作家 あさの あつこ さん
―いきづらさを抱えている若者は多いと思います。
それって、大人の決めつけだと思うんです。
経済格差や少子高齢化など課題が山積する昨今を、確かな未来の見えない「閉塞の時代」「絶望の時代」などと形容しがちです。
でもそれは、実は大人が勝手に描いたものに過ぎなくて、若い人たちをはめこんで「君たちはこういう構図の中で生きている、生きづらい今を生きているんだ」と簡単に言ってしまうのは、すごく無責任だし、間違っていると思うんです。
生きずらい、未来に希望がないと感じるのであれば、その正体が何なのか、それに立ち向かう答えを、一人一人が自分で出していかなけばいけないし、それができるから生きていけると思う。
でも、それを潰してしまうことがやっぱり多い、
若い人たちが希望を語ったときに、私たち大人がどう受け止めるか。
結局、大人側の問題だと思うんです。
だから、それにのみ込まれない。
みんなが信じ込まない、みんな信じ込まされない枠組みを揺らすような物語を書きたかった。
10代の少年が本気で語った言葉、真実の言葉に対して、社会がちゃんと反応できるというのは、私の希望なんです。
人は誠心誠意の言葉に心動かされるし、気付かされもする。
それを信じられないんだったら、物書きの資格はありません。
この世の中は捨てたもんじゃないということを、信じたいのです。
―あさのさんにとって、小説を書く原動力は何でしょうか。
まだまだ書きたいことが山ほどあって、自分が納得できていないんです。
こういう仕事に巡り合い、機会を頂けるというのは、とても幸せなことです。
自分が何を頑張りたいのか、10代だけじゃなく、20代、30代・・・・いくつになっても自問し続けること、すごく大事だと思うです。
他人の語る希望に引きずられると、自分に問うことがなくなってしまいます。
ささやかなことでもいい。
春に咲く一本の花を楽しみ生きることだって、すてきな希望です。
自分で出した答えでなければ、やっぱり納得できないと思う。
絶望の時代とか、こう生きればいいとか、全て他人の言葉ですよね。
それを振りまいた人が誰かも分からない。
正体不明のあやふやなものに巻き込まれないためにも、自問し続けること。
答えを出そうとあがき続けること。
それが、その人の根っこを強く大きくさせるんだと思います。
「アーセナルにおいでよ」あさの あつこ 著
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