見直したい<優しさの力>
現実をありのままに描くリアリズム
に結びついて、中国映画とも日本映画とも違う、優しさと内省と恥ずかしがりの気風に溢れた台湾気質を鮮やかに描く作風を生み出した。
台湾ニューシネマは、80年代から90年代にかけ台湾の若手映画監督を中心に展開された、従来の商業ベースでの映画作りとは一線を画した場所から、台湾社会をより深く掘り下げたテーマの映画作品を生み出そうとした一連の運動である。
台湾映画界にそれまでとは全く異なる新潮流をもたらしたという意味で、フランス映画のヌーヴェルヴァーグに相当する運動といえる。
台湾ニューシネマに属する作品群とそれまでの台湾映画とで最も異なる点は、その写実性にある。
従来の台湾映画が政治宣伝的色彩の強い国策映画や、現実社会とは遊離したいわゆるヒーローもの中心だったのに比べ、台湾ニューシネマの作品には、台湾人の日常生活や台湾社会が抱える問題などに直接向き合い、それを丹念に追うことを通じて、ときには台湾社会の暗部にまで光をあてるといったような内容の作品が多い。
また、黄春明など、いわゆる郷土作家の文芸作品を積極的に題材に取り上げていること、それまで公共の場での使用が禁じられてきた台湾語などの方言を台詞に使用するなど、画期的な手法を取り入れていることなども大きな特徴である。
その他、ストーリー展開がはっきりしないこと、スローテンポで、抑揚を抑えた展開のものが多いことなども特徴として挙げることができる。
台湾社会におけるニューシネマの意義[編集]台湾社会の日常やディテールを丹念に描き出すことを通じて、また『悲情城市』のように、それまで封印されてきた歴史の暗部に光をあて、人々の間に活発な議論を巻き起こすことを通じて台湾の人々があらためて台湾社会及び台湾人としての各自のアイデンティティに向き合うきっかけを作ったという点で、さらには台湾映画界を担っていく新たな世代の監督を多数輩出させたという点で、台湾ニューシネマが台湾社会に与えた影響は意義深いものであったと言える。
また、2002年から始まった、台湾におけるフリーペーパーブームの際、ニューシネマを振り返る多くのエッセーや論評が発表された。日本からは、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品『珈琲時光』の主演を務めた歌手の一青窈、アジア文芸、意匠分野で活動している作家の京谷康子や山下祐樹らが企画参加している。ニューシネマ回顧によって台湾文化に対する日本人の立場や認識、特に若者からの認識を再考させたという意義は大きい。
現実をありのままに描くリアリズム
に結びついて、中国映画とも日本映画とも違う、優しさと内省と恥ずかしがりの気風に溢れた台湾気質を鮮やかに描く作風を生み出した。
台湾ニューシネマは、80年代から90年代にかけ台湾の若手映画監督を中心に展開された、従来の商業ベースでの映画作りとは一線を画した場所から、台湾社会をより深く掘り下げたテーマの映画作品を生み出そうとした一連の運動である。
台湾映画界にそれまでとは全く異なる新潮流をもたらしたという意味で、フランス映画のヌーヴェルヴァーグに相当する運動といえる。
台湾ニューシネマに属する作品群とそれまでの台湾映画とで最も異なる点は、その写実性にある。
従来の台湾映画が政治宣伝的色彩の強い国策映画や、現実社会とは遊離したいわゆるヒーローもの中心だったのに比べ、台湾ニューシネマの作品には、台湾人の日常生活や台湾社会が抱える問題などに直接向き合い、それを丹念に追うことを通じて、ときには台湾社会の暗部にまで光をあてるといったような内容の作品が多い。
また、黄春明など、いわゆる郷土作家の文芸作品を積極的に題材に取り上げていること、それまで公共の場での使用が禁じられてきた台湾語などの方言を台詞に使用するなど、画期的な手法を取り入れていることなども大きな特徴である。
その他、ストーリー展開がはっきりしないこと、スローテンポで、抑揚を抑えた展開のものが多いことなども特徴として挙げることができる。
台湾社会におけるニューシネマの意義[編集]台湾社会の日常やディテールを丹念に描き出すことを通じて、また『悲情城市』のように、それまで封印されてきた歴史の暗部に光をあて、人々の間に活発な議論を巻き起こすことを通じて台湾の人々があらためて台湾社会及び台湾人としての各自のアイデンティティに向き合うきっかけを作ったという点で、さらには台湾映画界を担っていく新たな世代の監督を多数輩出させたという点で、台湾ニューシネマが台湾社会に与えた影響は意義深いものであったと言える。
また、2002年から始まった、台湾におけるフリーペーパーブームの際、ニューシネマを振り返る多くのエッセーや論評が発表された。日本からは、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品『珈琲時光』の主演を務めた歌手の一青窈、アジア文芸、意匠分野で活動している作家の京谷康子や山下祐樹らが企画参加している。ニューシネマ回顧によって台湾文化に対する日本人の立場や認識、特に若者からの認識を再考させたという意義は大きい。