今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「ボナールの友情論は私の数少ない愛読書の一つで、真の友情はあるかないか、追いかけて追いつめた名著である。
○真の友は友の役立つ機会に恵まれるのを喜ぶ。友が金を貸せと言うと進んで貸して、貸したことを忘れる。借りた方も忘れる。今度は反対に貸した方が借り手に回ると、むろん勇んで貸して二人は共に忘れる。
○男と女の間に友情は成りたつか。女は絶世の美人である。たいていの若者はあきらめてただの友に甘んじる。女はそれが不服で、ここにいるのは若い肉体を備えた女だと振舞って、つかのま男がその気になるとぽんとつき放してまたもとの友に返す。
この本は右の如きを山ほど書いて、真の友情の有無を追いつめた一巻である。はたしてそれはあったか。」
(山本夏彦著「死ぬの大好き」新潮社刊 所収)
「ボナールの友情論は私の数少ない愛読書の一つで、真の友情はあるかないか、追いかけて追いつめた名著である。
○真の友は友の役立つ機会に恵まれるのを喜ぶ。友が金を貸せと言うと進んで貸して、貸したことを忘れる。借りた方も忘れる。今度は反対に貸した方が借り手に回ると、むろん勇んで貸して二人は共に忘れる。
○男と女の間に友情は成りたつか。女は絶世の美人である。たいていの若者はあきらめてただの友に甘んじる。女はそれが不服で、ここにいるのは若い肉体を備えた女だと振舞って、つかのま男がその気になるとぽんとつき放してまたもとの友に返す。
この本は右の如きを山ほど書いて、真の友情の有無を追いつめた一巻である。はたしてそれはあったか。」
(山本夏彦著「死ぬの大好き」新潮社刊 所収)