5/22(日) 20:02配信 現代ビジネス
死刑当日告知は違法なのか――。拘置所に収容されている死刑囚2人が、死刑執行の本人への告知が当日、直前に行われる現在の運用は違法だと主張し、国に対して事前に告知することなどを求める裁判が今年1月より大阪地方裁判所で始まっている。
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昨年12月に確定死刑囚3人の刑が執行されたことは記憶に新しい。死刑執行は2019年12月以来とおよそ2年ぶりで、岸田政権の発足後は初めて。今回の執行を受け、確定死刑囚は108人となった。
死刑とは犯した罪を自らの死によって償う刑罰で、刑法11条で死刑は刑事施設内において絞首にて執行すると定められている。だが、世界では約7割の国が死刑を廃止か停止している。国際的な潮流に逆行する日本には厳しい目も向けられているからこそ、我々は「国が人の命を奪う」死刑に向き合わなければならない。
日本では死刑判決はどう行われ、死刑囚はどんな生活をして、死刑はどう執行されるのか。本記事では、漫画家・一之瀬はちさんが実際に死刑に立ち会った刑務官に取材したマンガ『刑務官が明かす死刑の話』を取り上げる。
課せられるルール
写真提供: 現代ビジネス
一之瀬さんはなぜ死刑について取材するに至ったのか、こう語る。
「もともと警察ものや犯罪ものの作品に興味があり、その手のドラマを見たり小説を読んだりしていました。そのような中、刑務官の方と知り合いお話をしていく中で、刑務官の仕事は塀の中の業務ということもあり、それまで深く知る機会がありませんでしたが、刑務所の中の治安を守ることはもちろんのこと、罪を犯した受刑者の矯正、そして死刑の立ち会いと、重い責任を背負って日々業務をこなしているのだということを知り、刑務官という職業のリアルな姿を伝えられればと思ったことがきっかけです」
一之瀬さんが取材したのは、実際に死刑に立ち会った経験のあるM刑務官。大学卒業後、刑務官試験に合格。地方刑務所、拘置支所勤務を経て、現在は某拘置所に勤務している。
刑務官は普段から刑法・刑事施設法をはじめ様々なルールのもとに働いている。そして、死刑に参加する刑務官にはより厳しいルールが課せられるという。死刑執行にはどのようなルールがあるのだろうか。
「殺人」にならない理由
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■刑務官が罪に問われないのはなぜか?
死刑の執行ボタンを押すのは刑務官だが、その刑務官が罪に問われることはない。死刑執行は刑法第三十五条「法令又は正当な業務による行為は罰しない」により、正当な行為とされている。つまり、死刑のボタンを押すのも「業務上の行為」として罰せられないのだ。
また、死刑執行の際などに暴れた受刑者を取り押さえる際にケガを負わせても、過度なものでないかぎり、この「正当行為」にあたり、罪に問われることはない。
このようなケースは他の職業にもあり、例えば警察の犯罪者への発砲(傷害・銃刀法違反)や、被疑者を確保する目的での宅地侵入や破壊行為(不法侵入・器物破損)、司法解剖(遺体損壊)などが正当行為にあたる。
「このように命に関わる職業は法律によって守られています」(Mさん)
記事冒頭で述べたように、現行では、死刑判決を受けると死刑がいつ執行されるか分からない状態となる。Mさんは、そんな死刑執行の言い渡しにも独特のルールがあると話す。
「死刑は当日の朝9時までに言い渡され、即日執行となります。死刑の宣告は3~4人の刑務官が連れだって、居室に赴いて行われるのが決まりです」
しかし、このルールが思わぬトラブルを招いてしまったことがあるという。何が起こったのだろうか。
記事後編【死刑に立ち会った刑務官が明かす…朝の「死刑囚房」を襲った大パニックの真相】に続きます。
現代ビジネス編集部