沖縄のアメリカ軍嘉手納基地に所属する空軍兵が沖縄本島で、面識のない16歳未満の少女を自宅に連れ込み、性的暴行をした罪に問われた裁判で、那覇地方裁判所は「性的侵害の大きい犯行で悪質さが際立つ」などとして懲役5年の判決を言い渡しました。
嘉手納基地に所属するアメリカ空軍の兵長、ブレノン・ワシントン被告(25)は去年12月、沖縄本島中部の公園で面識のない16歳未満の少女にわいせつ目的で声をかけて自宅に連れ込み、性的暴行をした罪に問われました。
これまでの裁判で、▽被告が少女を16歳未満だと認識していたかどうかや、▽同意の有無が争点となり、検察は懲役7年を求刑した一方、被告は無罪を主張していました。
13日の判決で、那覇地方裁判所の佐藤哲郎裁判長は「少女がジェスチャーなどで年齢を伝えたという証言は防犯カメラの映像からも十分に信用できる。被告は少女が16歳未満と認識していた」と指摘しました。
そのうえで「少女が『ストップ』などと発言し、同意していない可能性があることを被告は認識していた。面識がなかったという2人の関係性や年齢差を踏まえると、性的侵害の大きい犯行で悪質さが際立つ」などとして、懲役5年を言い渡しました。
この事件などを受け、沖縄県警はことし7月、アメリカ軍関係者による性暴力事件については、逮捕や書類送検をした時点で県に伝えるという新たな通報体制を整えました。
【傍聴の倍率は8.6倍】
那覇地方裁判所では、判決を傍聴しようと、13日午後0時50分からの傍聴抽選券の配布にあわせて多くの人が訪れていました。
裁判所によりますと、33席の傍聴席に対して傍聴を希望したのは284人で、倍率は8.6倍だったということです。
【裁判を傍聴した人は】
裁判を傍聴した宜野湾市に住む40代の大学教員は「被害者の少女の証言が全て認められているのにもかかわらず、懲役が求刑の7年に対して5年だった。裁判官も被告の悪質さが際立つと指摘していた中で、はたして5年が十分な量刑なのか疑問を感じる」と話していました。
また、金武町出身の専門学校に通う21歳の女性は「私の地元は外国人が多くいて一緒に暮らしているから、身近にこういう事件があったら少し残念だ。女性の気持ちになったら懲役5年は少し短いかなという印象だった」と話していました。
【「米軍兵士の価値観を反映するものではない」】
嘉手納基地に所属する空軍の兵長に懲役5年の判決が言い渡されたことについて、嘉手納基地トップのニコラス・エバンス准将は「被害者と家族を傷つけた兵長の行為に深く心を痛めており、このような事件が起きたことを心から遺憾に思う。私たちは、有罪判決を受けた人物が裁判所で言い渡された刑期を全うできるよう、引き続き地元当局と協力する」としたうえで、「性的暴行は重大な犯罪であり、日米同盟を支えるため、べいぐん沖縄で名誉ある任務に就いている大多数のアメリカ軍の兵士の価値観を反映するものでは断じてない」とするコメントを発表しました。
【知事「決して許すことはできない」】
嘉手納基地に所属する空軍の兵長に懲役5年の判決が言い渡されたことについて、玉城知事は13日午後、県庁で記者団に対し「女性の人権や尊厳をないがしろにする重大かつ悪質な事件は決して許すことはできず、ましてや未成年者が被害者になるなど絶対にあってはならない」と述べました。
そのうえで「われわれは事件の防止は、まずアメリカ軍の綱紀粛正と徹底した教育が必要であるということを意見交換する場も必要ではないかと考えている」と述べ、事件のあと、アメリカ軍が設けることを表明した「フォーラム」などを通じて、実効性のある再発防止策を議論したいとする考えを示しました。
また、記者団から13日から沖縄を訪れている中谷防衛大臣との面談の中でもこの問題について申し入れを行うのか問われ、「日米両政府にとって非常に重要な案件だったという認識をしていただいていると思うが、フォーラムの開催なども含めて早急に対策が講じられるような体制をつくりたいということは大臣にも話し、協力を求めたい」と述べました。
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