)を取得、専門は宗教哲学、言語哲学。
博士論文は、ヴィットゲンシュタイン、シモーヌ・ヴェイエ。
すごい経歴ですが、現在は、工場のラインの作業員として働いておられるとのこと。
フランス語の翻訳者、通訳としてはたらいていましたが、30代でメンタルを患い、ドライバー、障がい者ホーム職員、工場勤務と職を転々とされています。
今でも問題となっているオーバードクター、高学歴ワーキングプアのジャンルに入ってくるのでしょうか。
「知性」「リベラルアーツ」の無駄遣い・・・という感じがしましたが、同書を読んでいると、形而上の世界と現実の下界を繋いで生きるということ、東洋哲学的には知行合一で生きるという価値観は人生を充実させるのではないかと感じた次第です。
目次
第1章 哲学することで強くなる
第2章 哲学をはじめる 私の哲学遍歴
第3章 哲学を体験してみよう 「私」とは何か?
第4章 働くということ
第5章 病むということ
第6章 宗教を信じるということ
第7章 善く生き、善く死んでいくということ
特に面白かったのは、第4章の「働くということ」と第7章の「善く生き、善く死んでいくということ」。
著者の実体験とオーバーラップさせながら、西洋の哲学者のコンセプトを引用しながらの展開は説得力があります。
市井の学者よりも言説に重みを感じます。
第4章の「働くということ」
・プロフェッショナル意識の重要性
・「使命」と仕事を重ね合わせる
・「自己中心」ではなく「使命中心」と発想を転換する
・どんな些細なことでも「使命」の糧にする
・みんなそれぞれに「使命」を抱いて生きている
大学などのアカデミック機関に20以上応募した著者・・・全て落とされたとのこと。
人生の酸いも甘いも知った著者の生きざまは学生たちにも伝わると思います・・・本当にもったいないです。
哲学でメシは食えないけれど、人生には彩(いろどり)を与えてくれるように思います。
同書の最終章で著者は述べます。
哲学することは、善く死んでいくための準備
哲学は善く生きるための準備・・・
善く死ぬことと善く生きることは表裏一体
いつ死んでも後悔しない生き方をすること
本当にそのとおりだと思います。
小難しい西洋哲学ですが、哲学入門には同書は良い本だと思います。
個人的には、ちょっと色あせてきた実存主義哲学が好みです(笑)・・・キルケゴール、ニーチェ、ハイデガー、サルトルあたりの著作をもう一度読み直そうかなあと思った次第です。
実存は本質に先立ちます!